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■クルマのサブスクリプションは浸透した? クルマの買い方の未来とは
2019年、トヨタが打ち出したクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」は、ユーザーにどのくらい浸透したのでしょうか。
2020年1月にトヨタ車種の追加とレクサスでのサービスがスタートして1年が経過しました。現金払い・ローン・リースに続く、クルマの新しい買い方として提案されたサブスクは、販売現場でどのように受け入れられているのでしょうか。
●KINTOとはどんなサービスなのか
クルマのサブスクリプションと言われてもイメージが沸きづらいものです。KINTOは車両・オプション代金、任意保険料(車両保険含)、メンテナンス・故障修理、車検(5年7年プランのみ)、税金諸費用(自賠責保険、自動車税種別割、自動車税環境性能割、登録手続き費用)といった、クルマにかかる費用が全てコミコミとなっており、毎月定額のKINTO月額利用料を払えば、決まった期間、クルマを利用できる制度です。
クルマの使い方には、一定の制約があります。たとえば、車内でタバコを吸ったり、ペットを乗せたり、クルマをカスタマイズすることはできません。また、走行できる距離は、利用月数×1,500kmと制限されており、超過1kmあたり11円(レクサス車は22円)の支払いが発生します。
契約期間は3年、5年、7年から選択し、トヨタとレクサスの幅広い車種から選ぶことができるので、クルマの色や詳細なオプションについても、個人の好みで選択可能です。クルマに関するお金をすべてまとめて、月々の定額払いにすることにより、車検や税金の不安、保険の不安などを取り除いて、クルマを利用しやすくするサブスクリプションサービスがKINTOです。
●浸透しつつあるサブスク、特別仕様車が勢いを後押し
残価設定ローンとKINTOの大きな違いは、最終的にクルマを所有したいのか、それとも利用するだけなのかという点にあります。
従来の残価設定ローンでは、最終回支払い日を設け、ローンの最後の支払い日(3年ローンなら36回目)に、残価分を一括清算し、クルマをユーザーが購入して所有することが前提となります。こちらは所有を前提にしたクルマの買い方です。
対するKINTOは契約満了後には車両を返却することが前提になっています。期間満了後は、クルマを手放し、クルマ無しの生活を送るか、別のクルマへ利用を切り替える形になるため、クルマにお金を出して買い上げることはできません。つまり利用であり、所有ではないということです。
個人リースなどが増えている首都圏では馴染むサービスになりますが、クルマを長い期間「所有する」ことが当たり前の地方では、少しなじみの薄いクルマの使い方となってしまいます。また、自分好みにクルマをカスタマイズしたいと考えるユーザーにも敬遠されていました。
そこでKINTOでは、個人向けのKINTO ONEで、特別仕様車の取り扱いを始めました。ベースモデルのままではなく、初めからエアロパーツを装着したモデリスタ仕様、GR PARTS仕様、専用チューニングやブレースの追加によりボディ剛性を高め、走行性能をアップさせたKINTO TOURING SELECTIONをラインナップします。
特にSUVやミニバンといった、エアロパーツ装着率の高いクルマを選ぶ際にも、KINTOが利用しやすくなっています。対象車種はアクア、ライズ、ヤリスクロス、C-HR、ハリアー、RAV4、ヴォクシー、プリウス、クラウン、レクサスRX、LXとなっており、今後、ヤリス、ランドクルーザープラド、ヴェルファイア、アルファードへ拡大する模様です。それぞれの車種で、どの特別仕様が選べるかが決まっているので、詳しくはホームページや販売店へご相談ください。
●ディーラーもサブスクの形を模索する
全国の販売店でも、少しずつサブスクリプションサービスの様々な利用の形が見えてきています。愛知県では、愛知トヨタがKINTO EXPRESSというスピード納車サービスを展開しています。車種やグレード、ボディカラーは限定されますが、最短2週間で新車が納車されるというものです。現在はアクアとC-HRの一部モデルで展開されています。
また、販売店独自のサブスクリプションサービスの展開も出てきました。
宮城県の宮城トヨタグループでは、MTGサブスクリプションを展開しています。KINTOよりも対象車種やグレード、ボディカラーを限定し、高い残価率を設定することで月々の支払いを抑えて、ユーザーが利用しやすくしているのが特徴です。「スマホのように車種変更」というキャッチーなフレーズで、サブスクのメリットをユーザーに伝えています。
販売店が展開するものにも、それぞれの色を出しながら浸透ししつつあるサブスクリプションサービスがあります。今後も、クルマのサブスクは広がりを見せていくことでしょう。
メーカーだけでなく、販売会社が積極的にサブスクに取り組むことで、ユーザーがサブスクを知る機会も増えていきます。「トヨタ3年分ください」というフレーズで始まった残価設定ローンも、開始当初は敬遠されていましたが、今や当たり前にあるクルマの買い方の一つです。
サブスクを積極的に使ったほうが良いユーザー像が、より明確になっていくことで、クルマのサブスクは、さらに広がりを見せるのではないでしょうか。
(文・写真:佐々木 亘)