EVレースは早くも後半戦。テスラモデル3が上位を独占【JEVRAシリーズ】

■テスラモデル3に乗る地頭所光選手、負けなしの今季5連勝!

2010年のシリーズ初開催以来、12年目のシーズンを迎えているJEVRA(日本電気自動車レース協会)主催のEVレースシリーズ「ALL JAPAN EV-GP SERIES」。今季2021年は全7戦を予定しているこのシリーズですが、8月8日に栃木県のツインリンクもてぎで、その第5戦が開催されました。

JEVRArd5スタート
モデル3の3台がスタートから後続を引き離していく

JEVRAシリーズは、電気自動車(BEV)および最終的な出力が電動のみとなる車両(燃料電池車やレンジエクステンダーEV)で行われるレースシリーズで、市販電気自動車から実証実験で使用された市販されていない車両や自作の電気自動車まで、これまで数多くの車両が参戦をしているシリーズです。

参戦するドライバーも元F1ドライバーやGTドライバーといった有名どころもいれば、一般のEVオーナーまで、実に幅広いのも特徴です。

#104 飯田 章(トーヨーシステムミライCNRアキラR)
ひときわ大きな車体が特徴的な新型ミライ。まだまだその実力は見えてない状況かもしれませんが、飯田選手は「とにかくパワーがない」と辛いレースが続きます

今シーズンは、ポルシェ・タイカンが初参戦するなど、開幕から注目を浴びていましたが、レース途中でセーブモードが入ってしまい勝てないまま。結局テスラモデル3の速さが圧倒的で、今シーズンもこれまで全戦全勝となっています。

これまで、富士、袖ケ浦、筑波、SUGOと開催してきた2021年シーズンですが、地頭所光選手のテスラモデル3(TEAM TAISAN東大UPテスラ)が土つかずの4連勝(昨シーズンから数えると6連勝)中です。

また、JEVRAシリーズ初代チャンピオン(2010年)でもあるレーシングドライバーの飯田章選手は、第3戦筑波から復活参戦。飯田選手が持ち込むのは新型ミライです。

#2 今橋彩佳(ガーデンクリニックCNR3アキラRテスラ)
予選でトップタイム(2分22秒680)を記録したのは、テスラモデル3を駆る今橋彩佳選手。前戦のSUGOに続く2戦連続でのポールポジション獲得となった

そして迎えたシリーズ第5戦は、モデル3が5台、日産リーフがEV-2クラスへ1台、EV-3クラスに1台、EV-Rクラスの日産ノートe-Powerが3台、燃料電池車のEV-Fクラスに1台という内訳で11台が参戦。

●雨は予選から降り続き…

猛烈な暑さが続いていた関東地方ですが、前週に発生した台風10号がこの週末の3連休に東日本に接近するということで、大雨の予報も出されていました。

#1 地頭所 光(TEAM TAISAN東大UPテスラ)
雨が強弱を繰り返す予選セッション。地頭所選手のアタックのタイミングは若干雨が強かったこともあってか、予選は2分25秒082にとどまり3番手に

この日もてぎ周辺は朝から雨。JEVRAの予選セッションは午前8時30分からの15分間行われましたが、この時点で雨は降り止む気配はなし。だからといって台風の影響で雨が強く降る、であるとか、風が強く吹くということもなく、湿度が高く非常に蒸し暑いコンディションで各車がコースイン。

このセッションでトップタイムを出したのは、テスラモデル3を駆る今橋彩佳選手でした。前戦のSUGOに続く2戦連続でのポールポジション獲得で、打倒地頭所の狼煙を上げた、といった感じでしょうが。

さらに2番手には、現在シリーズランキング2位につけるTAKAさん選手。ポイントリーダーの地頭所選手はこれで前をふさがれた形になり、厳しいレース展開となることが予想されました。

JEVRArd5スタート直後1コーナー
1コーナーは予選順に進入していく

●決勝も雨…、いつもの地頭所選手が手堅く優勝!

充電時間を挟み、午後1時45分に12周で争われるJEVRAシリーズ第5戦決勝レースがスタートしました。このツインリンクもてぎのコースを12周するレースですが、なんといっても高低差が30mあり、特にダウンヒルストレートから最終コーナーにかけて続くのぼりのレイアウトであったり、エネルギー量の決まっているEVにとっては厳しいコースのひとつです。

この日の朝の予報では雨が上がるのでは、ということだったのですが、この決勝レースを迎えても雨は降り止むことはありませんでした。フォーメーションラップ無しのスタートでは、上位勢が順調にスタートし予選順に1コーナーへ進入していく一方で、8番グリッドにつけていたKIMI選手はスタート直前に電源オフとなってしまって再起動に時間がかかり最後尾から追い上げることとなってしまいます。

JEVRArd5ゴール
モデル3の地頭所選手が余裕のチェッカーで今季5連勝を飾る

今橋選手、TAKAさん選手に続く地頭所選手は、5コーナーまでに早くもその前を行く2台をパスしてオープニングラップをトップで戻ってきます。地頭所選手はその後も安定した走りを見せ、土つかずの今季5勝目を上げました。

ポールスタートの今橋選手は、一時4番手まで順位を落としましたが、6周目には再び2番手まで順位を上げ、その後は淡々と走行を重ね、2位に今橋選手(ガーデンクリニックCNR3アキラRテスラ)、3位にTAKAさん選手(適当Lifeアトリエ Model3)が入りました。

表彰台
地頭所選手はシリーズポイントを100に、一方3位のTAKAさんは65ポイントとさらに差が広がってしまった

今橋選手は「スタートで地頭所選手があんなにピューと行くとは思わなかった。ここでついていかないと、とは思ったんですが、頑張ってついていってもバッテリーの使い方がまだそれほどうまくないので、一度TAKAさん、アニーさんに前に行ってもらいながら様子を見てバッテリーに熱をたせないように、それでも地頭所選手に離されないようにって走ってました。ちょっとずつ離され始めたので無理のない程度にペース上げて、2位に上がって3位と離れてからは、私が制御入っても抜かされないってところまできたところで地頭所選手を一生懸命追いかけましたが追いつきませんでした」とコメント。

優勝した地頭所選手は「予選は後半雨が強くなってきちゃって、全部まとまらずに3番手になっちゃいました。決勝は今橋さんとTAKAさんにペース決めてもらってそれについていくつもりだったんですが、あまりペースが上がらなくて、じゃ行けってことかな? ということで前に出ました。でも最終的には予想していたペースの通りなので、特に無理にプッシュしたわけでもなく、あれがスタンダードなペースだと思いますし、自分のペースで行ったらゴールできたって感じです。後半今橋さんが来たのでプッシュしましたが。今年は全勝でシーズンを終えるつもりで残り2戦も行きます」とコメントしてくれた。

EV-R(レンジエクステンダー)クラス
ノートe-POWER 3台が参戦し、クラス成立したEV-R(レンジエクステンダー)クラス。新旧のバトルもみることができた

飯田選手の駆る燃料電池車ミライは、前戦SUGOと同様にリーフe+を駆るレーサー鹿島選手とのバトルを今回も展開していました。

予選ではリーフのほうが速かったのですが、レースではまずミライが先行。それをリーフが追いかける展開でしたが、9周目に鹿島選手(東洋電産・LEAFe+)がミライをパスして、5台のモデル3勢に続く6位。飯田選手のミライは7位でフィニッシュとなりました。

●関谷正徳理事長が語るEVレースの未来とは?

シーズンも残り少なくなってきました。地頭所選手は今回のもてぎ戦を終えシリーズポイントを100としており、シリーズ2位につけているTAKAさん選手とは35点差となり、地頭所選手がチャンピオンに大手を掛けたという状況です。

2021シーズンのJEVRAシリーズ残り2戦は、10月3日(日)に筑波で、そして10月31日(日)に袖ヶ浦で、それぞれ60kmレースを開催予定です。

関谷正徳JEVRA理事長
関谷正徳JEVRA理事長

今シーズンより、JEVRA3代目理事長に就任した関谷正徳理事長に話を訊くことができました。

「ル・マンなんかもハイブリッド、フォーミュラEもある。モータースポーツも内燃機関だけのパワー競争という時代でもない中で、出てくるべきして出てきたシリーズです。もちろん、まだいろんな諸問題がある中で、世の中に浸透していくかどうか、というところですが、なかなか簡単にはいきませんが、技術的に改良されていく余地もありますし、ね。フォーミュラEも変わってきましたし、新しい方向に向かっていくときかもしれませんね。今、という状況のなかでは苦戦しているのはありますが、これから、です。ちゃんとレースができるハードも必要ですし、理解者も必要です。新しい見せ方を発信していきたいですね」とコメントをしてくれました。

青山 義明

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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