ブレーキのかけ方とは?エンジンブレーキを併用し前後ブレーキをバランス良く操作【バイク用語辞典:ブレーキ編】

■後輪ブレーキでバランスを取り姿勢を安定させる

●ABSまたはCBSの装着が義務化されているが過信は禁物

バイクで安全に減速、停止するためには、エンジンブレーキと前輪ブレーキ、後輪ブレーキの3つのブレーキをバランスよく使うことが重要です。そのためには、それぞれのブレーキの特徴を十分理解しておく必要があります。

安全運転の基本である適正なブレーキのかけ方について、解説していきます。

●ブレーキの種類

バイクのブレーキは、AT車とMT車でシステムが異なるため操作の仕方も異なります。

スクーターや原付バイクなどのAT車は、自転車のように右手のレバーが前輪ブレーキ、左手のレバーが後輪ブレーキです。また、MT車は、一般的には右手のレバーが前輪ブレーキで、右側のフットブレーキが後輪ブレーキです。

さらに、減速のためにアクセルを戻しエンジンのスロットルバルブが閉じたときに働くエンジンブレーキがあります。ただし、エンジンブレーキは、アクセルを戻す時のエンジン回転数などの運転条件によって大きさが異なり、ライダーが強さを制御できるブレーキではありません。

●エンジンブレーキの使い方

減速のためにアクセルを戻すと、エンジンのスロットル開度が閉じてバイクには制動力となるエンジンブレーキが働きます。これは、スロットル開度を閉じるとエンジンがほとんど空気を吸入できなくなり、エンジンには大きなポンピング損失が発生するからです。ちょうど注射針の先端にフタをして注射器を引っ張るときに大きな力が必要な状態と同じです。

発生するポンピング損失は、エンジンにとっては負の仕事なので、タイヤの回転を抑える制動力として働きます。このエンジンブレーキは、エンジン回転数が高いほど大きくなるので、MT車の場合減速中にシフトダウンすれば、より大きなエンジンブレーキを発生させることができます。

ただし、エンジンブレーキは、通常のブレーキに比べれば制動力が小さく、ライダーがその強さを制御できないので、ブレーキとして期待し過ぎると危険です。通常のブレーキの補助やブレーキ装置の消耗(パッドの摩耗など)を軽減するという役割です。

●前後輪ブレーキの使い方

ブレーキとバイク姿勢
ブレーキとバイク姿勢

ブレーキのかけ方の基本は、前輪ブレーキで制動、後輪ブレーキで姿勢を安定させることです。

3つのブレーキの使い方
3つのブレーキの使い方

スクーターや原付バイクのようなAT車のブレーキは、前後輪同時にレバーを握りますが、前輪のブレーキを強くかけ過ぎると前輪タイヤがロックして転倒する恐れがあります。アクセルを戻してエンジンブレーキを効かせながら、前後輪のブレーキを均等にかけることがポイントです。

MT車の場合も、アクセルを戻してエンジンブレーキを効かせながら右手のブレーキレバーと右足のフットペダルを同時にかけます。前輪ブレーキの方が制動力は大きいので、前輪のブレーキレバーを強く握り、減速し始めると左足のフットレバーでギアダウンしていきます。前輪ブレーキで制動を確認しながら、後輪ブレーキは極力一定強さで踏み込み、車体の荷重配分を均等にバランスさせるようにします。


急ブレーキ時のタイヤロックを防止するABS(アンチロックブレーキシステム)、または前後輪のブレーキのバランスを取るCBS(コンバインドブレーキシステム)の装着が、2018年10月から義務化されています。ただし、これらの安全システムに頼り過ぎるのではなく、ブレーキの操作の基本を理解しておくことが大切です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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