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■シビックとアコードのスキをただ突いたのではない、ニッチ商品では異例のヒット作
しばらくエアコン関連の実験を続けてきましたが、このところ大雨が続き、外での実験ができません。はてどうしたものか、と腕を組み組み考えているところに、「2022年、ホンダがアメリカのアキュラブランドでインテグラ復活!」のニュースが飛び込んできました。
ここはエアコン実験小休止。雨がさ記事ということで、今回はインテグラの歴史について語ることにしましょう。
●クイントインテグラ(AV型・1985(昭和60)年2月19日発表・翌20日発売)
1985(昭和60)年2月発表・発売。1980(昭和55)年2月に登場したクイントは、クイント インテグラの前身となる、ごくごくオーソドックスな形をした1600ccの5ドアハッチバックで、ラインナップとしてはシビックとアコードの中間に位置するクルマでしたが、クイントインテグラは、その位置はそのままに、1985年2月当時の、シティからアコード(当時はまだレジェンド登場前)までのホンダラインからオフセットしたポジションにありました。
車名の「インテグラ」の由来について、当時のホンダの資料では「・・・『スタイリング』『居住性』『走り』などクルマが持つ本来の機能を、ホンダの最新技術で高い水準にまとめあげた(統合=インテグレート)もの・・・」と説明しています。
全車1600ccDOHC16バルブエンジン搭載。クルマを語るに於いて、いまはエンジンの影が薄くなっていますが、この頃はSOHCかDOHCか、バルブの数がどうの、ターボがこうの、ひいてはサスペンション型式や駆動系の構造など、メカが顧客の関心を惹きつける時代で、エンジンの高性能でファンを魅了するホンダらしい1台でした。
そのエンジンZC型は、115ps/6500rpm、13.8kgm/4000rpmを発生する気化器(キャブレター)仕様と、135ps/6500rpm、15.5kgm/5000rpmをひねり出すPGM-FI版の2本立て。高出力化と吸排気効率向上には16バルブ化が必須とあり、排ガス対策が一段落し、排ガス浄化の手法も進歩していたこともあり、ホンダはまずこの高性能寄りエンジンから、初代シビックに始まった副燃焼室を備えるCVCC方式と訣別、ごくオーソドックスな燃焼室設計に戻すことでDOHC16バルブ方式を選ぶことができました。ZCの市場投入は、前年の3代目シビック25i、その兄弟車CR-X25iに先行を許しましたが、本来このZCは、このクイントインテグラのために開発されたものでした。
サスペンションは、ノーズが他社のクルマよりも低いながらも前がストラット、後ろが車軸式で、このへんは3代目シビックのものをリファインしています。
エクステリアを見ると、2代目プレリュードに始まったホンダのリトラクタブルヘッドライト顔を継承。セダンとしては異例にリトラクタブルライトを持つ3代目アコードシリーズの登場はこの少し後(1985年6月)ですから、ホンダのフルリトラクタブル車としては2台めとなります。
インテリアに目を向けると、インストルメントは、フロントピラー左右を結ぶ線あたりから手前に滑り落ちるかのようなスラント型に造られています。好みは分かれるでしょうが、その頃ホンダ車の主流だったトレイ型をやめたことで独特の雰囲気を与えていました。
クイントインテグラは、まずは3ドアのハッチバック型でスタート。
8ヶ月を経た10月の5ドアハッチバック追加をはさみ、さらに1年後の1986(昭和61)年10月に4ドアセダンを加えた3ボディ体制で進んだ後、1989(平成元)年4月に次のモデルに世代交代を果たすことになります。
いまはそれほどでもなくなりましたが、かつてどこの自動車メーカーも、下から上までヒエラルキー化したラインナップを構成していました。これはこの頃主流のオードドックスなセダン型の話なのですが、そのヒエラルキーを徹底していたのがトヨタで、下から順に、「リッターカークラス」と呼ばれていたスターレット(スターレットは1300ccだが、他のマーチ、シャレードなど、1000ccのリッターカーの仲間に入れられていた)、「大衆車」のカローラ/スプリンター、「ミドルクラス」のコロナ/カリーナに「アッパーミドル」のマークII/チェイサー/クレスタ、クラウン・・・「リッターカー」と「大衆車」、「ミドル」と「アッパーミドル」、それぞれのさらに間をゆくターセル/コルサ/カローラII、ビスタ/カムリなどは、本当の意味で真っ向からぶつかるクルマは他社にはなく、筆者から見れば、これらはいわばニッチ商品でした。
すでに確立しているクラスとクラスの間を突く例は他社にもありましたが成功例はありません。
例えば日産ならサニーとブルーバードの間を埋めるバイオレット/オースター/スタンザ、三菱ならミラージュとギャランの中間をゆくトレディア(とコルディア)・・・いずれも市場にはどっちつかずのキャラクターに映り、華々しい実績のないまま終焉を迎えています。
このように、クラスとクラスの間、またはどのカテゴリーにもあてはめにくいニッチ商品が定着しにくい日本マーケットにあって、アコードクラスとシビッククラスの間を突くニッチ商品として成功を収めたのは、クルマ界においてはこのクイントインテグラが初めてではないかと筆者は思っています。
【SPEC】ホンダ クイントインテグラ GSi(3AT・AV型 1985(昭和60)年2月)
●全長×全幅×全高:4280×1665×1345mm ●ホイールベース:2450mm ●トレッド 前/後:1415/1455mm ●最低地上高:160mm ●乗車定員:5名 ●車両重量:970kg ●エンジン:ZC型(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1590cc ●最高出力:135ps/6500rpm ●最大トルク:15.5kgm/5000rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:50L ●燃料消費率(10モード燃費):11.6km/L ●タイヤサイズ:195/60R14 ●車両本体価格(当時東京価格):157万5000円
●インテグラ(DA型・1989(平成元)年4月19日発表)
元号が「昭和」から「平成」にあらたまって新時代の新年度を迎えた1989(平成元)年4月にフルモデルチェンジ。
冠称「クイント」を外して「ホンダインテグラ」に改称。ハッチバック3ドア、同5ドア、セダンの 3つだったボディバリエーションはすべて鞍替えし、3ドアのクーペ&4ドアハードトップ(以下、4ドアHT)の布陣となりました。
そういえば、先代の少し後に出た初代カリーナED(考えてみたらこれもニッチだ)は、何かの派生ではない、専用ボディをまとったスタイリッシュ4ドアHTで大当たりしましたが、ひょっとしたらインテグラ4ドアHTは、カリーナEDのヒットに刺激を受けたホンダが、「ウチも!」とばかりにホンダ版カリーナEDの性格も与えたのかも知れません。だとしたら、ニッチがニッチに刺激されたわけで。
3ドアクーペは発表翌日の4月20日、4ドアHTは5月12日と、いくらかのインターバルはありましたが、ハードトップを名乗る 4ドアはもちろん、3ドアクーペも、ドアに枠を持たないサッシュレスタイプ・・・リヤに先代の面影を残し、エンジンもZC型を引き継いでいますが、新時代に向けて(?)、車名もボディも一新しています。マイケル・J・フォックスの「カッコインテグラ!」のテレビCMのあの明るい映像も、新しいインテグラ像をよく表現していました。
エンジンは相変わらず1600cc1本ですが、バリエーションは増えました。4ドアHTの廉価版、RXとZXのみに搭載された、最高出力105ps/6300rpm、最大トルク14.5kgm/5500rpmを発生するZCのSOHCの気化器仕様。3ドアクーペのTXi、RXi、ZXi、4ドアHTのRXi、ZXiに載せられた120ps・SOHCのPGM-FI版ZC。そして3ドアクーペRSi、XSi、4ドアHTのXSiに与えられた、リッター100ps(5MTのみ)にして、市販の自動車用エンジンとしては世界初で可変バルブタイミング&リフト機構を採り入れた、DOHC VTEC・B16Aの3種・・・「DOHC VTEC」の「DOHC」をB16Aでこそ響かせたかったためか、先代インテグラは、DOHCであるZC搭載ゆえの「全車DOHC」だったはずなのに、そのDOHCメカはB16Aに剥奪(?)され、当のZCこそがSOHCに格下げとなったために、DAインテグラでは「全車DOHC」ではなくなりました。
フロントフェイスはリトラクタブルライトが廃され、グリルレスの固定式ランプに変わりました。内側にフォグランプを内蔵。当時筆者は、ヘッドライトのあまりの横長っぷりに「なんだ、これは!」とびっくりしたものですが、当時のシビックやCR-Xとは異なりながらも、ホンダ一連の顔にきちんと収まっているのが不思議です。リヤスタイルは、先代の横長テールを継承。普通、クルマの顔といえばフロント側を指しますが、リヤはリヤでインテグラの顔をしています。
内装はさすが好景気時代の仕上がり! インストルメントパネル、シート、内張り・・・ホンダに限りませんが、あらゆる部分の造り込みの高さは、時代を象徴しています。メーター斜め左右下に空調吹出口とそのコントロールをまとめ、いくらかドライバーを包むように造形。
この考え方は、インテグラの1年前(1988年5月)に出たカリーナセダン(T170型)にも似ているのですが、コロナをカジュアル仕立てにしたのがカリーナだとしても、どちらが若者受けするかといえば、生活臭の微塵をも感じさせないインテグラの方でしょう。そのあたりの演出、ホンダのほうが1枚も2枚も上手です。
【SPEC】ホンダ インテグラ 4ドアハードトップ XSi(4AT・DA8型・1989(平成元)年4月)
●全長×全幅×全高:4480×1695×1340mm ●ホイールベース:2600mm ●トレッド 前/後:1475/1475mm ●最低地上高:150mm ●乗車定員:5名 ●車両重量:1130kg ●エンジン:B16A(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1595cc ●最高出力:150ps/7100rpm ●最大トルク:15.3kgm/6000rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:50L ●燃料消費率(10モード燃費):10.6km/L ●タイヤサイズ:195/60R14 ●車両本体価格(当時東京価格・消費税抜き):175万8000円
●インテグラ(DC型・1993(平成5)年5月20日発表・翌21日発売)
この顔を見て誰もがギョッとしたのではないでしょうか。丸目4灯式ヘッドライトが前を睨むフロントフェイスに転身しました。先代DA型はややおとなし路線に向かっただけに、他社の他車に埋没気味になったのかも知れません。インテグラの個性をイチから仕切り直す作戦に出ました。
外側はプロジェクター式のロービーム、内側は通常のリフレクター式ハイビーム。これらを直接バンパーに埋め込んだ、デザイナーいわく「100mアイキャッチ」デザインだと。100m、いや、それ以上離れたところからでも「おっ、インテグラ!」をわかるエクステリアをこのヘッドライトに象徴させたわけです。余談ですが、丸目4つを同じに大きさに見せるために、外側=ロービーム側の径をやや大きくしたというのがおもしろいところです。本当に同径にすると、ロービーム側が小さく見えてしまうのだそうな。
今回のインテグラは、スポーツとはいいませんが、車両内外に、先代、先々代の普段着で楽しむスポーティ志向から、本格スポーティ路線に片足だけ踏み入れたような傾向が見られます。丸目4灯のほか、エクステリアではウエストラインをボディ後方に向けて吊り上げ、全体を前のめりのウェッジシェイプにしたところにその意図が感じられ、これは先代、先々代には見られなかったスタイルです。
インテリアもしかりで、インストルメントなどは、先々代のスラントを強調した新鮮さ、先代のデートカー的にしてパーソナル感を演じたものとは違う、少しだけ男くささの漂わせたスポーツ志向の雰囲気に変わりました。
エンジンはシングルカムのZCが続投。キャブレターとPGM-GIである点も同じで、前者はZXに、後者はZXiに載せられました。B16AだったDOHC VTECは1800ccに増量し、B18CとなってSi VTECに搭載。世界初の可変バルブタイミング&リフトを生み出した意地でしょう、180ps/7600rpm(5MTのみ)を発し、1800ccになってもリッター100psを死守しました。
なお、当初は3ドアが先発、2ヶ月遅れの7月22日に4ドアHT(DB型)が後追いで発進しています。
3ドアと同じ車種構成ながら、その後のホンダ4WDの主流となる、独自のデュアルポンプ式4WDが4ドアHTのZXiで初お目見え。セダン的性格を与えた、145psのB18B搭載のESiを4ドアHT専用に設けています。
【SPEC】ホンダ インテグラ 3ドアクーペ Si VTEC(5MT・DC2型・1993(平成5)年5月)
●全長×全幅×全高:4380×1695×1335mm ●ホイールベース:2570mm ●トレッド 前/後:1475/1465mm ●最低地上高:150mm ●乗車定員:4名 ●車両重量:1100kg ●エンジン:B18C(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1797cc ●最高出力:180ps/7600rpm ●最大トルク:17.8kgm/6200rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:50L ●燃料消費率(10・15モード燃費):13.8km/L ●タイヤサイズ:195/55R15 ●車両本体価格(当時東京価格・消費税抜き):200万5000円
●インテグラ TYPE R(1995(平成7)年8月24日発表・10月16日発売)
ところでこの丸目4灯の顔、評判が芳しくなく、2年後の1995(平成7)8月24日発表のマイナーチェンジで大幅手術を受け、フォグライトを一体にした横長のライトに一新しました(発売は9月1日)。とはいえ、従来の丸目4灯は新機種SiR-IIに残されています。
それはそれとして、このマイナーチェンジと同時に、3ドア、4ドアHTに加わったのが、「TYPE R」です(発売は10月16日)。
出力はついぞリッター100psを超えた111psとなる200ps/8000rpm。車両重量は3ドアが1060kgで、4ドアHTが1100kgなので、パワーウェイトレシオはそれぞれ5.3kg/ps、5.5kg/ps。この比だけを見れば間違いなくスポーツカーの領域です。
エンジンはB18Cを改造したB18C 96 spec.R。ピストン形状を変更してノッキングが心配になるほどに高圧縮比(10.6→11.1)、吸排気の損失を抑えるべく、吸気管をデュアル構造からシングル構造に変え、バルブを軽量化したなど、ここには書ききれないほど、その変更項目数ときたら枚挙にいとまがありません。もちろん、VTECは吸気側、排気側とも、バルブタイミングとリフトの量も変えています。
このインテグラの1993年登場時、筆者が内外そこかしこにスポーティ志向を色濃く感じたのは、1992(平成4)年のNSXタイプRに続き、ホンダが当初から「TYPE R」投入を視野に入れてデザインした(?)からなのかも知れません。
【SPEC】ホンダ インテグラ 4ドアハードトップ TYPE R(5MT・DB8型・1995(平成7)年8月)
●全長×全幅×全高:4525×1695×1355mm ●ホイールベース:2620mm ●トレッド 前/後:1480/1470mm ●最低地上高:130mm ●乗車定員:5名 ●車両重量:1100kg ●エンジン:B18C(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1797cc ●最高出力:200ps/8000rpm ●最大トルク:18.5kgm/7500rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:50L ●燃料消費率(10・15モード燃費):13.4km/L ●タイヤサイズ:195/55R15 ●車両本体価格(当時東京価格・消費税抜き):226万8000円
●インテグラSJ(1996(平成8)年2月29日発表・3月1日発売)
「インテグラ」の名がつくクルマでは、これを忘れてはいかんでしょう。売った店がいくつあるのか? 買ったひとが何人いるのか? インテグラSJ! オデッセイに端を発するクリエイティブムーバー勢の大ヒットで、セダンが手薄になったのかどうか知りませんが、ホンダは当時のシビックセダンをベースに、というよりも、一部を変えただけのクルマを売り始めました。その第1弾がインテグラSJで、SJは「SEDAN JOYFUL」の略称です。
発表日が4年に1回しか来ない2月29日というのもすごいですが、元がシビックセダンであることをまったく隠す気がない姿なのもすごい。過去インテグラはもともとどれもシビックの派生車だったので、その意味ではこれまでのインテグラと変わりないのですが、いくらフロントフェイスを変えているとはいえ、中も外もシビックそのままでインテグラとは・・・ホンダのセダンに対する熱が冷めていることを見せられたようで、何だかさみしい思いがしたものです。
もっというと、このクルマの前後を少し上級仕立てにしたクルマが2代目ドマーニ。これもシビックがベースですから、いうなればサニーの上級版・サニーエクセレントかローレル・スピリットみたいなものですが、コンチェルトに続く、初代のオリジナルドマーニに傾けた「上質なセダンづくり」の情熱はどこに置いてきたの? といいたくなるクルマでした。余談ですが、さらにしつこくいうと、この2代目ドマーニはいすゞにOEM供給され、「ジェミニ」として販売されました。
【SPEC】ホンダ インテグラSJ VXi(CVT・1996年2月)
●全長×全幅×全高:4450×1695×1390mm ●ホイールベース:2620mm ●トレッド 前/後:1475/1475mm ●最低地上高:150mm ●乗車定員:5名 ●車両重量:1070kg ●エンジン:D15B(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1493cc ●最高出力:130ps/7000rpm ●最大トルク:14.2kgm/5300rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:45L ●燃料消費率(10・15ード燃費):17.2km/L ●タイヤサイズ:185/70R13 ●車両本体価格(当時東京価格・消費税抜き):159万8000円
●インテグラ(DC5型・2001(平成13)年7月2日発表・発売)
最後のインテグラです。このクルマではサッシュ付きの2ドア型に1本化。この頃はセダンと同時に2ドアのクルマも市場が縮小しており、かつてはトヨタのセリカ、日産のシルビアとあれほど三つ巴戦を演じたプレリュードが販売終了。このインテグラには、そのプレリュードの層を吸収する役割も与えられました。とはいえ、プレリュードとは趣を異にするクルマなので(だからこそそれまで両車共存していたわけだ)、このインテグラがその役をどれほど果たしたかは未知数です。むしろ既存ユーザーはプレリュードを卒業して当時のステップワゴンに移行し、プレリュードオーナー予備軍はS-MXに流れたかも知れません。当時の日本のユーザー嗜好はそれくらいガラリと変貌した頃だったのです。
さて、インテグラの最終型。スポーティカー、スペシャルティーカー、スポーツカーの区分けははっきりしないものの、志はスポーツカーの世界を目指したように思えます。2ドアスペシャルティは市場シュリンク。プレリュードは演奏終了。えーい、どうせやるなら過去を忘れて、いっそスポーツカー一辺倒でいくか! そんな割り切りの声が聞こえてきそうなインテグラでした。
その証拠に、先代では特殊モデル扱いだった「TYPE R」を主軸に開発して全面に押し出してきました。その向こう側に、普及モデルの「iS」を位置づけています。
このクルマから衝突要件を満たすため、小型車枠を幅で超えて3ナンバーモデルの域に突入しました。過去インテグラに対してずんぐりして見えるのはボンネットが高くなったためで、これは歩行者保護の対策です・・・どこのメーカーも、スタイリッシュな造形をしにくい時代に入っていました。
エンジンは2LのK20Aで、TYPE R用は220ps/8000rpm、21.0kgm/7000rpmを発生。iS用は160ps/6500rpm、19.5kgm/4000pm。いずれもDOHC VTECですが、この時代らしく、吸気側のバルブ位相を段階的にではなく、無段に連続可変する方式に進化。このインテグラ用に限りませんが、ゆえに「DOHC i-VTEC」を名乗るようになりました。
内装は、歴代インテグラとは完全に決別。インストルメントはスポーツカー・・・というよりも、何となくコンセプトカー的で、そういえば、ホンダ初のハイブリッド「インサイト」のそれを彷彿させる造形でした。
【SPEC】ホンダ インテグラ iS(5MT・DC5型・2001(平成13)年7月)
●全長×全幅×全高:4385×1725×1400mm ●ホイールベース:2570mm ●トレッド 前/後:1485/1485mm ●最低地上高:150mm ●乗車定員:4名 ●車両重量:1170kg ●エンジン:K20A(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1998cc ●最高出力:160ps/6500rpm ●最大トルク:19.5kgm/4000rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:50L ●燃料消費率(10・15モード燃費):14.8km/L ●タイヤサイズ:195/65R15 ●車両本体価格(当時全国価格・消費税抜き):174.0万円
【SPEC】ホンダ インテグラ TYPE R(6MT・DC5型・2001(平成13)年7月)
●全長×全幅×全高:4385×1725×1385mm ●ホイールベース:2570mm ●トレッド 前/後:1490/1490mm ●最低地上高:130mm ●乗車定員:4名 ●車両重量:1170kg ●エンジン:K20A(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1998cc ●最高出力:220ps/8000rpm ●最大トルク:21.0kgm/7000rpm ●燃料供給装置:PGM-FI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:50L ●燃料消費率(10・15モード燃費):12.4km/L ●タイヤサイズ:215/45R17 ●車両本体価格(当時全国価格・消費税抜き):259.0万円
時代によって車名、姿形、思想を変えながら走り続けてきたインテグラも、2ドアクーペ市場の縮小化を前にしては生き残る道を見いだせず、その歴史に幕を降ろしたのでした。
(文:山口尚志 写真:本田技研工業)