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■油圧装置を必要としないシンプルな構造で安価なブレーキ
●放熱性が悪く制動力のコントロールが難しいのでスクーターなどに限定
ドラムブレーキは、ホイールとともに回転するドラムを一対の摩擦材付のブレーキシューを押し付けることによって制動力を発生します。ブレーキシューは、ブレーキレバーに連結されたブレーキワイヤーにつながれた作動カムの回転で作動します。
制御性の問題から採用が限られるドラムブレーキの構造と仕組みについて、解説します。
●ドラムブレーキの仕組み
ドラムブレーキは、ホイールとともに回転するドラム内に、一対の三日月状のブレーキシュー(外側にライニングという摩擦材を貼付)が配置され、それぞれ下端はアンカーピンで留められています。ピンと反対側は作動カムと接しており、作動カムはワイヤーやロッドでブレーキレバーと直結しています。
ブレーキレバーを引くとワイヤーが引っ張られて作動カムが回転し、2つのブレーキシューがアンカーピンを支点として押し広げられます。ブレーキシューが開くと外側に貼付されたライニングがドラム内面に押し付けられ、制動力が発生します。ブレーキレバーが離されると、バネ力によって作動カムが元に戻り、ブレーキシューも元の位置に戻ります。
ドラムブレーキは比較的低コストですが、初期に制動力が高くなり過ぎる特性があるため、コントロールが難しいという特性があります。また密閉性が高いので放熱性が悪く長時間使用するとドラムの熱膨張によって制動力が低下するという課題もあるため、採用はスクーターなど小型車に限定されます。
●セルフサーボ効果とは
ブレーキシューは、ドラムが回転する進行方向前側にあるのがリーディングシュー型、後側にあるのがトレーリングシュー型です。
リーディングシューはドラムとともに回転しようとしますが、アンカーピンで留められているため回転できず、さらに強くドラムに密着しようとする力が働きます。このため、ドラムとの摩擦力が反対方向に働くトレーリングシューより強い摩擦力を得ることができ、より強い制動力が発生します。このドラムとの摩擦力でブレーキシューを広げようとする力を「セルフサーボ(自己倍力)効果」といい、この効果があるため、ドラムブレーキは油圧機構を必要としないのです。
●制動力を強化するには
前述のように1つの作動カムでブレーキシューを作動させるのがリーディングトレーリング型、2つの作動カムで2つのブレーキシューを作動させるのがツーリーディング型です。
ツーリーディング型は、2つのシューともセルフサーボ効果が働くリーディングシューとなるため、前進時にはリーディングトレーディング型の1.5倍の制動力を発揮します。そのため、より高い制動力が要求されるフロントブレーキに採用されます。ただし、坂道などでバイクが後退する場合、逆向きに作用するトレーディングがないため制動力が弱まるのが難点です。
ドラムブレーキは構造が簡単で低コストですが、性能的にはディスクブレーキに劣るため、一部の小型車やオフロード車のリアブレーキ、スクーターにしか採用されていません。自動車でも、一部の軽自動車やコンパクトカーのリアブレーキでの使用に限られます。
(Mr.ソラン)