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■天然ゴムはゴムの木の樹液を加工、合成ゴムは石油精製によって生成
●高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が必要なため、内部は樹脂やスチールで補強
ゴムは、エンジンや車体部品のシール性の確保、緩衝や電気や熱の絶縁のために多くのバイク部品に使われています。なかでもタイヤのゴムは、バイクの快適性や安全性、性能を足元から支える重要な役割を担っています。
ゴム製品の代表格であるタイヤに使われるゴム材料について、解説していきます
●タイヤゴムの役割
タイヤは、クルマの性能や安全、快適性を足元から支える重要な部品です。
その役割は、クルマの荷重を支える「荷重支持機能」、スムーズに走り確実に止まる「駆動・制動機能」、方向を転換維持する「進路保持機能」、快適な乗り心地「緩衝機能」の4つです。そのため、タイヤを構成するゴムには、耐熱性とともに高い強度と衝撃を吸収する柔軟性が必要です。
バイク用タイヤの基本的な構造はクルマ用と同じですが、明確な違いは路面と接触する部分の断面形状がバイクは円形、クルマはフラットなことです。
両者の違いは、旋回方法の違いに起因します。クルマがステアリングを切って前輪タイヤの向きを変えて曲がるのに対し、バイクは旋回方向に車体を傾けて旋回します。バイクは、車体を傾けた方向に意識しなくても自然にステアリングが切れて旋回する「セルフステアリング」機能を利用するからです。
●タイヤゴムの製造方法
ゴムは、プラスチックと同じ炭素系の高分子で、原料は「天然ゴム」と「合成ゴム」を混合したものです。
・天然ゴム
天然ゴムはゴムの木の樹液を加工したもので、発見当時の生ゴムは低温時には硬く、温度が上がるとネバネバ状態になるので用途は限られていました。19世紀に入り、米国のグッドイヤーが生ゴムに硫黄を30~40%混入して加熱することで、「ゴム弾性」(小さい力で変形し、力を除くとすぐに元に戻る)を発見して、ゴムの用途が飛躍的に向上しました。
・合成ゴム
合成ゴムの原料は、合成樹脂と同様、石油精製で生成するナフサです。エチレンプラントでナフサを熱分解して合成樹脂と同様、さまざまな分子構造の合成ゴムを重合します。
これに、用途に応じてゴムの補強剤としてカーボンやシリカ、特性を調整する配合剤として加硫剤や柔軟剤などが調合されます。
●タイヤの外部構造
タイヤには、中にチューブの入ったチューブタイヤとチューブレスタイヤがあり、また内部の補強方法としてラジアル構造とバイアス構造があります。クルマではラジアルタイヤが主流ですが、バイクは比較的安価なバイアスタイヤが主流です。ただし、高速耐久性が要求されるスポーツバイクには、ラジアルタイヤが採用されます。
外部の構造は、トレッド部、ショルダー部、サイドウォール部、ビード部に大別されます。
・トレッド部
路面と直接接触する部分で、いろいろなトレッドパターンが刻まれており、グリップ力を確保してスリップを防止する、路面の水を排水するといった重要な機能を持っています。
・ショルダー部
トレッド部とサイドウォール部を繋ぐ「肩」の部分です。路面との摩擦やタイヤ変形で発生するトレッド部の発熱や内部の熱を発散します。タイヤを傾けて旋回するバイクには、ショルダー部に高い強度が必要とされます。
・サイドウォール部
路上からの衝撃を受けてたわむ部分で、スムーズに伸縮を繰り返すことによって衝撃を吸収します。
●タイヤの内部構造
ゴムだけでなく、内部には樹脂繊維で形成されたカーカスとスチールベルトが埋め込まれています。
・カーカス
タイヤの骨格を形成するコード層で、材料としてはポリエステルやナイロン、レーヨンなどのコードにゴムを浸み込ませて成形して数枚重ねています。
・スチールベルト
ラジアル構造のトレッドとカーカスの円周方向に張られたスチールの補強紐です。
・ビード
ホイールにはめ込む部分で、高炭素鋼で強化されています。
タイヤには、強度や柔軟性、耐摩耗性、耐候性など多くの特性が求められます。そのため、天然ゴムと合成ゴムだけでなく、その用途や目的によってさまざまな補強剤や配合剤が調合されています。
(Mr.ソラン)