■独特のスーパーカー
「このクルマはスーパーカーって言うんだよね」と彼女。
低く構えて伸びやかなBMW i8のスタイルはいかにもスーパーカーだ。停止状態から10km/hまでの加速は4.4秒(ロードスターは4.6秒)、公称されている最高速度は速度リミッターが作動する250km/h。速さだって十分にスーパーカーしている。
だけど、i8は普通のスーパーカーとはちょっと違う。独特なのは、小さなエンジンを積んだハイブリッドカーだってこと。
ホンダ「NSX」やフェラーリ「SF90」のようにハイブリッドのスーパーカーは珍しい存在ではなくなってきたけど、i8が特殊なのはエンジンが小さいこと。3気筒でわずか1500ccしかない。スーパーカーにこんな小さなエンジンなんて。
鋭い人は気が付いたかもしれないけれど、これは「1シリーズ」などBMWの小さなモデルや「MINI」と同じパワートレインだ。
キャビンの後ろに積むこのエンジンはターボによるドーピングを受けて、最高出力は231ps・最大トルクは320Nmで後輪を駆動する。ガソリン自然吸気エンジンでいえば、排気量3.0Lくらいの感覚だ。それだけだと“遅くはないけど速くもない”という性能で終わってしまう。
●なかなかの速さ
だけどスーパーカーらしい速さを身に着けているのは、モーターをプラスしているから。モーターは最高出力143ps、そして最大トルク250Nmで前輪を駆動する。ガソリン自然吸気エンジンでいえば2.0Lくらい。
その結果、エンジンとモーターを統合したシステムトータル出力は373ps、最大トルク570Nmで“なかなかの速さ”となる。
大容量バッテリーと大型モーターを搭載したプラグインハイブリッドカーで、JC80モード燃費は15.9km/hとスーパーカーとは思えない数値。そして、最大で約55km(最高速度120km/h)はエンジンを掛けずにモーターだけで走ることもできる。
「どうしてBMWはこんなスーパーカーを作ったの? 素直に大きなエンジンを積めばいいんじゃないの?」
そんな彼女の疑問はもっともだけど、その答えをひとことでいえば「未来への提案」だ。
BMWはドイツのメジャーブランドのなかで、もっとも早く専用ボディの量産EVとプラグインハイブリッドモデルを市場へ送り出した。そのフラッグシップであり、新しいスーパーカーのカタチとして世の中に一石を投じる存在が「i8」なのだ。
「わかるような、わからないような……でも、普通のスーパーカーよりも先進的ってことね」
そうそう、その解釈で大丈夫。(つづく)