タイヤのトレッドとは?乗り心地や操安性を左右する路面との接地部分【バイク用語辞典:ホイール・タイヤ編】

■燃費や騒音、乗り心地はトレッドパターンに大きく影響される

●バイクの種類や用途などに応じてトレッドパターンやゴム質の硬さを最適化

トレッドとはタイヤが路面と接している部分を指し、駆動力や制動力を効率よく路面に伝えるために強いグリップ力を必要とします。そのためタイヤ表面にはトレッドパターンと呼ばれる溝が刻まれています。

走行性能や走行安全性に大きな影響を与えるタイヤのトレッドについて、解説していきます。

●トレッドの重要性

タイヤのトレッドとは路面と直接接触する部分のことで、路面からの衝撃や損傷などの外乱から内部を保護します。表面にはいろいろなトレッドパターンが刻まれており、グリップ力を高めて駆動力や制動力を確保する以外にも、旋回性能や排水性能、振動吸収、静粛性にも大きく貢献します。

ステアリングを切ってコーナリングするクルマと異なり、バイクは車体を傾けて旋回します。そのため、バイク用タイヤのトレッド部はクルマ用タイヤのようなフラット形状でなく、サイドに回り込むように弧を描く円形なのが特徴です。車体が大きく傾いても、一定の接地面積を確保できるようにするためです。

さまざまな運転条件で強いグリップ力を確保することがトレッドの使命なので、トレッドパターンや材質の最適化を図っています。

●いろいろなトレッドパターン

トレッド表面に刻まれるトレッドパターンは、4種類に大別できます。

・リブパターン
縦方向の直線またはジグザグの連続した溝で構成され、操縦性や直進安定性に優れ、転がり抵抗が少ない、排水性が良いなどの特徴があります。

・ラグパターン
横方向に溝を刻み、特徴として駆動力や制動力が発揮しやすく、非舗装路での牽引力が強いパターンです。

・リブラグパターン
リブパターンとラグパターンを組み合わせ、両者の特徴を合わせ持つパターンです。

・ブロックパターン
独立したブロック(塊)で形成され、駆動力や制動力が高く、雪道やダートでのグリップ性能に優れており、スタッドレスタイヤやスノータイヤで採用されています。

代表的なトレッドパターン
代表的なトレッドパターン

トレッドパターンはグリップ力や燃費、騒音に大きく影響するため、バイクの種類や用途に合わせて最適なパターンが選ばれます。例えばロードスポーツモデルでは、フロントには転がり抵抗が少なくグリップ力の強いリブパターンを主にしたタイヤ、リアには駆動力を路面に伝えやすいラグパターンを主にしたタイヤを、またオフロード車ではブロックパターンのタイヤが使われます。

●タイヤのコンパウンド

コンパウンドとは、本来混合物や複合物の意味ですが、タイヤではトレッド部の複合ゴムを指し、転じてゴムの性質、硬さを代表する言葉として用いられます。

レース用タイヤではソフト/ミディアム/ハードと3種類に分類され、路面の状況によって使い分けられます。コンパウンドの違いは発熱特性の違いであり、ロードレース用タイヤは路面温度に合わせてコンパウンドを調整するので、サーキットのピット内にはさまざまなコンパウンドのタイヤが用意されています。モトクロス用タイヤはブロックパターンとコンパウンドの両方を変化させて調整します。


タイヤのグリップ力を高めるためのトレッドパターンにはさまざまなパターンがありますが、リブパターン、ラグパターン、リブラグパターン、ブロックパターンの4種類に大別でき、バイクの種類や用途に合わせて適正に選定されます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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