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■環境、燃費、楽しさ、今の時代のクルマに求められていることが満載された1台
●外観もマイナーチェンジでスタイリッシュに
2017年に三菱がラインアップに追加したエクリプスクロスは、2020年に大規模マイナーチェンジを行い、PHEVモデルを追加しました。思えば、アウトランダーのPHEVが登場してから8年強が経過しています。三菱は2009年に世界初となる量産EVのアイ・ミーブを市場投入したメーカーで、EVについては深い知見とノウハウを持っているメーカーです。
ここでPHEVについて復習しておきましょう。PHEVというのはP(プラグイン)・H(ハイブリッド)・E(エレクトリック)・V(ビークル)の略語です。普通のハイブリッド(HEV)は、エンジンとモーターを搭載したクルマのことですが、PHEVはこのハイブリッドに充電機能をプラスしたクルマのことです。
つまり、ハイブリッド車のように燃料を入れてエンジンを回しながら走ることもできますし、電気自動車のように充電して走ることもできます。ただし、多くのEVほど大きなバッテリーを積んでいません。エクリプスクロスPHEVの場合、充電のみで走れる距離は57.3km(WLTCモード)です。
エクリプスクロスPHEVの魅力は充電もできるハイブリッドだけではありません。三菱はかつてパリダカールラリーやWRC(世界ラリー選手権)などに参加していた歴史があり、その競技用マシンを開発していく過程で、4輪駆動システムテクノロジーを高度化しました。S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)と名付けられたそのシステムは、電動モデルに採用され、より魅力的なモデルに仕上げられています。
●長距離ドライブに嬉しいACC
その実力を試すため、冬の長野にエクリプスクロスPHEVを走らせました。都内から中央道経由で諏訪ICから白樺湖を目指します。三菱自動車が試乗用に用意した広報車ですのでもちろんノーマル状態ですが、雪道に行くということでタイヤをサマータイヤからスタッドレスタイヤ(ブリヂストン・ブリザックVR2)に変更しています。
高速道路ではACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使って走りましたが、その制御に不満はありませんでした。車線維持の制御は行われないので、タイヤ変更による不満感が生まれないのもいい部分といえます。世の中は自動運転に向かって動いていて、その開発や制御はとても大切な部分ですが、ある程度の部分がドライバーに任されるのもいいことです。
とくに車線維持制御は、タイヤの性能がちょっと変わっただけで大きく影響を受ける部分で、サマータイヤとスタッドレスタイヤでは同じ制御はできません。ACCは渋滞時にも使えるタイプなので、渋滞に巻き込まれやすい休日ドライブの負担を減らすことができます。
●4つのモード、ノーマル、スノー、グラベル(未舗装路)、ターマック(舗装路)
諏訪インターで中央道を下りて一般道で白樺湖を目指します。諏訪インターからどんどん山側へ登っていきますが、なかなか雪は現れません。エクリプスクロスPHEVには走行モードがノーマル、スノー、グラベル(未舗装路)、ターマック(舗装路)と4種類用意されます。
普通に走るならノーマルで十分なのですが、山間部に入ったワインディングではターマックで走ってみました。ターマックでは、ノーズが積極的にインを向いていくようなハンドリングとなり、まるでスポーツハッチバックに乗っているような味わいです。この気持ちよさは、クルマを運転するそのものを楽しめるタイプのものです。
白樺湖に近づくにつれ路肩の雪が増え、やがて路面にも雪が見え隠れしてきます。エクリプスクロスPHEVの性能を確認するため、よりしっかりした圧雪路を求め、姫木平方面にノーズを向けます。登り勾配はかなりきつめで、路肩に設置された看板には登れないクルマはUターンするように促す表示があるほどです。
そこで気付いたのですが、さまざまな走行モードを試しながらここまで移動したため、たまたま走行モードがノーマルだったのです。そういえばアクセルを踏んだときに若干の滑りを感じるなと思っていました。しかし、普通に移動するようなペースで走る分にはノーマルでも十分に走れます。
走行モードをスノーにして走ってみると、安定感がグッとアップします。その感覚はまるで舗装路を走っているような感覚です。雪の上でクルマが少しは滑ったほうが楽しいという人にとって、スノーモードで走ることは物足りなさを助長してしまいますが、ちょっとの滑りも怖いという人にはこれほどたよりになるモードもないでしょう。
こうした技術は、エンジンでも可能なものですが電動にするとはるかに制御がきめ細かくなります。モーターの場合、伝達されるトルクを変化させるスピードはエンジンの10倍以上といわれていますので、その安定性は非常に高くなるのです。なにをどうしているか?という詳しい話はここでは避けますが、4つのタイヤをそれぞれのモードで最適に制御しているのです。それは駆動トルクの掛け方であったり、4輪独立ブレーキであったり、前後左右のトルク差であったりします。
何の制御もなかった時代のクルマで育ち、冬になるとスタッドレスタイヤを履いたクルマで雪道を求めて流浪した筆者は、ちょっとだけでもいいのでタイヤが滑るような状況でクルマを走らせてみたいという衝動にかられます。そんなときは、走行モードを先ほどの「ターマック」にしてあげればちょっと楽しい走りを楽しめます。トラクションコントロールをオフにすればさらに走りはアクティブになりますが、さすがに公道ではこのスイッチはオフにしないほうがいいでしょう。
トラクションコントロールのオフスイッチは、タイヤチェーンを使った際にオフにして使う(そうしないとトラクションコントロールが働いてタイヤが駆動しないことがある)ためのものです。
●冬に強い装備、シートヒーターとステアリングヒーター
さて、ウインターシーズンにおけるエクリプスクロスPHEVの装備についても紹介しましょう。最近、装着率が上がってきている装備のひとつにシートヒーターがあります。多くのクルマのシートヒーターはフロントシートのみに装備されていますが、エクリプスクロスPHEVはリヤシートにも2名分のシートヒーターが装備されます(※後席のシートヒーターは本革オプションを付けたときのみの設定)。
またステアリングヒーターも装備され、ドライバーはシステムを起動して数秒で暖かみを感じることができます。
一般的なエアコンやヒーターは温風が出て車内温度を上げて暖かくなりますが、シートヒーターやステアリングヒーターは直接身体を温めることであっという間に寒さを和らげることができます。さらにシートヒーターやステアリングヒーターは部分的に熱を発生させるため、エアコンを使うよりもずっとエネルギー効率がよく、燃費の向上にも役立ちます。
さらに家庭用電源100Vのコンセントも備えています。容量は1500Wなので、ホットプレートなども使えるレベルとなります。
バッテリーが満タンに充電されていれば一般家庭での一日使用量にあたる10kWが供給できるといいます。電気毛布の消費電力が強で30Whといわれていますので、睡眠時間8時間、家族4人で1枚ずつ使ったとしても1kW程度です。エクリプスクロスPHEVがあれば、ウインターキャンプも快適に楽しめるでしょう。
また、ガソリンが満タンになっていれば、エンジンを駆動することで約1週間分の電力を供給できるということですから、震災時などにはかなり有効となるでしょう。コンセントを使って、簡単に電力を得られるだけでなく、V2H(Vehicle To Home)という機器を利用すれば自宅の電源システムに直接、最大約10日分の電力を供給することもできます。
●充電は100V、200Vの普通充電に加え、急速充電にも対応
エクリプスクロスPHEVは200Vの普通充電、CHAdeMO規格の急速充電に加えて、100Vの普通充電も可能です。200V普通充電ケーブルは付属で、100V普通充電ケーブルはオプション、急速充電は充電器側に装備されているケーブルを使います。
充電時間はバッテリー容量がゼロの場合、200Vで約4.5時間、100Vで約14.5時間、急速充電で約25分(80%充電)となっています。ピュアEVは充電しないと走れませんが、PHEVはガソリンを給油することで走れますし、走行しながら充電することも可能です。一方でピュアEVは充電しないと走れないので、高速道路のサービスエリアなどにある急速充電器はピュアEV優先と考えたほうがいいでしょう。
エクリプスクロスPHEVをはじめとして、EV系モデルを上手に使うには、自宅や通勤先などに200V充電器があることですが、充電する機会がなくてもEVライフを楽しめるのがエクリプスクロスPHEVのいいところ。EVを所有するのに不安感がある人や、充電設備に恵まれてない人で、次のステップを考えている人にもおすすめしたい1台です。
(文:諸星 陽一/写真:小林 和久、井上 誠)
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