■後席もシートベルト着用を。非装着だと前席や車外まで吹き飛ばされる可能性も!?
自動車アセスメント(JNCAP)において、SUBARU「レヴォーグ」が2020年度の衝突安全性能と予防安全性能の総合評価で最高得点を獲得しました。5つ星評価の中で最高得点を得たことで、「自動車安全性能2020ファイブスター大賞」を受賞しています。
プレス向けにオンラインで開催された「SUBARUテックツアー レヴォーグ総合安全性能説明会」では、予防安全性能も含まれる「アイサイト」による追突事故、歩行者事故低減などのデータや、「アイサイトX」の事故低減効果や機能が改めて紹介されています。
同説明会では、レヴォーグの衝突安全性能についても多くの時間が割かれていました。日本では、規制やプライバシー保護などの面もあり、交通事故の詳細なデータ開示や検証は難しいのが現状。ボルボやメルセデス・ベンツのように、自動車メーカーの事故調査隊が駆けつけて事故を直接検証することはできません。
そこでSUBARUは、アメリカのFARS(死亡事故統計)のデータを元に、同社独自の死亡事故件数割合を調査。「アイサイト」などにより前面追突は減少傾向であるのに対して、側面追突による死亡事故の割合が増えていることを突き止めました。
近年、米国での原油安で、ピックアップトラックやSUVなどの大型車が売れていることで、SUBARU車の事故の相手も大型化(重量増)しています。SUBARU車の事故相手車両の重量は、2014年の1801kgに対して、2019年は2004kgと200kgも増えています。
そのため、レヴォーグでは、側突時に相手車両を受け止めるセンターピラーに1.5GPa級の超高張力鋼板を採用し、ホットプレス一体成形にすることなどで、キャビンの耐衝突エネルギーは、先代から75%も向上。
今回、新型レヴォーグの64km/hオフセットテストの動画も公開され、フロントフードは衝撃を受け止めて大きく破損していますが、キャビンはドアが簡単に開くほどしっかりと守られています。
また、以前お伝えしたように、日本市場では、SUBARU車の事故件数は着実に減っています。
事故では歩行者と自転車が相手になる事故の比率が高く、歩行者事故では頭部を受傷することが最も多くなっています。エンジンフード(ボンネット)は、歩行者頭部保護基準もあって衝撃を吸収できますが、Aピラー(周辺)は強度が必要のため、ピラー付近に頭が当たると重大な受傷につながる可能性が高くなります。
歩行者頭部の傷害発生時の加害部分はピラー付近が最も高く、フロントガラスとカウルが続いています。そこで、SUBARUは2代目レヴォーグにも歩行者エアバッグを搭載し、歩行者の頭部保護を図っています。重大な傷害につながるピラー、フロントガラスまわりをエアバッグでカバーすることで、画期的に安全性を向上。
乗員保護では、運転席ニーエアバッグ、助手席シートクッションエアバッグ(座面下に配置)の採用をはじめ、ベルトの余長を巻き取って加害性を軽減するプリテンショナー&フォースリミッター付シートベルト(前後4席。後席中央をのぞく)、シートベルトのロッキングタング(上半身と下半身にかかるエネルギーを分離拘束する)などを用意しています。
今回の説明会で強調されたのは、後席シートベルトの着用の重要性です。
日本において後席のシートベルト着用率は高速道路で約75.8%まで年々高まっている一方で、一般道では40.3%(2020年のデータ)と依然として低いまま。ダミーを使った同社のテストでは、シートベルトを着用していない後席乗員が前面衝突時に、衝撃で前方(フロントシート)まで吹き飛ばれています。
ルーフ(天井)に一度当たり、インパネに頭からぶつかっていることから死亡などの重大な受傷になる可能性が高そうです。
SUBARUは初代レヴォーグに、世界初となる警告音付のシートベルトリマインダーを採用し、ユーザーアンケートでは、このベルト警告によって後席でもシートベルトを着用する人が増えたと紹介しています。表示警告(インジケーター)のみだと後席シートベルト着用率は25%でしたが、レヴォーグの警告音付のシートベルトリマインダーを採用したところ、70%まで高まったそう。
同社に限らず、衝突安全性能を正しく発揮させるには、シートベルトの着用が不可欠になっていますので、一般道でも、あるいはタクシーやバスなどに乗った際もきちんと締めることが大切です。
(文:塚田 勝弘/ダミーモデル:Humanetics)