■2021年1月の登録車新車販売はトヨタがトップ5を独占。高価格モデルが売れるという体質強化が凄すぎる
世界中の自動車市場がコロナ禍で沈んだのはご存知の通りですが、数字の上ではかなり盛り返してきています。
たとえば、普通乗用車(いわゆる3ナンバー車)全体の2021年1月の新車販売台数は12万4002台で、これは前年同月比で115.8%となっています。2020年1月といえば中国・武漢での新型コロナウイルスは報道されていましたが、まだまだ日本では他人事と考えていた人が多い時期。つまり、通常時よりも3ナンバー車は売れているといえるのです。
その代表といえるのがトヨタ・アルファードでしょう。エントリーグレードでも350万円、最上級グレードになると750万円を超えてくるLLクラスのミニバンが、なんと2021年1月だけで1万11台も売れているのです。しかも、現行アルファードのデビューは2015年1月ですから丸6年が経っているモデルなのです。
けっしてフレッシュとはいえない高価格車がこれほど売れているのは驚異的です。
というわけで、あらためて2021年1月の登録車・新車販売ランキング(自販連調べ)のトップ5は次のようになりました。
1位 トヨタ・ヤリス 1万8516台
2位 トヨタ・ルーミー 1万939台
3位 トヨタ・アルファード 1万11台
4位 トヨタ・ハリアー 9177台
5位 トヨタ・カローラ 7773台
見事にトヨタ車が並んでいますが、これは決してトヨタ内でのランキングというわけではありません。
これは全メーカーを合わせたランキングの結果。ちなみにトップ10でいうと6位に日産ノート(7532台)が、10位にホンダ・フィット(5889台)が入ってきているだけで、本当にトヨタ車ばかりが売れているのです。
さらにヤリスは国内市場の絶対王者といえるホンダN-BOXの1万6369台を超え、軽自動車と合わせたランキングでも総合トップとなっています。
しかし注目すべきは、前述したアルファードやハリアーといった高価格なプレミアムモデルがこれほどの規模で売れていることでしょう。
なぜなら、一般論として高価格帯のモデルというのは一台あたりの利幅が大きく、端的にいえば儲かる商品だからです。
軽自動車やコンパクトカーは市場ニーズに合わせた価格帯のため“薄利多売”になりがちですが、ラグジュアリーミニバンやクロスオーバーSUVという付加価値モデルが、このスケールで売れているということは企業としての利益率を高めることにつながります。
コロナ禍によって自動車販売はズタズタになったと思いがちですが、そこからトヨタは復活しているだけでなく、利益率の高いクルマが売れる方向へ向かっていることが、2021年最初の販売ランキングが見て取れるというわけです。
もともとトヨタというのは量販車メーカーとしては高い利益率を誇る企業です。そうした体質をさらに強化しているのです。雨降って地固まるではありませんが、逆境を糧に成長するトヨタが国内市場で今まで以上に無敵の存在となりそう。
トヨタ車の好調なセールスとその内容を見ていると、このまま国内シェアをどこまで伸ばしてしまうのか。ライバル他社からすると、これまで以上に戦々恐々なのは間違いないでしょう。
また、こうした販売状況をみていると、2021年は販売台数だけでなく自動車メーカーとしての利益率も含めてチェックしていくべきかもしれません。
(自動車コラムニスト・山本晋也)