始まりはアメリカ陸軍!? 今人気の「SUV」ってどんなジャンルなのか改めておさらい

■SUVの起源は、第二次世界大戦時のアメリカ陸軍にあり!

SUVは現代の自動車市場で世界的に人気のジャンルです。そのため「流行りのSUV」などと、何気なくSUVという言葉を目にすることが多いはず。

ではこのSUVとはそもそも何なのでしょうか? SUVはなぜ世界的なトレンドとなったのでしょうか? 今一度、SUVについて振り返ってみましょう。

●SUVはボディタイプの種類の1つ

トヨタRAV4
トヨタRAV4

簡単に言えば、SUVとはボディタイプの種類の1つです。他に自動車のボディタイプというとベーシックなセダンや、スポーツカーに多いクーペやオープン、多くの荷物や人を乗せることができるバンなどがあります。

では、SUVという名前にはどんな意味があるのでしょうか? SUVは「Sport Utility Vehicle」の略で「スポーツ多目的車」とも訳されます。

ここで言うスポーツは、スポーツカーのような意味合いではなく、娯楽や楽しみと言った意味合いが強いでしょう。Utilityは実用性や利便性という意味で、Vehicleは車両という意味なので、簡単に言えばSUVは「アウトドアなどの娯楽に使いやすい利便性の高い車両」ということになります。

なお、SUVには明確な定義がありません。ここから先は、SUVと呼ばれる車種に多い特徴を紹介していきます。

●悪路走破性の高さが特徴

三菱 パジェロ
高い悪路走破性を見せる三菱パジェロ

SUVは基本的に「悪路走破性」が高い造りとなっています。悪路走破性とは、アスファルトで舗装されていない道や太い木の枝や大きな石など、障害物のある凸凹した路面を走破する能力のことを言います。

それが表れている分かりやすい見た目の特徴は、最低地上高が高いことです。最低地上高とは地面から車両の一番下部までの高さのことで、この高さがある程度高いと、この凸凹した障害物や起伏の激しい悪路でも、走破しやすくなります。

そのほかの特徴としては、車両の全高が高い(背が高い)ことや荷室空間(トランク)が広いなどが挙げられます。

●SUVの起源はジープ

ウィリスジープ
1940年代に販売されていたウィルスジープ

セダンやクーペなど、昔からあるボディタイプの起源は馬車にありますが、SUVは馬車時代から由来するボディタイプではありません。SUVの起源は第二次世界大戦時のアメリカにあると言われています。その起源を振り返るのにジープの存在は欠かせません。

1940年にアメリカ陸軍は自動車メーカーに対し、偵察や連絡に用いるための小型で悪路走破性と機動性に優れた「軽量偵察車」の受注入札を要請。この要請に対しアメリカン・バンタム、ウィリス・オーバーランド、フォードの3社による共同生産で1941年に誕生したのが、後にジープと呼ばれるようになる小型四輪駆動車です。

今日でこそジープという名前は広く知られていますが、ジープという名称は当初軍内におけるニックネームのようなものだったそうです。そのジープをウィリス・オーバーランド社が商標登録し、今日のジープブランドまで発展していきます。

戦後に民間でも販売されたジープは、当初簡素な装備だけでした。しかし時代が進むにつれて快適な装備やメカニズム、パワフルなエンジンなどを採用し、その利便性を高めていきます。

少しジープの歴史に触れる形となりましたが、このジープの誕生こそが本格的に悪路を走れる自動車の誕生とされていて、その後のSUVにまで発展していきます。

●仕事グルマからレジャー用途へ

三菱ジープ
三菱がライセンス生産していたジープ

ジープは民間で販売され始めた当初、農業用途での使用が多かったのですが、次第にレジャー用途でのニーズも目立つようになります。

時を同じくして日本でもジープのライセンス生産が開始されたり、ヨーロッパではイギリス陸軍で採用されるランドローバーが民間で販売されたりと、高い悪路走破性を持つ自動車の需要が高まります。民間でも販売されることにより、より快適な装備や高級感のある内装を採用するように進化していきます。

なお、このころはSUVという表現は使わずに、クロスカントリー車(クロカン)やRV(レクレーションビークルの略)と呼ばれていました。現代のように街乗りメインで乗る人はあまり存在せず、山に釣りやキャンプに行ったり、ウィンタースポーツへ行ったりとアウトドアを楽しむ人が乗っている場合がほとんどでした。

●今のSUVの流行の起源はトヨタハリアーにアリ!

トヨタ ハリアー(初代)
トヨタ ハリアー(初代)

SUVという言葉が明確に登場した時期などは不明ですが、現代のように街乗りメインでSUVを乗るようになってから、その言葉は定着していきました。街乗りでSUVを乗るようになったのは1997年に登場したトヨタ・ハリアーがきっかけです。

「高級乗用車の基本性能にスポーツユーテリティの機動性・機能性を融合」とトヨタが表現したハリアーは、RVやクロカンモデルのように最低地上高や全高が高く作られ、広い荷室空間を持っていました。

しかしながら、どこか泥臭い道具感のあるRVやクロカンモデルの見た目と異なり、ハリアーは都会に溶け込むスタイリッシュなデザインを身にまとっていました。

それに加えて高級乗用車のような舗装路での乗り心地を実現していたハリアーは「高級クロスオーバーSUV」というジャンルを確立します。このハリアーは海外市場では「レクサスRX」として販売され、アメリカ市場を中心に大ヒットとなります。

RXのヒットを受け、舗装路での乗り心地と高級感を持つSUVは売れるということが自動車メーカーの共通認識となり、様々なメーカーがこの新しいジャンルに参入するようになります。これが現代のSUVトレンドへと繋がっていったのです。

●次なるトレンドもSUVから生まれるかも?

日産 アリア
日産 アリア

現代では一口にSUVと言っても、本格クロカンモデルからサーキット走行を主眼に置いたものまで、そのバリエーションは多岐に渡ります。それは、軍用由来のながら時代に合わせて進化してきた独自のボディタイプだからとも言えるでしょう。

今、自動車は自動運転や電動化など大きな変革期を迎えているとも言われていますが、次の自動車の新たなトレンドもSUVから生まれてくるかもしれません。

(文:西川 昇吾)