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■雨の日に不可欠なワイパーについて考える
クルマが走ったり停まったりするのは晴れの日の穏やかな気候のときだけではありません。雨の日雪の日強風の日のほか、真夏の酷暑、寒冷地の零下何十度といった気温、そして空気が汚れてほこりだらけといった中だって走るわけです。こういった過酷な環境下にあっても、クルマはよく音を上げないわなといつも感心するのですが、無事に出かけて帰ってくるには、クリアな視界が得られることが大前提になります。
今回はワイパーのお話。前回のガラス撥水処理解説につづく、梅雨時季ドライブに向けた視界対策の続編です。
●過酷な環境下にあるワイパーゴム、どれくらい使ったら交換していますか?
ワイパー、ここではガラスに接触するワイパーゴムを指しますが、クルマそのものも去ることながら、このゴムさんの生活環境もなかなか過酷です。
使われていないときでも雨風ほこりにさらされ、かつ、ワイパーアームのばねの力を受けてガラスに押し付けられて変形させられているわ、ワイパースイッチを入れられれば、押し付けられたままガラスの上を引きずり回され、反転時には押し付けられたまま逆向きに変形させられるのです・・・生まれ変わってもワイパーのゴムにはなりたくありませんな。
さてこのワイパーゴム、みなさんはどれくらいの頻度で交換をしていますか?
筆者が自前のクルマを持ち始めた頃は半年に1回、左右同時に交換していました。何で聞いて知ったのか、「半年に1回」という言葉をただ鵜呑みにしてのことでありました(←主体性がない。)。ただ、半年ぐらいでは水の切れに劣化が見られないことに気づき、いつしか交換インターバルは1年目安に。その頃になると、カー用品店で入手する交換ゴムはいちばん安い品でも値が高くなっており、「手入れをしながら使っていれば、長持ちするようになるのではないか」と考えるようになりました。
●たったこれだけの作業で長寿命に!
ワイパーのゴム部分には、走っている間に入り込んだ空気中のほこりやごみが想像以上に溜まっているものです。この状態のワイパーと汚れたガラスの組み合わせは最高です。汚れがワイパー払拭範囲に広がり、ワイパーを動かす前より見えなくなるのです。ここまでくると「わあ・・・、きれいに汚れたね」とほめたくなり・・・いやいや、だめです。常にクリアな視界を保つため、ガラスのコーティングだけではなく、ワイパーそのものの手入れも行わなければいけません。
その手入れ法をお教えしましょう。といっても大したことではなく、ワイパーアームを起こし、ゴムのガラスと接触する部分、いわば刀でいう刃先の部分を清掃するだけのことです。
ティッシュか不織布を1枚用意し、水に濡らしてください。これをある程度固く・・・ではなく、水が出なくなる程度まで絞り、刃先を拭うのです。そう、「ルパン三世」の石川五右衛門が斬鉄剣の手入れをしているときのように。すると、ゴム内部のカーボンも含んでいるのか、1回サッと走らせるだけでティッシュないし不織布は驚くほど黒くなります。
これを汚れがつかなくなるまで往復させ、元に戻してワイパーを動かしてみてください。新品同様に・・・とまではいいませんが、「まだまだ使えるじゃないの! まだ買わなくていいヤ。」というくらいにはなりますよ。
これを月1回の洗車のたびといわず、10日~2週間に1度、または「ん? 線が出始めたな」と気づいたときに行うようにすれば鮮明な視界を長期的に得ることができ、ゴムそのものも長持ちします。新しいうちから定期的に行うことを習慣づけておくとなお効果的です。
ただし経験上、この手入れは、前回解説したガラスの撥水処理が前提であると考えたほうがよさそうです。といっても、撥水処理・未処理の違いによるゴム寿命の比較をしたことがないので明言はできないのですが、撥水処理を行うとワイパーの動きがよくなるのは確かで、あくまでも経験上の話ながら、撥水処理もワイパーの長寿命化に好影響を与えているのではないかと思っています。
筆者はいまのクルマを含めて5台、ワイパーゴムについてこのような使い方をしてきましたが、前車のとき、「この使い方で果たしてゴムはどれくらいまで使えるのだろう」と思いつき、あえて交換の道を採らずに同じものを使い続けた結果、少なくとも4年は持たせることができました。「少なくとも」というのは、実験の途中でクルマを入れ替えたため、使いものにならなくなるタイミングを知ることができなかったのです。まだ乗り続けていたら、あと2年くらいは使えたのではないか。もちろん、いつまでも新品同様とはいきませんでしたが、「線が入り始めたな~」と気づくたびに清掃していたら、撥水処理の効能もあったのか、「要交換」のタイミングがなかなか訪れないという好ましいことになりました。
それにしても、ワイパーゴムも安くはなくなりました。筆者が免許を取り立ての頃はいちばん安いもので1本400円~500円弱だったと思うのですが、同程度の品がいまでは800円ほど。フロント左右、クルマによって有無があるリヤワイパー用も含めると2400円ほどになってしまいます。長持ちさせられるなら手入れをしながらできるだけ長く使い、維持費の低減に努めたいものです。
●フロントガラスが立ち気味のクルマは要注意!?
ところで、ワイパーゴム寿命の長短は、フロントガラスの角度にもよるらしいものであることがわかりました。
前段の「前車」とは日産ティーダのこと。いま使っているクルマは旧型のジムニーシエラ。写真をごらんになればおわかりのように、フロントガラス角がまるで異なります。
2018年3月のシエラ納車時から使っていたワイパーゴムは、納車から1年ちょうどで刃先部分がちぎれました。手入れも行わず、無頓着にちぎれたまま何年も使っているワイパーのクルマがありますが、あのちぎれの初期段階。まあ、新車納入は2018年3月ながら、ワイパーゴム自体はそれ以前に造られたものなのかも知れず、たまたま切れたのだろうと思って交換したのですが、これをティーダのときと同じ、カー用品店「オートアールズ」の自社ブランド品の長さ違いを買い、ティーダ時と同様の使い方をしてもこの2セット目はまた同じ1年でちぎれました。このときに同じ3セット目に代え、いま現在使っている4セット目は今年2021年3月に交換したもの。3セットめがどうだったのか確認するのを忘れましたが、いずれにしてもこの事象は、製品の製造不良というよりは、フロントガラス角の違いによるものだとは思っています。
ただしそこから先の理由は、いまのところ不明。両車ともガラスに対する刃先の当たり方・・・ワイパーアームのピボット軸鉛直線とガラスの相対角度はそう変わらないはずだと思うのですが、シエラはガラスがより垂直寄りになるぶん、ワイパーアーム内のばね力が強い=ゴムのガラスへの圧着力が高くしてあるのではないか? そしてそれがゴム寿命に影響しているのではないか? すべて筆者の推測ですが、その推理は合っているのか、いないのか・・・フロントガラスがおっ立ち気味のクルマに乗っている方、どうですか? 教えてほしいと思います。
●ウォッシャー液残量の確認も忘れずに
最後。エンジンフードを開けてウォッシャー液の残量確認も忘れないようにしてください。出先の明るい場所でガラス汚れに気づき、ウォッシャースイッチを入れたら液が切れていたというのは困るものです。困るばかりか、いまのクルマはウォッシャースイッチを入れるとワイパーも連動するようになっていますが、タンクが空だとワイパーで空拭きすることになり、ごみがガラスを傷つける恐れがあります。
最近のクルマはエンジンルームがギッシリで、ウォッシャー液のタンクはバンパー内に追いやられて給水口が顔を出すだけになりました。
よってタンクを見て残量を把握することができなくなり、不便になりましたが、どうか面倒がらずに中身を確認し、残りが少なかったらウォッシャー液を補給してください。あの青い水、カー用品店で買えば2Lで200円ほど。安いものです。
ほんとうは高いクルマにだけでなく、すべてのクルマにウォッシャー液残量警告灯をつけてくれるといいんだけどなあ、燃料残量の警告灯と同じようにね。
ではまた次回。
(文/写真:山口尚志)