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■台風対策には車両保険が必須! 自然災害では対物保険が適用されないケースも
梅雨も明け、暑い夏がやってきました。気温の上昇で熱中症に気を付けなければなりませんが、夏といえば台風が増える時期でもあります。近年、地球温暖化の影響か、日本に上陸する台風は勢力が強くなり、災害も多く発生している状況です。
そこで今回は、台風によるクルマの被害や、台風時にやむを得ずクルマを使っていて発生した事故などに対して、自動車保険がどのような機能を果たすのか、調べてみました。
●台風による飛来物被害は立証が難しい
台風の大きな特徴は、強い雨と風です。特に風は家屋を倒壊させ、電柱を倒すなど、建築物への大きな被害をもたらす一方で、多数の飛来物を発生させます。では、風による飛来物が、クルマに当たり、傷やへこみ、ガラスの破損などの被害を受けた場合、どのような対処になるのでしょうか。
人間心理としては、飛来物の持ち主を特定し、所有者に対して損害賠償請求をしようと考えたいところですが、実際に台風の飛来物で起きた損害を、所有者に請求するのは難しいです。
民法717条には、「土地工作物の占有者、所有者の責任」という項目があり、「土地の工作物の設置または保存に瑕疵(かし/法律や当事者の予期するような状態や性質が欠けていること)がある場合、その工作物の占有者は被害者に損害を賠償しなければならない」と明記されています。すなわち、飛来物が特定できると、その所有者に損害賠償請求をすることができることになっているのです。
しかしながら、台風や竜巻などの強風による飛来物を特定するのは難しく、飛来しクルマに当たってきたものが特定できても、その所有者の保存方法に瑕疵がなければ賠償はしてもらえません。
瑕疵の具体例は、「家の屋根や設備が今にも落ちてきそう、取れて飛んできそうな状態を放置していた。台風が来ると風によって剥がれ落ち、クルマにぶつかって傷をつけるということが予見できたが、なお修理等をしなかった」。このような状態を立証する必要があるわけです。立証されなければ、損害賠償請求を起こしても棄却されます。所有者の瑕疵に関しては、すべての条件が当てはまるということは少ないです。飛来物が関係する事故では、誰かに責任をとってもらうということは、難しいということになります。
●台風被害の基本は「自分のものは自分で直す」
飛来物による傷や破損、洪水による車両の水没を起因とした汚破損など、台風の風や雨によって引き起こされた被害は、自分で直すというのが基本です。この時に活躍するのが「車両保険」となります。
車両保険には「一般型(フルカバータイプ)」と「限定型(エコノミータイプ)」があります。地震・津波・火山の噴火を除く自然災害による損傷では、どちらのタイプでも補償対象となることが多いです(詳しい補償内容については、ご加入の保険会社へお問い合わせください)。
修理に関して、保険金を請求すると、自動車保険の等級が下がります。台風による飛来物や、水没車両の修理では1等級ダウンです。事故有係数も1年となり、翌年の支払保険料が割り増しされます。
軽微な修理の場合、修理費よりも割り増し保険料の方が高くなるというケースもあります。保険請求の際には予め、請求後の保険料をシミュレーションしてもらい、修理費と比較することが大切です。
先述した通り、台風被害では誰かから補償を受けることは難しいのが実情です。自分が悪くなくても、自分で修理段取りから費用の支払いまでを行う必要があります。もしもの時のために、エコノミータイプの車両保険には加入しておくことをおススメします。フルカバータイプに比べて保険料の上昇幅も低く、比較的加入しやすい補償です。
●台風が原因で事故が発生したらどうなる?
台風による暴風でクルマが煽られ、隣のクルマにぶつかった、家の玄関にぶつかったという場合はどうなるのでしょうか。
台風が無い状況で、他人のクルマにぶつかった、建築物にぶつかった場合には、自動車保険の「対物賠償保険」を使うことができます。しかし、台風が原因で他人のクルマや建築物などを壊した場合には、対物賠償保険は適用対象外となるケースがあります。
対象外となる理由としては、クルマの運転操作に対して、人が由来のミス(人的ミス)が一切介在せず、台風のみが原因と判断された場合には、その事故は不可抗力となり、事故を起こした側には、損害賠償責任がないと判断されることがあります。
台風下では、相手に責任を問えないケースがあることを理解しておき、自分のモノで誰かに被害が及ばないようにする、誰かの不手際で自分が被害を受けないようにすることが大切です。
台風が来る前に、クルマを安全な場所へ避難させておく、洪水や暴風の際には危険なので、クルマを使用した移動は控えるといった、人命最優先の行動が第一ですね。
●まとめ 自分の自動車保険の補償範囲を確認しよう!
近年では線状降水帯の発生や、台風の大型化により、雨風による災害が多くなっています。自分の身を守るのと同じように、愛車を大雨や暴風から守る仕組みを取り入れておくことも大切です。自分が保険を必要とした際に、役に立たなかったということが無いように、今のうちから、自動車保険の補償範囲を確認しておきましょう。
(文:佐々木 亘)