改正道交法の「あおり運転」厳罰化から1年!危険運転の減少など変化を感じない人が74.4%

■いまだ無くならないあおり運転。あおり運転への罰則は効果が出ているのか?

急な割り込み、不要な急ブレーキ、車間距離の不保持など、いわゆる「あおり運転」に対する罰則が設けられた改正道路交通法が2020年6月30日に施行され、はや1年が経ちました。

改正道交法のあおり運転厳罰化から1年で変化を感じない人が74.4%
2020年6月30日からは、あおり運転について罰則も設けられた

あおり運転については、ここ数年、たとえば2017年におきた「東名あおり事故」(東名高速で妨害運転をうけた夫婦がトラックに追突されて死亡)など、痛ましい事故が多発し社会問題となっていました。

昨年2020年6月に施行された改正道交法は、それらに対処するために設けられたものですが、実際に効果は出ているのでしょうか。

定額カーリース「おトクにマイカー 定額カルモくん」を運営するナイルでは、クルマをよく運転する全国の男女1180人を対象に、あおり運転に対する意識調査などを実施。

その結果、法律の施行後に、他人の運転に変化を感じる人はわずか25.3%で、74.7%が変化を感じていないことなどが分かりました。

●あおり運転の頻度は減った?

2020年6月30日に施行された改正道路交通法で新たに設定されたのは、妨害運転、いわゆるあおり運転に対する罰則です。

これにより、他の車両などの通行を妨害する目的で、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持などの違反を行うことは、厳正な取締りの対象となり、最大で懲役3年の懲役または50万円以下の罰金に処せられることとなりました。

また、妨害運転により著しい交通の危険を生じさせた場合は、最大で懲役5年の懲役、または100万円以下の罰金に処せられることになっています。

さらに、あおり運転で捕まると、免許は一発で取り消しになるなど、かなりの厳罰が処せられます。

改正道交法のあおり運転厳罰化から1年で変化を感じない人が74.4%
他人の運転に変化を感じるかどうかの調査結果(出展:ナイル)

今回の調査は、前述の通り、この改正道交法が施行された後に、一般ドライバーが危険なあおり運転について変化を感じるかなどを、インターネットのアンケートによって調べたものです。なお、調査期間は2021年6月6日〜6月16日の間に行われました。

アンケートでは、まず2020年6月30日に改正道路交通法が施行された以降、「他人の運転に変化を感じるかどうか」を質問。

その結果は、前述の通り、「変化を感じない」という回答が74.7%、「変化を感じる」が25.3%という結果になりました。

また、他人の運転に変化を感じると答えた人に、「どんな経験から変化を感じたか」を質問。結果は、以下の通りです。

1位:「あおり運転と感じる頻度の減少」28.1%
2位:「危険な運転をする車の減少」21.2%
3位:「車間距離を気にした運転の増加」17.1%
4位:「譲り合いの増加やマナー向上」12.3%
5位:「ドライブレコーダーの設置車の増加」11.0%
6位:「ニュース報道の頻度の減少」4.8%
7位:「そのほか」5.5%

改正道交法のあおり運転厳罰化から1年で変化を感じない人が74.4%
どんな経験から他人の運転に変化を感じるか(出展:ナイル)

ちなみに、1位の「あおり運転と感じる頻度の減少」には、「実際あおる人が減ったように思う」「危機を感じなくなった」「普段あおられていたところでそれがなくなった」などの回答があったそうです。

また、2位の「危険な運転をする車の減少」には、「割り込みが少なくなった」「荒い運転を見る回数が減った」などの答えがあったといいます。

●まだまだ危険な運転を見かける

調査では、「他人の運転に変化を感じた」と回答した人に、自身は「以前と比べて安全運転を意識するようになったか」どうかも質問。「意識するようになった」と回答した人は94.6%、「特に意識は変わっていない」は5.4%という結果になりました。

改正道交法のあおり運転厳罰化から1年で変化を感じない人が74.4%
自分は安全運転を意識するようになったか(出展:ナイル)

これにより、他人の運転が変わったと感じている人たちのほとんどが、自分自身は、より安全運転を心掛けるようになったことが分かっています。

一方、調査では「他人の運転に変化を感じない」と回答した人に、「どんな経験から変化がないと感じているか」も質問。その結果は以下の通りです。

1位:「あおり運転や危険な運転を見かけるから」40.3%
2位:「そもそもあおり運転をされた経験がないから」18.9%
3位:「ニュース報道を見るから」9.1%
4位:「外出が減ったから」7.5%
5位:「マナーの悪い運転を見かけるから」6.2%
6位:「そのほか」18.0%

これにより、法改正から1年が経過しても、状況が変わっていないと感じている人もいることが分かります。

改正道交法のあおり運転厳罰化から1年で変化を感じない人が74.4%
どんな経験から他人の運転に変化を感じないか(出展:ナイル)

なお、6位の「そのほか」には、「法律が変わったことを知らない人もいるのではないか」「まだまだ法律が浸透していないと感じる」といった回答もあったそうです。

●常識的なルールやマナーも守るべき

今回の調査を行ったナイルでは、これら結果について、以下のように述べています。

「あおり運転に対する罰則の創設などがあった改正道路交通法が施行されて1年、多くの人がより一層安全運転を心掛けるようになった一方で、まだまだあおり運転などの危険な運転をしている方もいるということがうかがえる結果になりました。心と時間に余裕を持ち安全な運転を心がけていただきたいと思います」。

国産車を販売するディーラーの複数が、最近は新車を購入する人に「オプションのドライブレコーダーを付ける人が増えた」といいます。また、カー用品販売店では、ここ数年でドライブレーコーダーのコーナーが必ず設けられ、多様でさまざまなモデルが売られるようになりました。

改正道交法のあおり運転厳罰化から1年で変化を感じない人が74.4%
あおり運転に対する自衛策のひとつとして、ドライブレコーダーが急速に普及

こういった傾向は、あおり運転に遭遇した際の自衛策への意識が高まっていることを表しているといえます。一方で、今回の調査を見る限りでは、ナイルのコメントと同様、法律により罰則が設けられても、まだまだ効果を実感できない人も多いようです。

いずれにしろ、あおり運転は危険な行為です。前述の通り、過去に悲痛な事故が多発していることから考えても、ぜひ止めてもらいたいですね。

また、自分はそのつもりがなくても、たとえば、先行車との車間をきちんと取っていないと、前のクルマを運転するドライバーが「あおられている」と感じることもあります。

くれぐれも、運転する時は、法律はもちろんですが、常識的なルールやマナーも守りたいものですね。

(文:平塚 直樹 *写真は全てイメージです)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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