■フォルクスワーゲンT-Crossとポロを比較してみると…
今回はコンパクトSUVのフォルクスワーゲン「T-Cross」についてお届けします。ボディサイズは、全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベースはポロと同じで2550mmとなっています。
ポロのボディサイズは、全長4060×全幅1750×全高1450mmですので、T-Crossの方が全長は55mm長く、全幅は10mmワイド、全高は130mm高くなっています。
パッケージングの面では、ホイールベースは同値でありながらも全高を高めることにより、アップライトな乗車姿勢とすることで、後席膝回りの広さを享受できるほか、もちろんヘッドクリアランスの余裕も確保できるSUVらしいパッケージングといえます。
また、全長と全高の拡大は、デザインだけでなく荷室容量の拡大ももたらしていて、T-CrossはVDA方式で455L-1281L。ポロの荷室容量は351L-1125L。一方でT-Crossの最小回転半径は5.1mと、ポロと同値になっていて、全高が1550mm以下が必須という駐車場事情を抱えていない限り、取り回しや駐車の面で大きな不利とはなっていないのも魅力です。
T-Crossのエンジンは、ポロと同じ1.0Lの直列3気筒ターボを搭載し、116PS/5000-5500rpm・200Nm/2000-3500rpm(ポロは95PS/5000-5500rpm、175Nm/2000-3500rpm)というスペックを得ています。
トランスミッションは7速DSG。T-Crossは先述のボディサイズにより1270kgという車両重量になっていて、ポロは1160kgですから、110kg重くなっています。
ポロよりも21PS/25Nm増強されているT-Crossは、重量増を感じさせない軽快な走りが魅力で、山岳路の急な上り坂でもグイグイと車速を引き上げていきます。エンジンの透過音も抑えられていて、3気筒特有の音・振動はポロよりも抑えられている印象。ポロよりも着座位置が高く、エンジンコンパートメントから遠くなっているためか、遮音、吸音対策がより念入りにされているためなのかは分かりませんが、静かなのは朗報。
さらに、ダイレクト感のあるデュアルクラッチトランスミッションの仕事ぶりもこうしたシーンではとくに頼もしく感じられます。フォルクスワーゲンのDSGは年々、極低速域のマナーが改善していて、扱いにくさを覚えるシーンは少ないはず。
FFらしい素直な回頭性も印象的で、コーナーにオーバースピードで突っ込まない限り、足の粘りも感じられますので、キャンプやウインタースポーツなどで山道を走る機会が多い人でも安心感はあります。ポロよりも着座位置も重心も高くなりますが、不安を抱くことは少ないでしょう。
一方で、乗り心地はかなり引き締まっています。減衰の利いた足まわりは、先述したようにコーナリングや高速域での高い安定感を抱かせる一方で、路面が荒れていると微振動が伝わってきますし、高速域になっても縦揺れが少し気になるのが惜しいところ。
なお、WLTCモードは、ポロが16.8km/L、T-Crossは16.9km/L。個人的にはもう少し乗り味が洗練されていれば、言うことナシ!! のコンパクトSUVに仕上がっています。
(文:塚田 勝弘/写真:前田 惠介)