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■新型モデルにもMT設定が意外にある
ひと昔前は当たり前にあったMT(マニュアル・トランスミッション)車。ところが、最近ではCVTや多段ATのクルマが主流となり、徐々にレアな存在になりつつあります。
特に、コンパクトカーの場合は、幅広いユーザー層をターゲットにしているためか、MT車の設定がないモデルも多いのですが、全くないワケではありません。中には、2020年に出た新型車にも、MT仕様が設定されているモデルもあります。
そこで、ここではクルマで走ることが好きな人も楽しめる、新車で買えるコンパクトカーのMT車を紹介しましょう。
●トヨタ・ヤリス/GRヤリス
「ヴィッツ」から車名を変更し、2020年2月に発売されて大ヒットとなったトヨタのコンパクトカー「ヤリス」には、1.5Lガソリン車の2WD仕様と、スポーツグレードの「GRヤリス」に6速MTを採用したマニュアル車の設定があります。
まず、スタンダードのヤリスの場合、ラインアップには1.5Lエンジンのハイブリッド車、1.5Lと1.0Lエンジンのガソリン車という3タイプがあり、それぞれに2WD車と4WD車を設定。
6速MTを装備した1.5Lガソリン車の2WD仕様には、可変バルブタイミング機構を採用した直列3気筒エンジンを搭載します。最高出力は120ps、最大トルクは14.8kgf-mですから、中々パワフルな仕様になっていますよね。
ヤリスは燃費がいいのも魅力で、WLTCモード燃費(総合)は1.5Lガソリン車の2WD仕様の場合で19.6km/L。
ちなみに、ハイブリッドモデルは35.4〜36.0km/L、1.0Lエンジンや1.5LエンジンのCVT仕様では20.2〜21.6km/Lですから、6速MT仕様の燃費は他のモデルほどではありません。ですが、操る楽しさを味わえることを考えれば、なかなかの燃費性能だといえるでしょう。
一方、トヨタのスポーツブランド「GR」の名を冠したGRヤリス。トヨタが、世界ラリー選手権「WRC」参戦で培った技術を投入したハイパフォーマンスモデルで、ラインアップには1.5Lガソリン車と1.6Lターボ車を設定。また、車体もスタンダードが5ドアハッチバックなのに対し、3ドアハッチバックとしたワイドボディを採用。ワイド&ローの躍動感あるスタイルを実現しています。
そのGRヤリスでマニュアル車があるのは、272psを発揮する1.6L・3気筒インタークーラーターボを搭載し、走破性が高い4WD仕様としたRZとRZ“High performance”、それに競技専用のRCといったグレード。いずれも、6速iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)を採用しています。
この機構は、iMTスイッチを押すと変速動作(クラッチ操作、シフト操作)を検出し、変速後のエンジン回転数を合わせるように制御し、スムーズな変速をアシストしてくれるというもの。変速時のショックが少なく、シフトダウン時の操作ミスなどを防いでくれます。
価格(税込)は、ヤリスが139万5000円〜249万3000円、GRヤリスは265万円〜456万円です。
●スズキ・スイフト/スイフトスポーツ
スズキのハッチバック型コンパクトカー、ベーシックモデルの「スイフト」とスポーツ仕様の「スイフトスポーツ」には、それぞれマニュアル車の設定があります。
まず、スイフトには、1.2Lガソリン車とハイブリッド車およびマイルドハイブリッド車の設定があります。そのうち、最高出力91psの4気筒エンジンを搭載したRSとXGというグレードの2WD車に、5速MTを用意。ギヤの抵抗を減らすことで燃費性能を向上させるとともに、軽快なシフトフィーリングを実現し、低振動で静粛性も高めた仕様となっています。
一方、ワインディングからサーキット走行まで、様々なシーンでキビキビと走るのが魅了のスイフトスポーツ。このクルマにも、6速AT仕様のほかに、6速MT仕様が設定されています。
140psを発揮する1.4L・直列4気筒の直噴ターボを搭載し、走りのためにトランスミッションなどを徹底チューニングされたこのモデル。ギヤ比はクロスレシオ化され、アクセルペダルを踏み込む度に、吹け上がるエンジンパワーをダイレクトに味わえるのが魅力です。また、シフトは操作荷重や剛性のチューニングなどを行うことで、スムーズでダイレクト感のあるスポーティーな操作フィーリングを実現しています。
価格(税込)は、スイフトが137万7200円〜209万円、スイフトスポーツが187万4400円〜214万1700円です。
●マツダ・MAZDA2
近年、新型車の多くにMT車を設定している数少ないメーカーのひとつがマツダ。そのマツダのハッチバック型コンパクトカー「デミオ」から車名を変更した「MAZDA2」にもMT仕様車があります。
1.5Lガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 1.5」搭載車、1.5Lディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 1.5」搭載車の2WD車に6速MT仕様を設定。ガソリン車で1060〜1160kg、ディーゼル車でも1150kg〜1250kgという軽量な車両重量などにより、コンパクトカーならではの軽快さと、MT操作による自在に操る感覚を味わえます。
また、クルマの挙動を制御するGCVプラス(G-ベクタリング コントロール プラス)も採用。この機能は、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを制御し、タイヤの接地状態を最適化してスムーズで効率的な車両挙動を実現するもの。
また、ブレーキによる姿勢安定化制御も行うことで、ドライバーの素早いハンドル操作に対する車両の追従性を高めるとともに、挙動の収束性をサポートします。
これらにより、クルマとの一体感が向上すると共に、長距離運転での疲労蓄積を抑制、高速走行時の車線変更や、雪道など滑りやすい路面環境でも、より安心感のある走りを実現しています。
価格(税込)は、145万9150円〜277万7500円。ちなみに、マツダ創立100周年を記念した「15S 100周年特別記念車」(ガソリン車)や「XD 100周年特別記念車」(ディーゼル車)にも、2WD車に6速MT仕様が設定されています。
●トヨタ・カローラスポーツ
トヨタが世界に誇るカローラ・シリーズ。その中でもスポーティな内外装を持つ5ドアハッチバックモデルが「カローラスポーツ」。2019年に内外装が一部改良された現行モデルには、1.2L・4気筒ターボエンジン車と1.8Lの4気筒エンジン+モーターのハイブリッド車があります。
その中で、1.2Lターボ仕様には、4WD車のほかに2WD(FF)車も設定があり、その2WDのグレードに、前述のGRヤリスでも紹介した「i-MT」という6速MTを装備しています。
シフトダウンの変速時や発進時に、自動で最適なエンジン回転数に合わせてくれるi-MTの採用により、ターボエンジンの心地良い吹け上がりと、シフト操作を駆使することでクルマを操る楽しさが満喫できるのが魅力。
また、6速MT車で車両重量が1300〜1330kgという軽量な車体と、最小回転半径が5.1mというコンパクトなサイズなどにより、誰にでも扱いやすい操作性の良さも注目です。
価格(税込)は216万9200円〜284万1000円です。
(文:平塚 直樹/写真:トヨタ自動車、マツダ、スズキ)