スクランブル交差点以外は歩行者用信号全青でも斜め横断禁止!自転車はどう走る?歩車分離式信号機の正しい通行ルール

■クルマと歩行者を別々に交差点に進入させ、事故を未然に防ぐ目的はあるが、ルールの定着は今一つ

歩車分離式信号機歩行者

交通量の多い都市部の交差点や、歩行者の多い駅周辺や住宅地に多く設置されるようになったのが、歩車分離式信号機です。

同一進行方向でクルマと歩行者が同時に青になっていた信号機とは異なり、クルマはクルマ、歩行者は歩行者だけに限定して、交差点への進入を許可します。横断歩道を横断中の事故が少なくなり、クルマも横断する歩行者を待つことなく、右左折を行うことができるため、スムーズな交通に一役買っている信号機です。

 

しかし、クルマ、自転車、歩行者が、歩車分離式信号機をどう使うのか、そのルールが浸透しきっていない現実もあります。今回は、近年増えている歩車分離式信号機にスポットを当てて、正しいルールを紹介していきます。

●歩車分離式信号機とはどんなものか

十字路の交差点で信号機は、2種類の動きをするのが一般的です。Aの道路とBの道路が交差する場所では、次のように切り替わるのが通常でしょう。

<一般的な信号機>
1. Aの自動車用と歩行者用信号が青になる(Bの道路は自動車、歩行者ともに赤信号)
2. Aの歩行者用信号が点滅後赤へ、自動車用信号機も赤へ変わる
3. Bの自動車用と歩行者用信号が青になる(Aの道路は自動車、歩行者ともに赤信号)
4. Bの歩行者用信号が点滅後赤へ、自動車用信号機も赤へ変わる

この1~4を繰り返すのが、一般的な信号機です。この十字路交差点に歩車分離式信号機が導入されると、どういう切り替わりになるのか見ていきましょう。

<歩車分離式の信号機>
1. Aの自動車用信号が青になる(歩行者用ABとBの自動車用は赤信号)
2. Aの自動車用信号が赤に変わる。Bの自動車用信号が青になる(歩行者用ABは続けて赤信号)
3. Bの自動車用信号が赤に変わる。歩行者用信号がABともに青になる
4. ABの歩行者用信号が赤に変わる。Aの自動車用信号が青になる

歩車分離式信号機
最近増えてきた歩車分離式信号機。意外とルールをわかっていない方も多いのではないでしょうか。(写真はイメージです)

歩車分離式信号機では、このような切り替わり方をしていきます。動きが3種類に変わったのが、理解いただけたでしょうか。

これまでの一般的な信号機では、クルマが右折・左折と歩行者の横断が同時に行う必要があったため、クルマと歩行者の接触事故が起こる可能性がありました。歩車分離式にすることで、歩行者とクルマが同時に道路へ侵入することはないため、人とクルマの接触事故は少なくなったといいます。

また、クルマの右左折時に歩行者の横断を待つ時間が無くなったため、クルマの往来もスムーズになっているようです。赤信号での待ち時間は増えますが、特に歩行者の往来が多い交差点では、従来型の信号機よりも交通はスムーズになっていることもあるようです。

●歩車分離式信号機、自転車はどうする?

クリッカー読者の方は、すでに承知の事実だと思いますが、改めて説明します。自転車は道路交通法上では軽車両に該当し、立派なクルマです。

したがって今回取り上げている歩車分離式信号機でも、自転車は「クルマの信号機に従う」のが正解となります。

自転車
自転車はあくまで「車両」です。クルマのルールに従うのが原則となります。(写真はイメージです)

しかし、原則上は車道の左端を走行し、クルマ用信号機に従う自転車が、歩行者用信号に従うケースもあります。それは、自転車通行が可能とされる歩道を、自転車が走行しているケースです。この場合、歩道を走行している自転車が従うべきなのは、歩行者用信号となります。

自転車を利用する方は、自分が車道と歩道のどちらを走っているのかによって、従う信号を使い分けなければなりません。

筆者が街中で見かける光景として、車道を走っていた自転車が歩車分離式信号機にさしかかり、赤で停車すると、歩行者用信号が青になったのを見て、進行するケースがあります。

また、青の自動車用信号で、車道を通過する自転車に対し、クルマのドライバーがクラクションを鳴らし、「赤信号だろ!」と窓を開けて自転車に怒鳴っている姿も見かけます。

どちらも正規のルールを理解しておらず、危険な交通トラブルに発展しかねません。警察など関係各省には、歩車分離式信号機の正しい使い方を周知徹底し、円滑で安全な交通を実現したいものですね。

●歩行者の斜め横断はOK?

一般に歩車分離式信号機の場合、十字路交差点に隣接する歩行者信号すべてが青になります。歩車分離式信号のうち、横断歩道が対角線上斜めに渡れるように表示されている交差点をスクランブル式、そうでない直角方向のみの横断歩道が表示されているのを歩行者専用現示式と言います。スクランブル交差点は、東京・渋谷駅前のものが有名ですね。

スクランブル交差点
対角線上に横断歩道があるのが、スクランブル交差点。これ以外では斜め横断はできません。(写真はイメージです)

歩車分離式信号機の歩行者用が青になったとき、歩行者が交差点を斜めに横断していいのは、スクランブル式だけです。

なぜ、歩行者専用現示式では斜め横断を認めていないかというと、青信号表示の長さに違いがあるからです。スクランブル交差点の場合、交差点を斜めに横断することを見越して、青信号の時間を長めに設定しています。しかし、歩行者専用現示式の信号機では対角線でなく、1辺の距離を渡れる時間しか、青信号の時間を作っていないのです。

つまり、歩行者用信号現示式の場合、対角線上に進行したい場合でも、横断歩道を1本ずつ、合計2本横断するようになっており、青信号1回分で2本の横断歩道を渡り切れない場合は、1本を横断して次の青信号になるまで待つというのが、正しいルールです。

斜め横断を前提に、青信号の時間を決めていない信号機では、時間内に渡り切れないこともあるため、斜め横断は絶対にしないようにしてください。斜めに横断できるのは、スクランブル交差点だけです。

駅の建設や住宅時の発展などにより、いつも使っている信号機の仕組みが変わってしまうことはよくあることです。交通をスムーズに行うための信号機には、それぞれに守らなければならないルールがあることを、心にとめておきましょう。

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【追記:2021年5月18日】
※今回説明している歩車分離式信号が設置された交差点には、自転車横断帯や、歩行者自転車専用信号がない場合を想定しています。交差点に、自転車横断帯や歩行者自転車専用信号がある場合は、上記の通行方法と異なる場合があるので、ご注意ください。
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(文:佐々木 亘

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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