■走りを重視したらから室内が狭い、は過去の話。でも…
ちょっと狭くて窮屈──助手席の彼女は、このクルマの室内に対してそう感じているらしい。でもそれは無理もない、だって実際に狭いのだから。
ボクの愛車はトヨタ「スープラ」。トヨタがBMWと共同開発した、渾身のスポーツカーだ。
走りを重視して開発されたクルマだから室内は狭い。……なんていうと、ちょっと語弊がある。今どき「速いクルマは室内が狭い」なんていうのは過去の常識に過ぎず、“室内は広くてとびきり速い”なんてクルマはたくさんあるからだ。
たとえばアウディ「RS4アバント」や「RS6アバント」をはじめ、メルセデス・ベンツAMGやBMWのM系のステーションワゴンなんかが該当する。
それらは実用性や快適性をまったく犠牲にすることなく、スポーツカー顔負けの走行性能を有する。サーキット走行をするわけでもなければ、ガンガン走っても室内が狭いクルマに対する明確なメリットはそう感じられるものではない。
●“スポーツカーらしさ”のドラマを求めて
スープラは後席のない2人乗りで、室内はタイトだ。そんな室内に座って運転をしていて、ボクは思う。このパッケージングは走り云々よりも、雰囲気づくりとかストーリー性に重要な役割を果たしているんじゃないかって。
この“スポーツカーらしさ”こそが、スポーツカーにとっては大切なのだと思う。狭くてナンボ。むしろ広ければドラマがないのだ。
それを「使えないクルマ」と言い切るのは簡単だけど、そう感じる人はスポーツカーを買う資格がない人なのだと思う。
「私もね、最初は“狭いな”って思っていたんだ。でも慣れると、狭いのも悪くないかも。結構落ち着くのよ」
そう彼女が言ってくれるのが嬉しい。
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:くるす蘭/ヘア&メイク:長谷川 さほ/写真:ダン・アオキ)