ガソリンスタンドで「駐車場」を貸し出し。日本初の試みは給油所減少の歯止めとなるか? 

■規制緩和により大阪でakippaが事業開始

約25年間ほどで、ガソリンスタンド(給油所)の数は半分に激減しています。

セルフ式スタンドの増加や、給油するクルマ自体が売れていないことによる収益低下など理由は様々ですが、いずれにしろ石油販売業界ではここ数年、大きな課題を抱えているといえます。またユーザー側でも最近、いつも利用していたガソリンスタンドがなくなってしまい、給油が不便になった人も少なくないでしょう。

そんな中、関西でガソリンスタンド内の空きスペースを駐車場として貸し出すという新サービスが始まりました。駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippaが、2020年12月9日より大阪府吹田市の旭油業「万博南口SS」でスタートしたもので、利用者はスマホのアプリなどから予約して利用することが可能です。

こういったインターネットを使った新しい試みが、ガソリンスタンド減少などの歯止めに貢献するのかが注目されます。

ガソリンスタンドで駐車場を貸し出す日本初のサービス
駐車場の貸し出しサービスを実施している旭油業「万博南口SS」(写真提供:akippa)

●駐車場だけでなく給油や洗車も可能

akippaは契約されていない月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などをオーナーが登録し、ユーザーはスマホのアプリなどから15分単位で駐車場を予約し利用できるというシェアサービスを展開している企業です。

同社によると「危険物の規制に関する規則」(以下、規則)の一部が改正され、「2020年4月から給油所の建築物周囲の空きスペースにおいても物品の販売等の業務が行えることとなった」ことが、今回の新サービス開始を後押ししたようです。

なお、法改正以降で、給油所を駐車場として貸し出す取り組みは日本初。近畿経済産業局や大阪府石油商業組合などと連携して行われます。

今回サービスが開始したは、前述の通り旭油業「万博南口SS」内駐車場(大阪府吹田市山田東3-3-1)で、ユーザーは駐車場だけでなく給油や洗車などの利用も可能となります。また、給油所側は駐車場代という新しい収益が生まれるほか、元々の事業(給油・洗車など)への新たな顧客開拓や需要増に繫がることも期待されます。

ガソリンスタンドで駐車場を貸し出す日本初のサービス
駐車場だけでなく、給油など従来からのサービスへの需要増や新規顧客開拓も期待できる(写真ハイメージ)

akippaでは、大阪での新サービスは「初の取り組みのため、試験的な実施」としています。

その一方で、今回の取り組みがきっかけとなり「全国の給油所にて油外事業として予約制駐車場の導入がベンチマークとなり、給油取扱所の維持や存続の一助となるように努めてまいります」と言及。空きスペースを駐車場として貸し出すガソリンスタンドの拡大を目指す方針です。

経済産業省の資源エネルギー庁がまとめたデータによると、全国のガソリンスタンドはピーク時の1994年が6万421ヵ所だったのに対し、2020年3月末では2万9637ヵ所と、前述の通り約25年間で半減しています。

最近は、政府が地球温暖化対策の一環として、2030年代半ばまでに「ガソリン車の販売を禁止する」方針であることが報道されています。ガソリン車の販売が禁止されるとなると、必然的にガソリンスタンドも、急増しているEV車用の充電スタンドに変わるなど、事業転換を迫られることは必須です。

今回の取り組みが、そういった課題解決の一助になることを望みます。

(文:平塚 直樹)

【関連リンク】

akippa公式ホームページ
https://www.akippa.com/

akippa公式HP内「旭油業万博南口SS内駐車場」紹介ページ
https://www.akippa.com/parking/1982ae4b66520c2d1b5afa970808d7b0

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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