FIM世界耐久選手権とは?8時間または24時間の走行距離を競う耐久レースの頂点【バイク用語辞典:バイクレース編】

■スプリントレースとの違いは、レース中にピットインしてライダーが交替すること

●人気レース「鈴鹿8耐」はFIM世界耐久選手権のひとつ

FIM世界耐久レース(EWC)は、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)が統括する耐久バイクレースの最高峰です。複数人のライダーによって24時間または8時間連続走行して、その走行距離を競うレースです。

スピードと耐久性を競うFIM世界耐久選手権について、解説します。

●FIM世界耐久選手権とは

ロードレースの分類(FIM-EWC)
ロードレースの分類(FIM-EWC)

FIMが主催する世界三大レースは、ロードレース世界選手権(MotoGP)とスーパーバイク選手権(SBK)、FIM世界耐久選手権(EWC)です。この中でFIM世界耐久選手権は、2名以上のライダーが1台の車両に交替で乗り、決められた時間(8時間または24時間)の中でいかに長い距離を走行するかを競います。世界各地(5箇所)のサーキットを転戦し、そのうちの2戦は24時間、3戦は8時間の耐久レースです。その中には、日本で大人気の鈴鹿8耐が含まれます。

スズキ 鈴鹿8時間耐久レースで2年連続2位、3位の大健闘
スズキ 鈴鹿8時間耐久レースで2年連続2位、3位の大健闘

スピードを競うスプリントレースとの違いは、1台のバイクに複数の選手が交替に乗ることであり、そのためレース車両はレース中にピットインし、ライダー交替を行います。状況によっては、燃料の補給やタイヤの交換も行います。

また、もう一つの特徴が「ル・マン式スタート」です。予選タイムの順番にバイクがピット前に並べられ、合図とともにコースの反対側からライダーがマシンに駆け寄ってスタートする方式です。耐久レースのひとつの名物になっています。

●レギュレーション

レギュレーション(技術規則)には、エンジンやトランスミッションの仕様とシャシー仕様、ボディ形状などの車両仕様などが詳細に規定されています。ただし毎年見直しがあるため、それに応じて参戦チームが戦略を立てます。

レギュレーションは、基本的にはSBK(スーパーバイク選手権)と同じです。長年の参戦で築き上げた耐久信頼性の技術を市販一般車両の随所に盛り込んだチューニングを加えています。車体最低重量(燃料タンク含む)は、175kgに規定されています。

エンジンは、2気筒、3気筒、4気筒の4ストロークエンジンで、排気量とボア/ストロークは公認時のサイズを維持しなければいけません。排気量の制限は、以下の通り。

・4気筒エンジンは、排気量600~1200cc

・3気筒エンジンは、排気量750~1000cc

・2気筒エンジンは、排気量850~1200cc

●どんなチームが参戦する?

FIM世界耐久選手権は、同じ世界選手権のMotoGPやSBKほど敷居は高くなく、ワークスに比べてカスタムメーカーやプライベーターの参加が目立ちます。地元レース(日本で言えば鈴鹿8耐)だけに出場するチームが多いのも特徴です。

そんな耐久レースで有名になったのが、「ヨシムラ」です。ホンダのワークスに勝つという歴史的な快挙を成し遂げることで、一躍「YOSHIMURA」の名が世界中に知れ渡りました。メーカーと関わりのないチューニングメーカーにとっては、耐久レースが最高のアピールの場になっています。


40分程度のレースでスピードを競うMotoGPやスーパーバイク選手権と異なり、長時間の走行を強いられるFIM世界耐久選手権は、ライダーの運転テクニックはもちろん、より優れた体力や集中力、精神力が求められます。抜きつ抜かれつの激しいレース展開はありませんが、静かながら時間をかけてライバルを追い込んでいくレース展開が大きな魅力です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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