スリーホイーラーとは?トライクとは異なるフロント2輪の3輪バイク【バイク用語辞典:安全技術編】

■スポーティなハンドリングと安定した走行を両立できる3輪バイク

●通常の3輪車は普通4輪免許、LMWの3輪バイクは2輪免許が必要

3輪バイクは、扱いやすく安定した走行ができることから街中でも見かけるようになりました。特にヤマハが採用したLMW(リーディングマルチホイール)は、軽快でスポーティなハンドリングと安定した走行の両立が可能なことから注目されています。

新しいシティコミューターとして普及が始まったスリーホイーラーについて、解説していきます。

●LMW(リーニング・マルチホイール)とは

2020年トリシティ300
2020年トリシティ300

ヤマハは、2014年にLMWを採用した3輪バイク「トリシティ」を発売しました。トリシティは、フロント2輪、リア1輪の3輪スクーターです。LMWは、長いストロークを実現して2輪車に比べて優れた衝撃吸収性を誇り、3輪なのでグリップ力を一気に失い難く安全性も高いという特徴があります。

2019年フラッグシップ「NIKEN(ナイケン)」
ヤマハLMW技術のフラッグシップモデル「NIKEN(ナイケン)」

トリシティは、通常の2輪バイクと同じように車体を傾けて、それに応じた横力(キャンバースラスト)で曲がり、操作性は2輪車と同じ感覚です。3輪車の中でもかつてオート3輪と呼ばれていたフロント1輪、リア2輪の3輪バイクは、車体を傾けることなく曲がります。ハンドルを切ってタイヤに発生するスリップアングル(滑り角)で曲がるので、クルマに近い感覚です。

●LMWの働き

トリシティで採用しているLMWは、クルマで採用しているアッカーマン機構のような仕組みを利用します。アッカーマン機構は、前輪ステアリング機構でハンドルを切った時に、コーナーの内側にあるタイヤの切れ角が大きくなるようにして、左右輪が同心円を描いて旋回をスムーズにする機構です。

LMWでは、左右のタイヤを支えるストラットの上同士をつなぐリンクが2本平行に配置され、リンクの中央を車体に固定。この平行四辺形リンク構造によって、2本のタイヤは平行を保ちながら逆方向に上下に動きます。右のタイヤが下がると左のタイヤが上がり、逆に右のタイヤが上がると左のタイヤが下がる、ちょうど天秤のような動きをします。

旋回時にライダーが車体を傾けて重心を移動すると、ストラットとリンクでできる長方形が傾いて平行四辺形になります。リンクの各節点は、ボールベアリングで結合しているので、ほとんど抵抗なく動きます。

●3輪バイクの分類

3輪バイクのうち、跨る方式のシートやバーハンドル、ドアがないなど、バイクをベースにした3輪車を「トライク」と呼びます。トライクは車両を上から見て3角形で構成され、コーナーを旋回する際車体やタイヤを傾けることなく曲がるといった特徴があります。

LMWを採用しているヤマハの「トリシティ」は3輪車ですが、2輪バイクのように車体を傾けて旋回するのでトライクには属しません。そのために2輪の免許が必要ですが、業務用バイクとして普及しているリア2輪の3輪バイクやハーレーダビッドソン「トライグライドウルトラ」のようなスクータータイプは普通4輪免許で運転できます。


利便性が高く、小回りの利く3輪バイクは、ピザ配達など業務用として普及していますが、最近は軽快でスポーティかつ安定性に優れたスクータータイプの3輪バイクも登場しています。さまざまな路面状況でも安全に快適に走行できるので、シティコミューターとして注目されています。

(Mr、ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる