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■エンジンや足まわりをアップグレード
イギリスのバイクメーカー、トライアンフ・モーターサイクルといえば、1900年代初頭から2輪車の生産を行っている老舗中の老舗。なかでも新型が登場した「スピードツイン」は、なんと80年以上前に発売された伝説の名車から名称を継承した由緒あるモデルです。
クラシカルなスタイルに数々の最新テクノロジーを搭載した、いわゆる「ネオクラシック」と呼ばれるジャンルに属するバイクで、先代は国内で2019年に登場。1200ccエンジンを搭載するビッグバイクながら、扱いやすい出力特性や軽快なハンドリングなどが大きな支持を得ているモデルです。
新型ではエンジンや足まわりなどをアップグレードし、より走りに磨きが掛かったといいます。一体、どんなバイクに仕上がったのか、紹介しましょう。
●伝統のバーチカルツイン
スピードツインは初代が第2次世界大戦直前の1938年に発売されました。後に、トライアンフの伝統的なエンジン形式として今でも受け継がれている、並列2気筒の通称「バーチカルツイン」を搭載したモデルとして登場し、大ヒットを記録。
当時のトライアンフは、1929年の世界恐慌により業績が悪化していましたが、その窮地を救ったバイクとしても知られています。
ちなみに、トライアンフのバーチカルツインは、英語で直立を意味する「vertical(バーチカル)」と2気筒エンジンを意味する「twin(ツイン)」からきています。
バイクには、エンジンを前傾させて車体に搭載するタイプもありますが、古くからトライアンフは、並列2気筒エンジンの左右に並ぶシリンダー部を直立させていることから、そういったネーミングがなされているのです。
●最高出力を3ps増の100psにアップ
そんな名車の名前を冠した先代モデルが国内に登場したのが前述の通り2019年。1200cc・並列2気筒の高出力ながら扱いやすいエンジンと、クラシカルでスタイリッシュなフォルムが大きな特徴です。
新型は、それをベースに、新型の高圧縮ピストンの採用などで最高出力を3ps増の100psにアップしています。また、先代よりもミッドレンジでより多くのパワーを発揮する出力特性とすることで扱いやすさも向上したほか、低排出ガス化も実現し、欧州の排ガス規制「ユーロ5」に対応しています。
マフラーには、ブラシ仕上げが施されたステンレススチール製のメガホンタイプを新たに採用。車体の左右から伸びる2本のマフラーが、ツイン独特の排気サウンドを奏でます。
●ブレーキやサスペンションも強化
足まわりでは、フロントフォークにイタリアのマルゾッキ製43mm径倒立タイプ(カートリッジダンピング付き)を搭載。ツインタイプでスプリングプリロードの調整が可能なリアサスペンションユニット、120mmのリアホイールトラベルなどと相まって、より軽快で快適なハンドリングを実現します。
ブレーキには、フロントにブレンボ製の4ピストンM50ラジアル・モノブロックキャリパーと、同じくブレンボ製の320mm径ツインディスクを搭載。リヤブレーキには、220mm径ディスクを備えたニッシン製2ピストン・フローティングキャリパーを採用します。
また、急制動時にタイヤのロックを防ぐABSも標準装備するなどで、安全かつ確実な制動能力も発揮します。
ほかにも、新型では、高いグリップ力や精度、高速安定性を保証する新しいMetzeler(メッツラー)製Racetec RRタイヤを装備(前120/70-ZR17、後160/60-ZR17)。前後ホイールには、ビンテージ感が高い車体デザインにマッチする12本スポーク形状で、軽量なアルミ製を装着しています。
●ライディングモードもアップデート
新型スピードツインは、最新テクノロジーを投入した装備も充実しています。路面状況や走行条件などに応じ、レイン、ロード、スポーツから選択できるライディングモードは、ライダーの好みに合わせてスロットルレスポンスとトラクションコントロール設定の両方を調整できます。
走行中でもボタンに触れるだけでモード変更が可能なため、走行状況の変化に対しリニアに対応でき、高い安全性や走行時の安心感を確保しています。
新型では、さらに、タンクニーインデント(燃料タンク側面の凹部)が特徴的な容量14Lの燃料タンク、バーエンドミラー、スカルプテッドサイドパネル、スタイリッシュなベンチシートなどを採用。全体的に、クラシカルな雰囲気と現代的なテイストを融合した車体デザインを、よりスタイリッシュにする効果を生んでいます。
ボディカラーは、ジェットブラック、レッドホッパー、マットストームグレーの3色。価格(税込)は168万6000円〜171万2500円で、2021年8月よりトライアンフ正規販売店にて発売予定です。
(文:平塚 直樹)