目次
●ルーキーたちの速さが際立った予選
三重県・鈴鹿サーキットで12月6日、今回で19回目を迎えた「JAF GRAND PRIX」が開催されました。今大会はスーパーフォーミュラの第6戦として、今シーズンのレースフォーマット通り1日で予選・決勝が行われるワンデー開催となりました。
前日行われた第5戦では、2018シーズンシリーズチャンピオンの#5 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 山本尚貴選手がポール・トゥ・ウィンで今季初優勝を飾り、シリーズランキングでも2位の#20 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 平川亮選手に4ポイント差をつけてトップに浮上。
この第6戦は同じ鈴鹿サーキットでの連戦となるため、勢いに乗る山本選手がもし2連勝すると、最終戦を待たずにシリーズチャンピオンが決定してしまう最終戦前の天王山となり、前日からの流れに乗った山本選手が2年ぶりのシリーズチャンピオンを、得意とする鈴鹿で決めてしまうのか、それとも平川選手をはじめとするランキング上位陣がそれを阻止するのか、はたまた毎戦勝者が入れ替わる今シーズンにおいて、この第6戦でも新たなウィナーが誕生するのかに関心が集まりました。
その決勝を占う意味でとても重要な予選は、前日より5分遅れの10:15から行われました。気温13℃路面温度15℃と前日より若干温度は低いものの風がなく、穏やかなコンディションとなったこの日も、各マシンがタイヤウォーマーで温められたタイヤでセッション開始直後から果敢に攻めの走りを魅せます。
トラフィックを避けるため、今大会も10台ずつ2組に分かれて行われた予選Q1では、ドライバーズランキング4位、前日第5戦の予選ではフロントロー2番手を獲得した#16 TEAM MUGEN 野尻智紀選手がまさかの敗退を喫します。
Q1を突破した14台が出走するQ2ではランキング3位、ディフェンディングチャンピオンの #1 VANTELIN TEAM TOM’S ニック・キャシディ選手が前日更新されたコースレコード1分34秒533に迫るタイムでトップ通過。
2、3番手には今シーズンルーキーの #65 TCS NAKAJIMA RACING 大湯都史樹選手と#51 Buzz Racing with B-Max シャルル・ミレッシ選手が入り、若手がその速さを見せつけます。ここでは前日の大クラッシュでノーポイント、ランキング2位に後退した#20 平川選手がうまくまとめられず敗退してしまいました。
続くQ3ではポールポジションを賭けた戦いが更にヒートアップ。10分間の計測開始と同時にフレッシュタイヤでコースインしたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの2台、#6 福住仁嶺選手と#5 山本選手が計測序盤でいきなり1分34秒9を立て続けにマーク。その直後にはQ2で2番手に入った#65 大湯選手が、Q2でのキャシディ選手のタイムを上回る1分34秒755をマークし暫定トップに。
そのタイミングでコースインしていった#1 キャシディ選手は自己ベスト、そしてコースレコードを更新する1分34秒442を叩き出します! 残り時間3分を切ったところで各マシンが最後のタイムアタックに入っていきますがコースレコードを更新する事はできず、キャシディ選手が今シーズン初となるポールポジションを獲得。ここで3ポイントを追加します。
2番手にはQ2でも2番手に入った大湯選手、そして3番手には今シーズン代役ながらルーキーとしてフルシーズン参戦となった#15 TEAM MUGEN 笹原右京選手が前日のクラッシュから見事な復活を果たします。ただしマシン修復によるエンジン交換で10グリッドの降格となり、13番手からの決勝スタートとなりました。
●またも3度のSC導入で大荒れとなった決勝
日曜午後の昼下がり、第6戦決勝にはこのコロナ禍にもかかわらず12,500人の観客がサーキットに訪れ、気温16℃路面温度24℃、快晴のコンディションの中、定刻通り13:15に2周のフォーメーションラップから180km/30周で行われる決勝レースの火蓋が切られます。
この第6戦では通常100秒間利用できるオーバーテイクシステム(OTS)が今回に限り倍の200秒となったことで、各ドライバーは序盤から積極的にOTSを駆使しながらポジションアップを狙い、セカンドロー4番手スタートの#6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 福住選手がチームメイトの#5 山本選手を1コーナーで捕え3番手にポジションアップします。
後方では5列目からスタートの2台#19 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 関口雄飛選手と第2戦岡山で悲願の初優勝を遂げた#39 JMS P.MU/CERUMO・INGING 坪井翔選手がそれぞれ5番手と7番手までジャンプアップ、更に上位進出を狙います。
しかし2周目の日立オートモティブシステムズシケインで、世界耐久選手権WECで悲願のシリーズチャンピオンに輝きこのレースが凱旋レースとなった#7 carrozzeria Team KCMG 小林可夢偉選手と#4 KONDO RACING サッシャ・フェネストラズ選手が接触し、フェネストラズ選手のマシンは大破。このマシン撤去のためにセーフティカー(SC)が導入されます。
さらにこのSCラン中に4番手を走行していた#5 山本選手のマシンがスローダウン。ピットBOXにマシンを入れてしまい、そのままリタイヤとなってしまいました。
7周目にSCランが解除されると綺麗なリスタートで上位陣に順位の変動はなく、後方では1周目で12番手にポジションを上げていた#20 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 平川選手が上位陣の脱落によって9番手、ポイント圏内に入り、さらに8周目の1コーナーで前を走るライバルをかわし8番手までポジションを上げてきます。
ピットストップウィンドウが開く直前の9周目のホームストレートで、なんとトップを快走していた#1 VANTELIN TEAM TOM’S キャシディ選手のマシンが白煙を吹き、そのままコース脇にマシンを停めてしまいます。さらに同じタイミングでチームメイト#36 VANTELIN TEAM TOM’S 中嶋一貴選手も右リヤタイヤがバーストしてしまい、スロー走行。これによって2度目のSCが入り、11周目に#50 Buzz Racing with B-Max 松下信治選手と#16 TEAM MUGEN 笹原選手を除く全マシンがピットイン。ルーティンのタイヤ交換を済ませてコースに戻っていきます。
このピット作業では#19 関口選手と同時ピットインの#20 平川選手が1つポジションを落とし、17番手からスタートしSC前には10番手までポジションを上げてきていた#16 TEAM MUGEN 野尻選手が平川選手の直後に迫ってきました。13周目にSCランが解除された翌周にはその野尻選手がOTSを使い、130Rからシケインの間で前を走る平川選手と#3 KONDO RACING 山下健太選手を立て続けにオーバーテイク、実質8番手までポジションを上げます。
レースも後半戦に突入すると一旦膠着状態になります。前走車に近づきすぎるとダウンフォースが抜け、場合によってはタイヤを痛めてしまうこともあり、各マシン勝負所を探りつつ周回を重ねていきますが、19周目に実質4番手を走っていた#18 carrozzeria Team KCMG 国本雄資選手がS字コーナーで単独スピン。アウト側にマシンを停めてしまい3度目のSCが導入されます。
このSCでルーティンピットを行っていなかった#50 松下選手と#15 笹原選手がピットイン。完全に勝負権を失ってしまいました。
●ルーキードライバーが涙の初優勝!チャンピオンシップ争いは僅差で最終戦へ
SCランが23周目に解除されると、一つでもポジションを上げようと、至るところで激しいバトルが展開され、その中でもトップ争いをする2台は別格の速さで後続を引き離しつつ1秒以内でのバトルを繰り広げます。
そしてこの8周にわたるスプリントバトルは、#65 TCS NAKAJIMA RACING 大湯選手が#6 福住選手からの再三にわたるプレッシャーを跳ね除けミスなく走りきり、ルーキーイヤーで見事初表彰台を初優勝で飾りました!2位には#6 福住選手、そして3位にはベテランの域に達した#19 関口選手がこちらもそれぞれ今季初の表彰台獲得となりました。
ドライバーズランキングでは、土曜日の第5戦終了時点でランキングトップのDOCOMO TEAM DANDELION RACING 山本尚貴選手と3位のVANTELIN TEAM TOM’S ニック・キャシディ選手がリタイヤでノーポイント。7位入賞のITOCHU ENEX TEAM IMPUL 平川選手が4ポイントを獲得し山本選手と同ポイントながら1日でランキングトップに返り咲きました。
また5位入賞のTEAM MUGEN 野尻智紀選手も6ポイントを加算。総得点ではキャシディ選手に1ポイント及ばないものの、今シーズンのスーパーフォーミュラは新型コロナウイルス感染症による海外渡航制限に配慮し、全7レースのうち上位5レースでの有効ポイント制を採用しているため、有効ポイント47ポイントと1ポイント差でこちらもランキング3位に再浮上しました。
いよいよスーパーフォーミュラは12月19日~20日に行われる真冬の富士最終戦を残すのみとなりました。
今大会と同じくコンディション次第ではコースレコード更新の期待も高く、そしてなにより接戦となったドライバーズタイトル争いは寒さを感じさせないアツいバトルになること必至です!
(H@ty)
【関連記事】
超サバイバルレースとなったスーパーフォーミュラ第5戦。山本尚貴がポール・トゥ・ウィンで完全勝利!【スーパーフォーミュラ2020】
https://clicccar.com/2020/12/06/1040130/