■10年後の2030年に死亡交通事故ゼロの実現へ向かって進化するSUBARUの総合安全
本サイト、クリッカーが産声を上げたのが2010年12月21日のことで、ちょうど丸10年が経過しました。
中古車に関する記事を掲載することの多い筆者にとって、この10年間で最もクルマで変化したと思うのは、運転支援システムを含む“安全性”です。今回はクルマに搭載されている運転支援システムの変化をこれまでの10年、そしてこれからについて検証してみたいと思います。
今、「価格が安くてイイ中古車ない?」と言われるとしたら、100万円以下で購入できるアイサイトver.2を搭載したスバル車を勧めます。該当するのは旧型のインプレッサスポーツ、インプレッサG4、XVあたりでしょう。
イイクルマという条件は人によって異なるでしょうが、私にとってイイクルマというのは運転支援システムをはじめとした安全性の高いクルマと考えているからです。特にこの領域は10年で格段に進歩し、2020年に登場した現行型レヴォーグは最新鋭のアイサイトXを搭載し、クルマに搭載したステレオカメラなどの様々なデバイスに加えて、準天頂衛星やGPSからの情報、そして3D高精度地図データにより国産車では最高峰の運転支援システムを実現しています。
そのアイサイトのルーツは、1999年に市販化されたADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)です。レガシィランカスターに搭載されたADAは「車間距離警報」「車線逸脱警報」「車間距離制御クルーズコントロール」「カーブ警報/制御」という、今のアイサイトにつながる4つの機能を搭載しましたが、高価だったことから1度表舞台から姿を消します。
そして、2008年5月のレガシィツーリングワゴン/B4/アウトバックの一部改良時にアイサイトがオプションで設定されました。
アイサイトver.1は予防安全機能としてプリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)、AT誤発進抑制制御、車線逸脱警報、ふらつき警報の4つの機能。そして運転負荷軽減機能として全車速追従機能付クルーズコントロール、先行車発進お知らせ機能の2つの機能が備わっています。
ただ、このアイサイトver.1のプリクラッシュブレーキでは警報による注意喚起や衝突軽減ブレーキの制御は行うものの、自動的にクルマを停止することはできなかったこともあり、普及しませんでした。
そして約10年前の2010年4月に行われたレガシィの一部改良時に、アイサイトはver.2へと進化します。このアイサイトver.2はTV-CFなどで良く耳にした「ぶつからないクルマ」のキャッチフレーズ通り、自動ブレーキによってクルマを減速・停止させる「プリクラッシュブレーキ」を採用しました。
その結果、自動ブレーキの最大減速度を大幅高めることで渋滞の多い都市部の自動車専用道路など、先行車の減速幅が大きい状況でも追従ができるようになりました。また先行車が停止した場合、追従して自車を停止させた上、さらに停止状態を維持できます。
さらにアイサイトver.1に比べて、アイサイトver.2では自車を自動ブレーキによって停止できるようになったことに加えて、予防安全機能の一つである、車間距離警報が追加されました。
2014年5月に発表された初代レヴォーグにはアイサイトver.3が搭載されました。アイサイトver.3はステレオカメラを刷新。視野角と視認距離をそれぞれ40%拡大し、視認性能を向上させたことが特徴です。カラー画像化によってブレーキランプも認識できるようになり、従来の運転支援機能を進化させるだけでなく、ステアリング操作のアシストや誤後進を抑制。さらに逆光などの悪条件下での作動安定性を高めています。
そして車線逸脱はこれまでのver2では警告音によるサポートだけでしたが、全車速追従機能付クルーズコントロールをセットし、約65km/h以上で走行している場合、車線内の中央付近を維持するようにステアリング操作のアシストを行ってくれます。さらにRレンジの状態でアクセルの急な踏み込みを検知し、誤後進とシステムが判断した場合、注意喚起をおこない、エンジン出力を抑え、後退の飛び出しを抑制。そして後退時の制限速度を設定できる後退速度リミッター機能も備えることで、前方だけでなく後方にもセンサーによる監視を拡大しました。
このアイサイトver.3に追加された機能が「アドバンスドセイフティーパッケージ」です。前方を監視するステレオカメラに加えて、車体後部に内蔵されたセンサーによって自車の後側方から接近する車両を検知して、ドアミラー鏡面のLEDインジゲーターや警告音でドライバーに注意を促すスバルリアビークルディテクション。フロントウィンドウ内側に内蔵した単眼カメラによって前方の光を検知して、ハイビーム/ロービームを自動的に切り替えるハイビームアシスト(フォレスターはアダプティブドライビングビーム)、そして自動防眩インナーミラーなどによって死角を減らし、より安全なドライブを支援してくれる装備です。
そして2020年、日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーに輝いた現行型レヴォーグにはアイサイトXを搭載。約50km/h以下の渋滞時のハンズオフアシストや高速走行時のアクティブレーンチェンジアシスト、さらに料金所前速度制御なども可能となりました。
アイサイトXでも自動運転のレベル2ではありますが、このシステムを体験すると将来の自動運転の入口まで来ていることがわかります。
10万円という安価なシステムとなってアイサイトが普及して10年が経ちましたが、この10年でSUBARUの「総合安全」の進化により販売台数100万台あたりの死亡重傷事故数が約70%低減。10年後の2030年にはゼロということも夢ではないようです。
(文:萩原 文博/写真:SUBARU)