イモビライザーとは?IDが一致しないとエンジンがかからない防犯性の高い鍵【バイク用語辞典:便利な装備編】

■盗難防止に有効なので高級バイクで普及が進む

●車体とID照合するキーなので、スペアキーによる盗難防止に有効

クルマで採用が進んでいるイモビライザーキーですが、バイクでも採用が進んでいます。イモビライザーキーは、キーに埋め込まれた電子チップが車体側とID照合して、エンジンが始動できるようにした盗難防止装置です。

ID照合機能付きのイモビライザーキーについて、解説していきます。

●イモビライザーキーとは

一般的なキーは、ギザギザの付いた金属の部分が鍵穴内部の凹凸と噛み合うことでキーが回り、エンジンがかかる仕組みです。これだとスペアキーを作られてしまうと、簡単にバイクが盗まれたり、悪さをされてしまいます。これを回避するためのシステムが、イモビライザーキーです。

イモビライザーの仕組み
イモビライザーの仕組み

イモビライザーとは、オリジナルキーに内蔵された電子チップが持つ固有のIDコードと、車両側のIDコードを電子的に照合して、一致しなければエンジンが始動できない盗難防止装置です。エンジンに近づいたり、キーを挿入するとID照合が行われるシステムなので、合鍵でバイクを動かそうとしてもエンジンがかからず、しかもアラームが鳴るので周囲の人に気づかれやすいというメリットもあります。

似たような名称にスマートキーがあります。これは、スマートキーを携帯してバイクに近づくとバイクが所有者であることを認識し、メインスイッチ(ボタン)の操作だけでエンジンが始動できるシステムです。利便性向上と盗難防止に効果的で、クルマではごく一般的なシステムです。

●イモビライザーの歴史

イモビライザーは、クルマの盗難や損傷被害が多かった欧州で1996年にクルマへの装着が義務化されました。一方、欧米に比べて犯罪率が低い日本では、それほど普及しませんでした。

しかし、2000年頃から世界的なイモビライザーの標準装備化の流れが起こり、日本でも普及が進み始めました。国内では、新車へのイモビライザーを装着可能な車種は現在では9割を超え、意識していなくても実はイモビライザー装着車に乗っている場合が少なくないと思います。最近は、イモビライザーよりも、キーを使わないスマートキーシステムの方が、セキュリティ対策とともに利便性も高いので普及しています。

バイクでも、2010年頃からイモビライザーキーが普及し始めました。イモビライザーだけの成果ではありませんが、2017年のバイクの盗難件数は2008年に比べて約1/4に減少しています。

●セキュリティアラーム

イモビライザーキーシステムは、不審者に勝手にエンジンを始動させない装置ですが、万一バイクごと盗難されたり、その場で部品を解体されたりしたときには、防ぎようがありません。

そのような場合に対応できるのが、セキュリティアラーム(イモビアラーム)です。セキュリティアラームは、バイクの振動や揺れを感知して、周囲に大音量(100dB以上)の警報を鳴らすシステムです。ライダーや周囲に、被害に遭っていることを知らせることができるので盗難を未然に防止できます。またアラームだけでなく、バイク本体の制御と連携してエンジンがかからないようにするシステムもあります。


バイクの盗難は昔から大きな問題であり、メーカーは様々な盗難防止システムを用意して対応しています。チェーンやロック機構のような物理的な盗難防止策に対して、イモビライザーキーやセキュリティアラームは、電子制御の盗難防止装置です。両方組み合わせれば、万全かもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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