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■2021年4月から新たに自転車保険加入が義務化される地域が増える! 自転車も立派な「車両」です。
コロナ禍で増えているのが自転車の利用です。通勤通学はもちろんのこと、最近ではウーバーイーツに代表されるフードデリバリーサービスを、自転車を使って営む人も増えています。
急増している自転車利用ですが、交通ルールを無視し、クルマのドライバーや歩行者としてヒヤリとすることもあるのではないでしょうか。今回は改めて自転車利用のルールを確認するとともに、昨今義務化が進む自転車保険について解説していきます。
●改正道路交通法、条例制定など自転車ルールが変わっている
2020年6月30日から施行されている改正道路交通法は、自転車によるあおり運転の禁止などを定めたものです。信号無視や酒酔い運転などの危険行為に加えて、自転車による「妨害行為」を規定する内容が追加されました。
逆走して進路を塞ぐ、幅寄せ、進路変更、不必要な急ブレーキ、ベルをしつこく鳴らす、車間距離不保持、追い越し違反の7項目が規定されています。
悪質な違反行為に対しては赤切符が切られ、略式起訴や罰金刑などの刑事罰が科せられる可能性があり、起訴猶予となった場合でも、危険行為による赤切符を3年以内に2回以上交付された場合には、自転車運転者講習を受けるように命令が来ます。手数料は6000円で講習時間は3時間です。受講命令に従わない場合には、違反行為とは別に5万円の罰金が科せられます。
自転車に対する交通ルールの厳格化が進む中ですが、自転車利用時の危険な行為は後を絶ちません。また、歩行者との接触事故も増えてきており、地方自治体は自転車保険への加入義務化を進めています。
2020年には東京、神奈川、埼玉などの関東圏の都県、大阪、京都、滋賀、兵庫などの関西圏の府県、鹿児島などで、都府県全体を対象にした条例を施行し、自転車保険への加入義務の動きは高まっています。
しかし、これは都道府県全体への義務化ではなく、一部市町村を対象にした義務化の動きも進み、愛知県名古屋市、宮城県仙台市といった政令指定都市では、県内全域ではなく、市内の自転車利用に対して自転車保険への加入義務を定めています。
●2021年も自転車保険の義務化は進む
これまで自転車保険への加入を努力義務としていた自治体の一部では、2021年4月1日よりワンランク上の義務化とする動きが出てきています。具体的な地域は県全体への条例が宮崎県、宮城県、群馬県など、市町村別では岡山市、千葉市などとなっています。また、6月1日より大分県全域でも自転車保険加入への義務化が行われ、今後も義務化の動きは拡大傾向です。
この加入義務は、自転車を利用する本人はもちろん、未成年者が利用する場合は保護者に対して発生します。
自転車が歩行者と接触し歩行者に怪我を負わせた、最悪の場合死亡させたという事故が多数発生しています。自転車を運転するということは、事故に対する賠償を行う必要があるということです。
過去に発生した自転車事故の賠償額では、相手方を死亡させたり高度後遺障害が残る怪我をさせた際に、5000万円から1億円近くの支払い命令が出されています。未成年者が起こした事故では、その保護者が賠償金の支払う責任を負うという判決も下されました。
各地域の自転車保険加入義務を盛り込んだ条例に違反しても、具体的な罰則は設けられていません。しかし、気軽に乗れる自転車でも乗ってしまえば一人のドライバーです。ドライバーとしての自覚をもち、万が一の際の準備を怠ってはいけません。自転車保険への加入は、ドライバーとしての責務の一つとなります。
●どうやって入る? 自転車保険の加入方法
加入義務の動きが広がる自転車保険とは、自分が事故の加害者側になった時に効力を発揮するものです。いわゆる「個人賠償責任保険」の事を指します。
混同しやすいのが自分の怪我の治療費用を補償してくれる「傷害保険」です。傷害保険に加入しても、自転車保険への加入とはならないので注意しましょう。
自転車保険への加入はインターネットでの申し込みが可能なものや、コンビニエンスストアで加入手続きができるものもあります。
また、クルマを所有されている方であれば、自動車保険の個人賠償責任特約(保険会社によって名称は異なる)を付けることで、自動車保険への加入と同程度の補償を受けることができます。
クルマを持っていて、なおかつ自転車に乗るという方は、自動車保険の内容を確認してみてください。個人賠償責任保険(特約)は略して「個賠(コバイ)」ともいわれます。「私の自動車保険には個賠ついていますか?」と、保険会社や代理店に一度確認してみるといいでしょう。
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自転車利用が増える中で、日本では自転車に対するルール整備が遅れています。交通ルールを理解して遵守するのはもちろんですが、万が一の事故に対する備えも重要です。月に数百円で付帯できる自転車保険や個人賠償責任特約で、サイクリングの安心を広げてみてはいかがでしょうか。
(文:佐々木 亘)