マイナーチェンジしたN-BOXに抗ウイルスのエアコンフィルター用マスクが登場。その仕組みは塗装技術の応用だった

■季節性ウイルスでの実験では99.9%以上の減少率を確認

くるますく
エアクリーンフィルターに重ねて使用する「くるますく」はエアコン内気循環で効果を発揮する

日本一売れている軽自動車、ホンダN-BOXがマイナーチェンジを発表、同時に「くるますく」なる純正アクセサリーが登場しました。

クルマにマスクで「くるますく」というのはジョークグッズのような名前に思えてしまうかもしれませんが、いやいや大真面目な商品です。

その狙いは、車内のウイルスを減少させること。具体的には、標準装着されているエアコン用のエアクリーンフィルターに被せて使用するというアイテムになっています。

もともと空調ファンが起こした風は、外気導入時でも内気循環時でも、エアクリーンフィルターを通る構造ですが、「くるますく」が装着されたエアクリーンフィルターの場合、「くるますく」が車内に浮遊する0.1μm以下のウイルスを表面の微細な突起でキャッチして、物理的に傷つけることで大半を無効化してしまうというものです。

ただしこの効果が得られるのは内気循環時に限られ、外気導入時にはウイルスの捕集効果を発揮しないので、事前に機能を知っておくことが重要です。

新型コロナウイルスでの実験はできていないそうですが、季節性ウイルスによる実験では24時間以内に99.9%以上も減少させることが確認できたということです。驚くべき性能の抗ウイルス製品といえます。

くるますく
新型N-BOX用の「くるますく」は純正アクセサリーとしてホンダアクセスから発売される。メーカー希望小売価格は7040円(税込み)

その仕組みは意外にも単純かつ既存技術の応用といえるものでした。

まず「くるますく」自体はアルミメッシュシートをエアクリーンフィルターに被せられる形状に成形したものとなります。そして、抗ウイルス機能はリン酸亜鉛化成処理によって実現しています。具体的にいうと、アルミメッシュの表面に非常に小さな突起を作り、それによってウイルスを捕まえ、さらに物理的に攻撃して不活性化させることで抗ウイルス機能を実現しているのです。

このリン酸亜鉛化成処理というのは車体の錆止めにも使われている技術で、けっして新しいものではなく、また安全性も確認されているのがポイント。つまり薬剤を使っていないため人体への影響という心配もありませんし、耐性ウイルスを生み出すリスクも抑えることができるわけです。

もともとは、カーシェアリング時代に向けて、車内の衛生環境を自動的にクリーンにする技術として、本田技研工業の四輪ものづくりセンターで研究開発されていたそうですが、昨今の社会情勢から抗ウイルス用品として方向性を変えて商品化が進み、このタイミングでの発売開始が可能になったというわけです。

ちなみに、表面突起のサイズによってウイルスのほか、カビや菌への対応も可能な技術ということです。

くるますく
アルミメッシュの表面にある突起がウイルスにダメージを与えることで、浮遊するウイルスの99.9%以上を24時間以内に減少させることができる

いずれにしてもウイルスと戦うことが長期的に必要となるであろう時代において、心強いアクセサリーといえるでしょう。

抗ウイルス効果を車種ごとに確認をとってから製品化しているということで、まずはマイナーチェンジした新型N-BOXに対応した「くるますく」からのローンチとなりますが、今後は適応車種を増やしていく予定ということで期待も高まります。

N-BOX用「くるますく」のメーカー希望小売価格は、税込み7040円。製品寿命は1年間または1万5000kmと発表されています。消耗品と考えると、それなりの価格にも思えますが、抗ウイルスの効果を考えれば十分にリーズナブルなアクセサリーといえるのではないでしょうか。

なお、純正アクセサリーですからホンダカーズなどホンダ販売店で購入可能。発売元や問い合わせ先はホンダアクセスとなっています。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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