コロナ禍でEVを買いたい人が世界で減少! 日本やアメリカ、中国など6か国でユーザーの6割近くがガソリン車やディーゼル車を検討

■なぜガソリン車やディーゼル車を選ぶ人が増えた?

地球温暖化対策の一環として、世界的に広がっている「クルマの電動化」。

中国やEU、アメリカなど、世界の自動車大国では排ガス規制を強化するなどで、EV(電気自動車)の普及を促進していますし、日本でも2020年12月に政府が「2030年代半ばまでにガソリン車販売禁止」の方針を打ち出すなど、確実に私たちの身近にも波が訪れています。

一方で、やはり世界的に広がっているのが新型コロナウイルス感染症。日本はもちろん、海外の多くの国で感染者や死者が出るという状況が今も続き、世界的に先行き不透明な状態となっています。

そんな中、会計やコンサルティングなどを手掛ける世界的企業「デロイト トーマツ グループ」では、全世界23ヵ国2万4000人以上の消費者への調査を元に、日本やアメリカ、ドイツ、インド、中国、韓国の6か国の消費者意識を考察してまとめた「2021年デロイト グローバル自動車消費者調査」を発表。

そのレポートの中で、コロナ禍の影響により世界各国のユーザーは、EVよりもガソリン車やディーゼル車の方を購入したい人が増えていることなどを明らかにしました。

コロナ禍の影響で、なぜ世界にはガソリン車やディーゼル車の方を選ぶユーザーが増えたのでしょう。その理由などをご紹介します。

コロナ禍でEVを買いたい人が世界で減少
ガソリン車やディーゼル車の人気が再燃?

●アメリカや中国などでは半数以上を占める

今回の調査は、まさに世界でコロナが猛威を振るっている真っ最中、2020年9月から10月にかけて実施されたものです。結果の主なポイントは、まず「次に購入したい車両のパワートレイン」については、各国でガソリン/ディーゼル車など内燃機関を指す「ICE(インターナル・コンバッション・エンジンの略)」を搭載したクルマを購入する意向が上昇。

特にアメリカでは、実に74%ものユーザーがICEを選んでいる一方、EVなど非ICE車を検討しているユーザーの割合はわずか4分の1(26%)で、前年比15%減となっています。この傾向はインドやドイツ、中国などでも同様で、いずれも半数以上のユーザーがICE車を次に購入したいクルマに選んでいます。

コロナ禍でEVを買いたい人が世界で減少
次に購入する車両のパワートレーンタイプの6か国比較(出展:デロイト トーマツ グループ)

また、日本ではHV(ハイブリッド車)やBEV(内燃機関を一切使わない電気自動車)など非ICE車を検討しているユーザーは過半数を占めましたが、その割合は前年より-8ポイント減少の55%。逆にICE車を選ぶ人は前年の37%から45%と増加した結果となりました。

調査ではさらにBEVに関する最大の懸念事項についても調査しており、日本では「充電インフラの欠如」(29%)が最多で、韓国(32%)、インド(26%)も同様となっています。

一方、アメリカとドイツでは「バッテリー走行距離」(28%)が最も多く、中国では「安全上の懸念」(29%)が一番大きな懸念事項になっています。

コロナ禍でEVを買いたい人が世界で減少
日本で調査した、次に購入する車両のパワートレーンタイプ別割合(出展:デロイト トーマツ グループ)

●手頃な価格で実証済みの技術を求める

こういったガソリン車やディーゼル車への購入意向が増えた背景について、調査したデロイト トーマツ グループは「不確実性の高い情勢において、消費者は手頃な価格で実証済みの技術」を求めているためだと考察しています。

これは恐らくコロナ禍の影響によって社会が不安定な状況の現在では、新しく開発された電気自動車よりも、長年培われた技術が採用されているガソリン車やディーゼル車の方が安心感があるということでしょう。

また、価格面で見ても、たとえばホンダが2020年8月に発売した新型BEVの「ホンダe」が、コンパクトカーのサイズながら税込価格451万円〜495万円。

コロナ禍でEVを買いたい人が世界で減少
新型電気自動車のホンダe

同じホンダのコンパクトカーでも、たとえばフィットがガソリン車なら税込価格155万7600円〜218万6800円ですから、今のところBEVはかなり高価なクルマだといえるでしょう。

ホンダ・フィット

その上、日本の場合は充電ステーションなどインフラがまだまだ整っていないこと、アメリカなど土地が広大で移動距離が長い国では、航続距離が依然としてガソリン車やディーゼル車ほど長くないことなども影響していることが伺えます。

調査では、ほかにも全調査ユーザーの約3分の1が次の車両購入を遅らせることを計画していることも判明しました。しかもその割合は、日本では18%と比較的少ないのですが、インド38%、韓国32%、中国29%となり、これら3カ国では今後の「重大な需要下振れリスク」(クルマが売れない危険性)が存在するといいます(6か国中、そのほかの国ではアメリカ17%、ドイツ14%が購入延期を計画)。

コロナ禍の影響は、国によっては電気自動車かガソリン車/ディーゼル車かといった選択より前に、クルマ自体がしばらく売れないことも予想されるなど、なかなか深刻です。

特に今回の調査で懸念が出ている「世界で最もクルマが売れる国」である中国などの需要低下は、世界の自動車関連企業にとって大きな痛手をとなる危険性をはらんでいます。

コロナ禍でEVを買いたい人が世界で減少
EVは充電ステーションなどインフラの整備も課題

いずれにしろ、地球温暖化の問題も「待ったなし」ではありますが、お金を出してクルマを買うのはあくまでユーザー。自動車メーカーの苦難はまだまだ続きそうです。

(文:平塚直樹 *写真は全てイメージです)

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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