アルミ合金とは?軽量化を牽引するバイク材料の主役【バイク用語辞典:材料編】

■バイク材料の質量比率30~40%を占め、スポーツタイプほど使用比率が高い

●高い剛性が求められるフレームではコストが高くてもアルミ合金を使うのが一般的

バイクは、軽量化のために強度を高めたアルミ合金への材料置換が進んでいます。バイク性能を決定付けるフレーム、エンジンのシリンダーブロックやシリンダーヘッドなど大物部品のほとんどはアルミ合金が使われます。

スチールに代わってバイク骨格の主役となっているアルミ合金について、解説していきます。

●アルミとは

アルミニウムは「軽金属」を代表する金属で、バイクでは最も使用比率が高く、軽量化を牽引する材料としてプラスチックとともに様々な部位へ採用されています。軽金属とは、比重が4.0より軽い金属の総称で、リチウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などから成っています。

軽量化素材の強度とコスト
軽量化素材の強度とコスト

軽いアルミですが、純金属のアルミの強度はそれほど高くありません。そのため、アルミにシリコンやマグネシウムなどを添加して強度を向上させた「アルミ合金」として使用します。通常、アルミ製品と呼ばれるもののほとんどはアルミ合金です。

スチールと比べたアルミ合金の代表的な特性は、

・軽量:比重はスチールの1/3

・熱が伝わりやすい:熱伝導率が3倍

・たわみやすい:縦弾性係数が1/3倍

・加工性と耐食性に優れる

一方で、強度自体はスチールに劣り、傷つきやすいという欠点があります。軽い分比強度(質量あたりの強度)でみれば、スチールと同等以上です。

●アルミ合金フレーム

バイクのフレームは、そのバイクの基本特性を決定付ける人間で言えば骨格であり、強度と剛性とともに軽量化が求められます。フレームの材質は、一般的にはアルミ合金かスチールで、形状はパイプ状やプレス成形されたものが一般的です。アルミ合金が主流ですが、最近は強度の高い高張力(ハイテン)鋼管なども使われます。

アルミ合金は、軽い分同じ質量にすればスチールより剛性を高くできるので、スペースに余裕があって高い剛性が求められるバイクにはアルミフレームが採用され、剛性がそれほど必要でない場合は安価なスチールフレームが使われるケースが多いようです。

●アルミ使用部品と製造方法

フレームだけでなく、多くの部品にアルミ合金が使われ、バイクの軽量化に大きく貢献しています。

クランクシャフトやカムシャフトなどを除いたシリンダーヘッドやブロック、クランクケースなど、ほとんどのエンジン大物部品やトランスミッションケースがアルミ合金製です。また、車体部品ではフレームの他にも、スイングアーム、ホイールなどに使われ、特にスポーツタイプのバイクではアルミの使用比率が高い傾向にあります。

アルミ合金部品の代表的な製造方法としては、以下の3つがあります。

鋳造と鍛造
鋳造と鍛造

・鋳造:鋳型にアルミ合金を溶かし込んで冷却して形成する手法
複雑な形状を作り出すことができ、デザインの自由度が高いのが特徴。シリンダーヘッドやブロック、ピストンなどのエンジン部品、トランスミッションケース、クラッチカバー、キャストホイールなどの製作に適用されます。

・鍛造:アルミ合金を金型やプレス機で圧縮、成形する手法
圧縮によって金属密度を高め、肉薄ながら強度が確保できるのが特徴。ホイールや一部エンジンのピストンなどの製作に適用されます。

・削り出し:工作機械でアルミ合金の塊を彫刻のように形作る手法
曲げや溶接では実現できない仕上がりの良さと美しさが特徴。トップブリッジ、ハブ、キャリパーサポートなどの製作に使われます。


現在バイクの材料の主役はアルミ合金です。比重が小さいので軽量化の本命材料として、エンジンと車体の大物重量部品は、すべてアルミ合金で構成されています。しかし、マグネシウムやチタン、CFRP(炭素繊維プラスチック)などを適材適所で使用するモデルも多く、アルミ合金がいつまでも主役であり続けるという保証はありません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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