■PHEVとガソリンエンジン車の車両重量の差は約400kg!
ビッグマイナーチェンジを受けた三菱・エクリプス クロスは全長が140mm延長され、リヤオーバーハングが105mm長くなり、さらに前後にモーターを配置するPHEVを設定し、PHEV化に伴い全長が長くなっています。
PHEVは、中低速域を中心にエンジンで発電して駆動用バッテリーに充電しながらモーター走行をするシリーズハイブリッドをベースに、バッテリー残量が少ない際の高速走行時には、パラレルハイブリッドになり、エンジンを直結させることでエンジンが主役のモーターがアシスト役に回るという、シリーズハイブリッド、パラレルハイブリッドを兼ね備えています。
そのため、発進時や街中ではハイブリッドの利点であるスムーズな発進が即得られます。しかもアクセル開度は小さくすみ、モーター走行らしく高い静粛性を実感できるのも美点です。
ガソリンエンジン車とPHEV仕様を比べる際に、とかく燃費の差(燃料代)で元が取れるか、という視点で語られがちですが、発進時のレスポンスの良さ、高い静粛性に価値を見いだして購入する手もありそうです。さらに、せっかくのプラグインハイブリッドなので自宅などで充電できるとよりEVならではの利点、価値を実感できそう。
満充電時のEV航続距離は57.3km/L(EV走行換算距離 WLTCモード)ですから、日常の買い物や送迎、近距離であれば通勤でもほぼモーター走行でまかなえそうです。
PHEVには、ほかにも100V/1500W AC電源により災害時やキャンプなどで家電を使えるのも魅力。さらに「V2H(Vehicle to Home)」機器を使えば満充電時で最大1日分、ガソリン満タンで最大約10日分の住宅への電気供給が可能で、走る蓄電池としても使えます。
PHEV仕様の走りは、中低速域を中心としたモーター駆動の力強さ、応答性、高い静粛性だけでなく、ガソリンエンジン車からの重量増によるハンドリングの差も特徴です。
試乗車のPHEVは1990kg(本革シート装着車、ミツビシパワーサウンドシステム装着車、電気温水式ヒーター装着車など)で、乗り比べた1.5Lガソリンターボ車は1560kg(ミツビシパワーサウンドシステム装着車は+10kg)で、じつに430kgもの差がありました。
なお、PHEVの車両重量(カタログ値)は1900-1920kg、ガソリンターボ車は1450-1550kg。PHEVは、床下に駆動用バッテリーなどの重量物を積んでいることにより、シーンを問わず少し揺すぶられるような乗り味になっています。
高速道路でも足の硬さが伝わってくる一方で、ボディの剛性感が高いこともあり揺れの収束が比較的短く感じられるのは美点。また、ガソリンエンジン車の軽快なハンドリングと比べるとPHEVは重量が重いこともあり、普通に走らせている分には安定志向のフットワークに感じられます。
一方でワインディングで走らせると、専用チューニングが施されたという電動パワステのダイレクト感や、「S-AWC」のドライブモードを「TARMAC(ターマック)」にすると、よりスムーズなコーナリングが可能になり、高い旋回性で山道でも走りが楽しめるのは大きな魅力といえそうです。
なお、走行モードはほかにも通常走行や雨天時に向く「NORMAL」、雪道など滑りやすい路面に向く「SNOW」、悪路走行時や脱出時に向く「GRAVEL(グラベル)」が設定されています。
マイナーチェンジを受けたエクリプス クロスは、追加されたPHEVの注目度が高くなるのは当然としても1.5Lガソリンターボエンジン車の仕上がりも上々です。先述したように、車両重量が軽い分、ワインディングでも高速道路でも軽快感が強く、150PS/5500rpm・240Nm/2000-3500rpmという数値以上に力強く感じられます。
PHEVはモーター駆動やハイブリッド走行、高い静粛性などによる高級感が魅力で、ガソリンエンジン車は軽いことによるドライバビリティの高さを存分に味わえます。
今回のビッグマイナーチェンジにより、予算やニーズに応じてPHEVとガソリンエンジン車から選べることになったのは、競争が激化しているコンパクトSUVの中でも存在感を発揮できそうです。
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠、塚田勝弘)