■ベッカム自らがハンドルを握ってドーナツターン
あまりサッカーに詳しくない読者のかたに、まず伝えておきたい! デビッド・ベッカムは十分なリスペクトに値する元サッカー選手です。スパイスガールズのひとりと結婚した、ただのチャラいイケメンではありません。
日本でも2002年の日韓ワールドカップのときに有名になりましたが、じつは本当に超絶カッコよかったのはその4年前、フランスW杯の頃ですかね。サラサラの金髪でまさに美青年という感じでした。ただそのときは、アルゼンチンとの大接戦の最中に、ディエゴ・シメオネ(現アトレティコ・デ・マドリード監督)の悪辣なバックチャージに憤慨して、わずかに報復してしまったことでレッドカードを食らい、退場。チームは試合に敗れて、イングランドでは「10人のライオンと1人の愚か者(ベッカムのこと)」とまで言われてバッシングを受けました。
しかしベッカムはそのあともイングランド代表のキャプテンを2000年から2006年まで務め、FIFA最優秀選手賞でも2回ほど2位に入るなど堂々たる実績を持っています。ジダンやクリスティアーノ・ロナウド、メッシほどの選手ではありませんが、超一流の選手だったことは間違いありません。というわけで、まずデビッド・ベッカムのすごさを理解してください。
1990年代はレオナルド・ディカプリオに引けを取らない美男子だったベッカムも、いまではすっかり『ちょい不良(ワル)オヤジ』という雰囲気になりましたね。そんなベッカムは2021年、マセラティのグローバル・アンバサダーに就任したそうですが、今回ご紹介するのは、そのベッカムが出演するマセラティ・レヴァンテのCM動画です。ちなみにレヴァンテというのはスペイン語で東風のこと。マセラティは車名に風の名前をつけるそうですね。
ベッカムといえば、キックの精度の高さがウリの選手でした。ベッカムが放つクロスボールは常に危険だったし、直接フリーキックの威力はバツグンでした。時間稼ぎで倒れている相手選手めがけて遠くからボールを蹴ってコツンと当てて退場になったりというエピソードもあったし、ランニング中に道端に落ちていた紙袋のゴミを、道の反対側のゴミ箱に蹴り入れるなんていうCMもありましたが、今回の動画ではベッカムはなにも蹴りません。
場所はマイアミ。ベッカムのスマートフォンから今日のベッカムのスケジュールが伝えられます。「7:00体幹トレーニング、8:00朝食ミーティング、8:30パートナー電話会議……」という具合に超多忙です。その合い間をぬってベッカムは……。
これね、ボクはちょっと考えさせられちゃいますね。「真似しないでください」って書いてあるけど、まぁ、あまりやっちゃいけないとされていることですよね。私有地で許可を得ていて、騒音とかの面で周辺に迷惑をかけないのであればやっても問題ないわけですが、CMの設定の中ではそうではないでしょう。ベッカムが、多忙な日常の中で、ちょっとした気晴らしにマセラティ・レヴァンテでドーナツターンをやっているわけですよね。
でもね、わかるんですよ。ルールとかマナーとか規律とか倫理とかの面では、こういうことはやっちゃいけない。でも、人間ってこういうことやりたくなるんですよね。そういう点で、欧米人って意外と人間的な感情や衝動を重視している面もあって、自動車って社会インフラとか単なる道具的な面だけじゃなくて、人間的、感情的、衝動的な面もあるということをよくわかっていてこういう動画を作ったりする。この1年以上にわたるコロナ禍で、人間らしくあることって、我慢や規律といった『健全』一辺倒ではないと実感されたかたも多いんじゃないでしょうか。
ちなみにこのドーナツターン、スタントドライバーだけじゃなくて実際にベッカム自身もやっているようです。そういうメイキング動画も公開されています。
いい笑顔ですね。素晴らしい技術を持ったアスリートだったけれど、人間味あふれるエピソードも多いデビッド・ベッカムだから、マセラティのアンバサダーにぴったりなのかもしれません。
(まめ蔵)