■教習所が教えない豆知識! メーターの機能を解説
この春、新生活を機に、新たにクルマを買い求めたひとも多いかと思います。中には特にクルマには詳しくないけど、必要に迫られて春休みのうちに免許を取り、大急ぎでクルマを買ったという方もいるのではないでしょうか。
今回は、そのようなクルマ初心者の方に、運転席に座って最初に目にするメーターパネルの中に見えるメーター=計器について、まめ知識とともに解説していきます。
●各種のメーター、それらが示す意味は?
クルマの計器は、どのクルマを買ってもおおかた以下のものが備えられているといっていいでしょう。ここではガソリン車に備えられる、ごく標準的なものについて解説します。
クルマによってメーター有無があることをご承知おきください。
1. 速度計(スピードメーター)
メーターの中の主役です。回転計(タコメーター)のないクルマはあっても、速度計のないクルマは絶対に存在しません。なぜなら、速度計と燃料計の設置は保安基準で定められているからです。
これはいまの走行速度が「km/h」、1時間あたり何キロメートル走る速度という意味の単位で示されます。
昔はトランスミッションからの回転を受けたケーブルを車内メーター裏にひっぱり込み、その回転をギヤで減速させて速度計の針を動かすという構造でしたが、この方法ではクルマが古くなりケーブルやギヤにガタが出始めると、針もグラグラと小刻みに震えてしまうという欠点がありました。
「積算距離計」の項で述べる理由で電気式になり、ケーブルが廃止されたことでこの欠点もなくなりました。メーターコントロールユニットが壊れない限り、いつまで経っても針はスムースに上がり下がりします。
ちなみに、クルマ自体は正確な速度を把握しながらも、車速計は実車速に対して8%ほど甘く表示されます。これは保安基準の中で「公差」として認められているものです。筆者は自分のクルマを使い、ある方法でその差を調べたことがあるのですが、メーター上で「100」を指しているときの本当の車速は92~93km/hほど、メーター表示が108km/hあたりに至って実車速が100km/hとなり、その差が確かに8%であることを実際に確認しました。
2. エンジン回転計(タコメーター)
いまのエンジン回転数が示されます。こちらは特に設置が義務付けられてはいません。目盛りはひと桁数字の「0」「1」「2」「3」…となっていますが、これを1000倍したときの数字が1分間あたりのエンジンの回転数です。
メーター内の「×1000」は「針の示す数字を1000倍してね」の意味。針が「2」を指していれば、現在のエンジン回転数は2000回転ということになります。単位は「RPM」または「rpm」「r/min」。どれも「1分間あたりの回転数」を意味する「revolution per minutes」の略表記で、意味するものは同じです。
昔はおおかた走りのホットモデルに限ってつけられていましたが、いまではハイブリッド車などを除けば、よほどの安い車種でもない限りは搭載されています。熱い走りを好むユーザーのみならず、経済運転の目安にするのにも使えるので、ないよりはあったほうがいいでしょう。
3. 燃料計
エンジンスイッチがONのとき、現在のおおよその燃料残量を示します。「F」が「FULL(満量)」で、「E」が「EMPTY(空)」。クルマの挙動(急加速、急減速、カーブを高めのスピードで走るなど)でタンク内の燃料が揺れるたびにセンサーが働き、メーター指示が増減するとかえってわかりにくくなるので、意図的に鈍感に造られています。
針で示す「指針式(ししんしき)」、ドットの数で表す液晶ドット式と、クルマによって様々です。
筆者の観察ですが、1980年前後から2010年あたりまでは、エンジンスイッチのON・OFFにかかわらず残量を示す「置針式(おきばりしき)」が主流でした。ひと頃のガソリン価格高騰に伴い、車両からのガソリン盗難が起きたことから、80年以前のキーONの間だけ作動する方式に戻りました。
給油機マークの右側にある三角マークは、車両の左右、どちらに給油口があるかを示しています。このクルマの場合は車体の右側面に、左にマークがある場合は左サイドにあります。この給油機マークは大昔の給油機の形を模したものでいまは見かけなくなり、三角マークにしても意味を知らない、または見落としているひともいるそうなので、憶えておきましょう。
3. 水温計
現在のエンジン冷却液の温度を示します。「C」が「COOL(低温)」で、「H」が「HOT(高温)」。この写真は液晶ドット式ですが、指針式の他、冷却液の低温の「青」または「緑」、適温の消灯、高温の「赤」で示すランプ式もあります。
エンジンをかけると内部で冷却液が循環し、時間の経過とともに液の温度も上がっていくわけですが、適温になるまでの時間は、暑い時期は早く、寒い時期は遅くなります。ガソリンエンジンの場合、適温は85度から100度のちょい手前までで、その範囲外なら上はオーバーヒート、下はオーバークールとなります(いずれも俗称)。
一般に、指針式ないしドット式は、表示が中央付近で安定しているときが適温で、冬ならヒーターがよく効く位置ですが(適温になった冷却液を熱源にしているため)、ランプ式の場合、低温ランプが消えたところですぐにヒーターを入れても風はまだ冷たいままです。
これはエンジンの暖機が終わる温度になったというだけで、消灯直後の液温はまだ「上昇中」にあり、必ずしも人間にとって快適な温度の風が出る段階ではないからです。指針式でいえば、少し針が上がり始めた段階に過ぎません。ヒーターONのタイミングを図るのにも使えるという意味からも、水温表示は、途中の様子がわかる指針式またはドット式のほうが便利でしょうか…燃料計と同様、液温の上昇下降に対して過敏に反応しないように造られてはいるのですが。
4. 積算距離計(オドメーター)
そのクルマが造られてから現在までに走った距離を示します。
したがって、次項の区間距離計と異なり、ユーザーが任意でリセットすることはできません。昔は数字が記された円筒が回転するドラム式でしたが、悪質中古車業者が、実際の走行距離よりも少なくしていくらかでもクルマを新しく見せるように数字を減らす改ざん行為を阻止するため、電気的に記録して表示する液晶式に変わりました。
昔は5桁、1980年前後のクルマから6桁になり、カタログでは耐久性向上をアピールするクルマもありました。
5. 区間距離計(トリップメーター)
リセットしてからユーザーが走るルート、または期間に走る距離を示します。
多少の例外はありますが、いまのクルマならたいてい「A」「B」の2つが用意され、「A」で知りたいルートまたは走る距離を計測するいっぽう、「B」では給油ごとにリセットして燃費計測するなど、好みの使い方をすることができます。
こちらも昔はドラム式でしたが、積算距離計が液晶になったことで液晶式になりました。昔はこのトリップメーターのないクルマも半数くらいあり、タコメーターや区間距離計のないメーターはシンプルに見え、ちょっと寂しいものでした。
次回は警告ランプについて解説していきましょう。
(文・写真:山口 尚志)