■サービスキャンペーンというのは本来はリコール制度の中で「不具合の改善措置」を行なうための仕組み
マツダが、MAZDA3やCX-30について、既存モデルを所有しているユーザーを対象に車両の商品性向上を目的とした制御プログラムなどの最新化サービス「MAZDA SPIRIT UPGRADE(マツダ スピリット アップグレード)」を開始することを発表しました。
進化ポイントは、以下の3点。
ひとつ目は、新世代ガソリンエンジン「e-SKYACTIV X(イー・スカイアクティブ エックス)」エンジン搭載車のエンジンとATトランスミッション制御プログラム (2019年11月8日~2020年11月27日生産のe-SKYACTIV X搭載車対象)の改良で、アクセル操作に対する応答性とコントロール性が向上し、高回転まで気持ちよく伸びるドライビングフィールが進化、人馬一体の走りをグレードアップするという内容。
ふたつ目が、クルージング&トラフィック・サポート(CTS)の制御プログラム (2019年4月2日~2020年12月1日生産のCTS装着車対象)の改良で、こちらは作動上限車速を約55km/hから高速域まで引き上げ、高速道路や自動車専用道路の渋滞時等に運転疲労の軽減をサポートするというもの。
三つ目も高速道路での快適性を向上させる内容で、マツダ・レーダー・クルーズコントロール(MRCC)の制御プログラム (2019年3月5日~2020年8月28日生産の全車対象)をアップグレードするというもの。追従走行における加減速制御を、より人間特性に合わせて滑らかにしたというのがポイントです。
そして、このMAZDA3とCX-30を対象とした「MAZDA SPIRIT UPGRADE」について、今回は特別に無償で実施されるといいます。とはいえ、実質的な無料アップグレードの実施方法として「サービスキャンペーン」を利用しているというのは、クルマの制度に詳しい人からすると少々違和感を覚えるかもしれません。
その言葉の響きとは異なり、リコール制度における「サービスキャンペーン」というのは「リコール届出や改善対策届出に該当しないような不具合で、商品性・品質の改善措置を行うこと(国土交通省・リコール課ホームページより引用)」だからです。つまり、サービスキャンペーン本来の意味合いからいえば、今回のパワートレインの制御アップデートをしない状態は、リコールするほどではない不具合ということになってしまうからです。
ですから所有者は「いまのエンジン特性に満足しているからアップグレードしなくていいよ」というわけにはいきません。原則論でいえばサービスキャンペーンというのは車両の不具合解消が目的ですから、必ずアップグレードしなければならないのです。
とはいえ、オーナーは必ず愛車を入庫してサービスキャンペーンを実施することになるはずです。なぜなら「MAZDA SPIRIT UPGRADE」のほかに、MAZDA3とCX-30には本来的な意味でのサービスキャンペーンも出ているからです。
ちなみに、そちらのサービスキャンペーンの改善内容を引用すると以下の通りでかなり細かい改良。いずれにしても、制御プログラムの書き換えとなるので、対象となっているMAZDA3とCX-30のオーナーは、はやめに販売店などでプログラムのアップデートを行なうのが吉といえそうです。
1.車両制御コンピュータにおいて、ランプ消し忘れ防止チャイムの設定が不適切なため、車幅灯や尾灯等の消し忘れを認識しにくいことがあります。また、通信制御プログラムが不適切なため、パワーリアゲートを開ける操作を行うと、省電力モードに移行しないことがあります。そのため、電流が流れ続けてバッテリーが上がるおそれがあります。
2.オートエアコン仕様車の空調制御コンピュータにおいて、制御プログラムが不適切なため、プッシュスタートボタンを押して電源ポジションをオフにした直後、非常点滅灯(ハザードランプ)スイッチをオフにする操作を行うと、省電力モードに移行しないことがあります。そのため、電流が流れ続けてバッテリーが上がるおそれがあります。
3.パワーリアゲート仕様車の車両制御コンピュータにおいて、制御プログラムが不適切なため、用品のバーグラアラームを装着した場合、リアゲートの開閉状態を認識できないことがあります。そのため、リアゲートを開ける操作をすると、バーグラアラームが誤作動するおそれがあります。
4.ボーズサウンドシステム仕様車のオーディオアンプにおいて、制御プログラムが不適切なため、音声信号が乱れることがあります。そのため、スピーカーから雑音が発生し、プッシュスタートボタンを押して電源ポジションをオフにしても鳴り続けるおそれがあります。
(自動車コラムニスト 山本 晋也)