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■サスペンションはコイルスプリングと減衰力を発生するダンパーで構成
●ダンパーの減衰特性は、ダンパーピストンのオリフィスの径や形状で調整
一般的な油圧式ダンパーでは、粘度の高いオイルと空気が封入されたシリンダーの中にオリフィス付きのダンパーピストンが内蔵されています。このダンパーピストンの穴を通じてオイルが上下に通過するときの抵抗で減衰力が発生します。
ダンパーの基本的な構造と役割について、解説します。
●ダンパーの原理と役割
コイルスプリングは衝撃を吸収しますが、振動が収まるまでに時間を要します。減衰装置であるダンパー(ショックアブソーバー)は、その振動を素早く抑える減衰の役割を担い、コイルスプリングと組み合わせて使います。
標準的な油圧式ダンパーでは、粘度の高いオイルと空気(または窒素ガス)が封入されたシリンダーの中にオリフィス付きのダンパーピストンが内蔵されています。ピストンが上下してオイルがオリフィスを通過するときに抵抗となり、減衰力が発生します。
例えばタイヤが突起に乗り上げると、スプリングが吸収しダンパーとともに縮みます。突起を乗り越えると、スプリングは一旦伸びてその反動で再び縮もうとします。このとき、ショックアブソーバーが突っ張り、サスペンションの振動を収束させるのです。
●減衰力の調整
ダンパーピストンのオリフィス径や形状によって発生する抵抗力が変化するので、減衰力を調整することができます。具体的には、ダンパーピストンにワンウェイバルブを設けて伸び側と圧縮側の減衰力をコントロールします。
サスペンションが圧縮するときにはスプリング力が反発する方向に作用するため、大きなオリフィスによってオイルが移動しやすくして減衰力を弱めます。一方サスペンションが伸びる場合は、大きなオリフィスは閉じてオイルは小さな径のオリフィスを通過するようにして強い減衰力を発生させます。
オリフィス径を可変化する機構もあります。
・ニードル弁可変タイプ
オイル通路にニードルバルブによる可変絞りを設け、オリフィス径を無段階に変化させて減衰力を調整
・スリーブオリフィス可変タイプ
ピストンロッド内側に異なるオリフィスを持つスリーブを設け、スリーブを回転させてオリフィス径を変化させることで減衰力を調整
●ガス封入の必要性
通常のダンパーでは、ダンパーピストンが圧縮方向に移動するとピストンとともにピストンロッドもシリンダー内に入り込むため、シリンダー内の容積が小さくなりすぎてオイルの行き場がなくなりストロークできなくなります。また、シリンダー容積が小さい状態でオイルを充填すると、ピストンロッドが伸びたときにシリンダー内の圧力が下がり、ダンパーが機能しなくなります。さらに、ダンパーピストンの往復運動によって発生する負圧によるキャビテーション(気泡の発生)を抑える必要もあります。
そのため、ダンパー内部にはオイルとともに窒素ガスや空気が封入され、ダンパーが縮んだ時に気体が圧縮されることで、ストロークを確保するのです。
ダンパーは、オイルが充填されたシリンダー内をピストンが往復することで発生する抵抗を利用して減衰力を発生させます。この減衰力の特性が、バイクの乗り心地を大きく左右します。
(Mr.ソラン)