2次減速機とは?トランスミッションとリアタイヤ間にある最終減速機【バイク用語辞典:動力伝達機構編】

■主要な伝達方式は、チェーンドライブ、ベルトドライブ、シャフトドライブの3種類

●バイクによって伝達方式は使い分けられるがチェーン式が主流

バイクは構造上一度に大きな減速比が取れないため、エンジンの動力は「1次減速機構」、「トランスミッション(変速機)」、「2次変速機」を経て、3段階で減速します。

最終的に減速比を決定する2次減速機について、解説します。

●2次減速機とは

2次減速機は最終減速機とも呼ばれ、トランスミッションの回転を減速して動力をリアタイヤに伝えます。動力伝達方式としてはチェーンドライブ式が一般的ですが、その他にもベルトドライブ式、シャフトドライブ式の3方式があります。

以下に、代表的な3つの方式について紹介します。

●チェーンドライブ式

2次減速機でもっとも一般的なのが、チェーンドライブ式です。

チェーンドライブ式
チェーンドライブ式

トランスミッションのドライブシャフトに取り付けられたドライブスプロケットと、リアタイヤ側のドリブンスプロケットをチェーンで連結します。2つのスプロケットのギヤ比によって最終減速比が決まります。

構造が簡単で減速比の変更が容易にできる、チェーン自体が撓むのでリアタイヤが動くことで発生する衝撃吸収性に優れるというメリットの一方で、最終減速比を大きくできない、振動や騒音が発生しやすく定期的なメンテナンスが必要という課題もあります。

一般的なチェーンは、専用グリースを付着して潤滑をしていますが、グリースが飛散すると潤滑不良を起こします。信頼性の高いチェーンとしてシールチェーンがあり、ローラーとピンの間にフリースを詰め込み、オーリングでシールしているので長期間の潤滑が保持されます。

●ベルトドライブ式

チェーンドライブと同じような仕組みですが、チェーンの代わりにコグドベルト(歯付ベルト)を使用するのが、ベルトドライブです。コグドベルトは、ポリウレタンなどをベースにガラス繊維やアラミド繊維などを配合し強度を高めており、その強度はチェーンを上回るほどです。

ベルトの内側には凹凸が付いており、プーリの歯車と噛み合うようになっています。チェーン式に比べて重量が1/4と軽く、注油の必要がないためメインテナンスフリーです。また1本のベルトなのでプレートを連結したチェーンのようにフリクションがなく、騒音が小さいのがメリットです。さらにゴムがある程度伸び縮みするので、エンジンのトルク変動を吸収して滑らかな走行ができます。

ただし、ごみの噛み込み対策が必要なこと、コストが高いためチェーンに比べると採用数は少ないです。

●シャフトドライブ式

エンジンの動力をチェーンやベルトでなく、ドライブシャフトとギヤの組み合わせで行う方式です。

ミッションからの動力をスパイラル・ベベルギヤによって90度向きを変え、ドライブシャフトを介してリアタイヤのギヤボックスに伝達します。それをスパイラル・ベベルギヤによって再び90度向きを変えて、リアタイヤを駆動させます。

ギヤボックスには専用のオイルが充填されているため、常時潤滑され耐摩耗性に優れています。チェーンドライブ式より静かでメンテナンスフリーなどのメリットがある一方、構造が複雑で重量が重く、またコストが高いのが課題です。


クルマはトランスミッションの変速比とデファレンシャルギヤのデフ比の2段で減速しますが、バイクは構造上1次減速機とトランスミッション、2次減速機の3段で減速します。2次減速機は、クルマのデファレンシャルギヤに相当し、チェーンドライブ式が一般的ですが、ベルトドライブ式やシャフトドライブ式などがあり、それぞれバイクの種類や構造に応じて使い分けられています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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