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■油圧を制御してポンピングブレーキを行う
●車輪速センサーの信号からタイヤロックを検知してECUでブレーキ圧を制御
急制動時や滑りやすい路面で強いブレーキをかけると、タイヤがロックして車体のコントロールが効かなくなったり、転倒するリスクが発生します。このタイヤロックを回避して適正な制動力によって車両姿勢を安定させるのが、ABS(アンチロックブレーキングシステム)です。
2018年の新型車からバイク(原付1種除く)への搭載が義務化されたABSについて、解説します。
●ABSの必要性
急制動時や滑りやすい路面でのブレーキングでは、タイヤがロックすることがあります。タイヤがロックするとタイヤが回転しないため、バイクはスリップして制動力も操舵性も機能しなくなり、転倒につながり非常に危険です。
一般にタイヤロックを防止するようなブレーキ操作は非常に難しく、ライダーには高い技術が求められます。ABSは、一般のライダーできないようなブレーキ操作をECUによるブレーキ圧の電子制御で行うシステムです。
バイクのABS搭載の義務化は、新型車では2018年10月に始まりました。ただし、原付一種(50cc以下)や一部の競技車は対象外、また原付二種(51~125cc)についてはABSだけでなくCBS(前後輪連動ブレーキシステム:別頁で解説)でもよしとされています。
●ABSの構成
タイヤロックの危険な状態を回避するためには、いったん制動力を緩めてタイヤを回転させ、ロックが解消したらまた制動力を強める、いわゆる「ポンピングブレーキ」をする必要があります。
ABSは、このポンピングブレーキの状態をブレーキ油圧の制御で作り出します。制御のために必要なのは、前後輪に装着された車輪速センサー、センサー情報からタイヤロックの発生有無を判断するECU(エレクトロニックコントロールユニット)、ECUからの制御信号によってブレーキ油圧を制御するABS油圧制御ユニットです。
●電子制御ブレーキ油圧制御
ABS油圧制御ユニットは、車輪速センサーからの信号を受けて、ポンプ駆動モーターとソレノイドバルブのON-OFF制御によって、ブレーキ圧を最適化します。
通常の走行では、車両速度と車輪速度は一対一の関係にあります。
・車両速度に対して車輪速度が小さくなった場合は、タイヤがスリップしてロック状態に近いとECUが判断
・ABS油圧制御ユニットは、ECUからの出力信号を受けてポンプの作動とソレノイドバルブのON-OFF制御によって、ブレーキ圧の保持と減圧を繰り返してタイヤロックを回避
・車輪速度が車両速度に近づいてくると、ロック状態が解消されたとみなしブレーキ圧を増圧
このようにしてABSは、ブレーキ圧の減圧、保持、増圧を繰り返してポンピングブレーキの状態をライダーの代わりに自動で作り出します。
バイクのABSは、作動原理はクルマ用ABSと同じで、新型車は2018年10月から搭載が義務化されました。ちなみに、クルマではABSを進化させたESC(横滑り防止装置)の搭載が、乗用車は2012年、軽自動車は2014年の新型車から義務化されています。
(Mr.ソラン)