■ホンダが提供する企業、自治体向けの渋滞回避サービス
自動車メーカーの中でもいち早くプローブ情報の取得、プローブデータの活用、提供をしたのがホンダです。ホンダの「インターナビ」は双方向通信型ナビの先駆けであり、2003年には走行車両から収集するプローブデータを使った高度な交通情報サービスを世界に先駆けて実用化。
さらに、2010年には無料通信サービスの提供をスタートさせ、収集されるデータ量が飛躍的に増加したことで、カーナビ向け交通情報発信だけではなく、災害時などでも通行可能な道路情報が提供されるなど、様々なサービスが展開されています。また、2008年にはパイオニアと、翌2009年にはインクリメントPとデータの相互活用など、他社とのデータ活用も進められてきました。
2021年8月18日、ホンダは、走行データなどを活用したデータサービス事業「Hondaドライブデータサービス」に新サービスを加えたと発表しました。
今回、提供が開始された旅行時間表示サービスは、全国各地で発生する渋滞という社会課題の解決を目指して開発したもので、パッケージ型サービスとすることで、より多くの企業や自治体が導入しやすくなったのが特徴。
なお、2017年12月に開始された「Hondaドライブデータサービス」は、約370万台(インターナビ・プレミアムクラブ会員、Honda Total Care会員、Honda Total Careプレミアム会員が保有する車両のうち、データを取得できる台数。2021年7月末時点)のホンダ車から集まる走行データ、車両の挙動データなどを活用。渋滞対策、都市計画、防災、交通事故防止などの社会課題解決を目指すデータサービス事業です。
これまで、多様な企業や自治体の要望を受け、個別にソリューションを提供してきたそう。
今回の新ドライブデータサービス「旅行時間表示サービス」は、ホンダ車のリアルタイム走行データを活用し、渋滞路、迂回路通過の所要時間を計算して、道路上に表示する有償サービスで、すでに、2021年8月から開始されています。
渋滞路や迂回路通過の所要時間を表示することでドライバーに迂回を促し、交通量を分散して渋滞を低減することを狙いとしています。車両の走行データを活用し、道路上に所要時間を表示するサービスの提供は、日本の自動車メーカーとして初になります(ホンダ調べ)。なお、Googleマップなど、個人ユーザー向けの地図アプリでは、走行ルートにより通過時間がどれだけ増えるか表示されるものもあります。
この旅行時間表示サービスでは、ホンダ車からリアルタイムに集まる走行データを活用し、渋滞路、迂回路の通過にかかる時間を計算。算出された渋滞路、迂回路それぞれの所要時間がルート分岐地点の手前に設置された表示機に表示されます。
ドライバーに迂回路の選択を促すサービスで、これにより交通量が複数のルートに分散され、渋滞を低減する効果が期待できるとしています。
とくに、効果が期待できるのが、目的地まで複数ルートが存在し、そのルートの一方が渋滞、一方は空いているなど交通量に偏りがあるケースと想定されています。本当に効果があるのか気になるところです。
ホンダは、紅葉シーズンになると毎日激しい渋滞が発生する栃木県日光市で、国道119号線の渋滞緩和を目的として、旅行時間表示サービスを用いた実証実験を行ったそう。
実証実験の結果、激しい渋滞が発生する春日町交差点から日光山内入り口までの最長所要時間が、2019年の171分に対し、2020年の対策実施時には同等の交通量ながら85分と半減したそう。さらに、渋滞ルートの所要時間表示が長くなるほど、迂回が促されて渋滞が低減し、シーズン中の最大渋滞長は2019年の約3.7kmに対し、2020年の対策実施時には約2.3kmまで短縮。また、渋滞が解消する時刻も、平均で2時間以上早まったとしています。
この旅行時間表示サービスは、すでにいくつかの企業や自治体から導入の要望があるそうで、2021年秋の活用開始に向けて、準備を進めていくとしています。
ホンダは、こうしたデータを活用し、渋滞対策や都市計画、防災、交通事故防止などのさまざまな社会課題解決に貢献していくと表明しています。
(塚田 勝弘)