トライアンフの歩みとは?:自転車輸入から始まった世界最古といわれる英国バイクメーカー【バイク用語辞典:バイクメーカーの歴史編】

■長い歴史的を持ち、米国ハーレーダビッドソンと双璧をなすバイクメーカー

●第二次世界大戦後から1970年代に栄華を誇った英国バイクの雄

英国を代表するバイクメーカーであるトライアンフは、自転車の輸入会社を起源にして他社製エンジンを自転車に搭載することでバイク事業に参入しました。世界大戦中に軍事用バイクとして評価を上げ、戦後は米ハーレーダビッドソンと並ぶ世界トップのバイクメーカーへと成長しました。

英国を代表するバイクメーカーのトライアンフの歩みについて、解説します。

●起源

トライアンフの起源は、1885年にドイツ人のジークフリード・ベットマンとモーリス・シュルトが設立した「ジークフリート貿易会社」です。自転車の製造・販売で成功後、バイク製造に参入しました。

・1887年:自社生産の自転車を販売する「トライアンフ・サイクル」を設立
自転車需要の流れに乗って販売会社は大成功

・1902年:自転車の成功を基盤にバイク事業に参入
自転車に他社製エンジンを搭載した初号機「トライアンフミネルバ」は大衆車ととして大ヒット

1916年モデルH (C)Creative Commons
1916年モデルH (C)Creative Commons

・1905年:完全自社製バイクを生産

・1907年:マン島TTレースで活躍、知名度を上げて英国を代表するメーカーに成長

・1914年:第一次世界大戦で、優れた走破性と信頼性によって軍用車として活躍

●トライアンフの躍進

戦後の不況を乗り切ったものの、1929年の世界恐慌によって業績が悪化、1932年に自転車部門を売却。その後も長らく低迷が続き、事業立て直しのため1936年に技術者エドワード・ターナーを迎え入れます。

ターナーは、すでにラインナップにあった250/350/500ccの単気筒OHVモデルの外観をスポーティなデザインに変更した「タイガー70/80/90」のタイガーシリーズを発表。スタイリッシュに生まれ変わったタイガーシリーズは、大ヒットしてトライアンフを立て直すきっかけになりました。

1938年スピードツイン (C)Creative Commons
1938年スピードツイン (C)Creative Commons

そして1938年に登場したのが、OHV500ccの新型直立2気筒エンジンを搭載した「スピードツイン」でした。この2気筒エンジンは、軽量コンパクトが特長でした。このスリムさと軽量なエンジンの基本設計は、その後1970年代の後半まで引き継がれました。

●トライアンフのバイク史概要

1939年第二次世界大戦がはじまると、トライアンフは軍用車の生産に追われます。そして、戦争が終わると再び一般車の生産を始めます。

・米国に進出してハーレーダビッドソンに対抗
1949年、流線型デザインとパワーアップした6Tスピードツインを搭載した「サンダーバード」を投入して米国市場を席巻。重厚なハーレーに対して、トライアンフは軽量高性能なバイクで人気を獲得

・トライアルでも実力を発揮
1956年スコテッシュトライアルで優勝を重ねた200cc「タイガーカブ・トライアルカブ」は、「女性用のトラ」と呼ばれてその実力を遺憾なく発揮しました。

1985年ボンネビルT140 C)Creative Commons
1985年ボンネビルT140 C)Creative Commons
1959年T120ボンネビル(C)Creative Commons
1959年T120ボンネビル(C)Creative Commons

・世界最速を記録をした記念にボンネビルが登場
1956年ユタ州のボンネビル塩湖(ソルトレイク)でサンダーバードのエンジンをチューニングしたトライアンフが世界最高速度345km/hを記録。これを記念してトライアンフの最速モデルにはボンネビルの名が冠せられ、1959年に誕生したツインキャブ650ccの「T120 ボンネビル」は人気沸騰

・打倒CB750を掲げたトリプル
満を持して1969年に登場した3気筒750cc「トライデント」、しかし4気筒のホンダ「CB750」にはどうしても勝てませんでした。この頃から、日本製バイクが世界の主役となります。

・衰退からの復活
日本車の台頭の影響もあり、1970年代トライアンフは低迷、1973年に経営破綻状態。その後は、親会社が変わるなど紆余曲折の時代を迎えます。復活したのは、1990年のDOHCエンジンを搭載したニュートライアンフの登場からでした。


スタイリッシュなデザインと豊富なバリエーションで、ブリテッシュバイクの中でも最も販売台数が多く、英国を代表するトライアンフ。本格バイクは、1938年の直立2気筒エンジンを搭載したスピードツインで始まりましたが、その後登場したボンネビルがトライアンフの人気を不動にしました。1970年代から低迷しますが、「トラ」は現在も多くのファンを楽しませています。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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