目次
■カタカタやジャージャー、カラカラなど音の違いによって、おおよそ発生源の特定が可能
●異音は劣化や不具合の前兆なので早めの処置が必要
エンジンは動力源なので、内部には多くの摺動部品があり、走行距離とともに摩耗や劣化は避けられません。その結果、動弁系やクラッチ関連部品のガタ、チェーンの伸びなどに起因する異音が発生します。
エンジンの劣化具合や不具合の発生を教えてくれる異音の症状と原因について、解説していきます。
●エンジンの異音とは
バイクが発生する騒音の中で最も大きいのは、エンジン騒音です。正常な状態でも、ライダーには燃焼音や排気音、メカノイズ、タイヤノイズが聞こえてきます。異音とは、これらの通常の騒音とは異なる騒音を指します。
エンジン各部の構成部品、特に摺動部品は、走行距離とともに摩耗によって劣化します。特にエンジンオイルの交換を適正に行わず、潤滑性が低下したオイルを使い続けると、劣化は加速します。
エンジンの異音発生源は、動弁系のバルブクリアランス音、チェーン音、クラッチからの騒音、ノッキングによる異常燃焼音など様々ですが、以下に代表的なエンジン異音の症状と原因について説明します。
●バルブ部クリアランス音:「カタカタ」「カチカチ」といったメカノイズ
バルブを開くときには、バルブステム先端をカム山で直接、あるいはロッカーアームを介して押し下げます。バルブ先端とカム山、ロッカーアームの間にはバルブクリアランスと呼ばれる僅かな隙間を設定します。これは、エンジンが暖まった時にステムやロッカーアームが膨張してクリアランスがなくなってバルブ先端を押し下げてしまうと、バルブが閉じ切らず圧縮漏れが発生するからです。
逆に摩耗などによってクリアランスが大きくなり過ぎると、バルブを押し下げるときに金属同士が衝突する衝撃音のカタカタというクリアランス音が発生します。
●カムチェーン音:「ジャージャー」「シャリシャリ」というチェーン音
ピストンの往復運動に連動してバルブを開閉するため、クランクシャフトとカムシャフトはチェーンかコグ(歯付)ベルトで連結します。
チェーンは、走行距離とともに摩耗によって少しずつ延びます。また、ベルトの張りを調整するテンショナーやチェーンガイドも摩耗によって張りが緩む方向に変化すると、チェーンがブレながら周りジャージャーといった異音が発生します。
●クラッチ断続音:「ガラガラ」「ガラガラ」というクラッチからの異音
ハウジングとフリクションプレートの噛み合い不良やクラッチハウジングギヤの摩耗が進むと、アイドル状態でクラッチを握った時にガラガラという異音が発生することがあります。
常日頃からクラッチの断続を気にしてスムーズに行えば、クラッチ機構は5万km以上もちますが、使い方によっては短期間で摩耗が進み、クラッチハウジングとフリクションプレートの交換が必要になります。
●ノック音:加速時などで「カリカリ」という異常な燃焼音
ノッキングは、火花点火で発生した火炎が到達する前に、燃焼室端部の未燃ガスが自着火する現象です。ノッキングによる激しい燃焼によって燃焼室内に高周波の圧力振動が起こり、カリカリといった特有の高周波音が発生します。
ノッキングは、空燃比が薄い、点火時期が進み過ぎ、吸気の温度が高い場合に発生しやすくなります。ただし、最近の電子制御エンジンでは、ノッキングの発生を抑える制御が採用されているので発生しづらくなっています。
●排気音:マフラーから「バタバタ」「バリバリ」と排気漏れ音
排気系から大きな排気音が出る場合は、マフラーの一部が破損して排気漏れを起こしています。また、金属が擦れるような音は、マフラーの固定部が緩み、何かと接触している可能性があります。
エンジンの異音は、不具合の前兆や寿命の警告と考えられるので、放置して乗り続けると大きなトラブルに発展する可能性があります。早めに整備業者に整備してもらうのが安心です。またエンジンを長持ちさせるには、摺動部品の潤滑を担うエンジンオイルの交換を適切に行う必要があります。
(Mr.ソラン)