超サバイバルレースとなったスーパーフォーミュラ第5戦。山本尚貴がポール・トゥ・ウィンで完全勝利!【スーパーフォーミュラ2020】

●スーパーGTからの流れを引きずるかのような、明暗分かれた予選

冬晴れとなった12月最初の週末、三重県は鈴鹿サーキットでスーパーフォーミュラ第5戦が開催されました。

この第5戦は新型コロナウイルス感染症の影響で、本来4月に行われる予定だった開幕戦の代替戦として行われたもので、5日にこの第5戦、そして翌6日にはJAF GRAND PRIXとして第6戦のそれぞれ予選・決勝が行われます。

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フリー走行でコースレコード、トップタイムをマークした平川亮選手

この第5戦開催に先立ち前日の4日には1時間×2回のフリー走行が行われ、第4戦終了時点でドライバーズランキングトップの#20 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 平川亮選手がトップタイム1’35.648をマーク。このタイムは非公式ながらスーパーフォーミュラでの鈴鹿サーキットのコースレコード1’35.907を上回っており、コンディション次第ではこの週末に3年ぶりとなるコースレコード更新の期待がかかりました。

ところが明けて5日の予選が始まる直前、その平川選手がマシントラブルによって予選に出走できないという、平川選手にとっても観戦しているファンにとっても残念なニュースが飛び込んできました。

平川選手にとっては、先週開催されたスーパーGTでの不運を引きずるかのような、非常に残念な予選となってしまいました。

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予選Q1A組でトップタイムをマークした山本尚貴選手

気温15℃路面温度16℃というコンディションの下、9:10から始まった予選Q1はA、B2組に分かれて10台ずつがコースイン、10分間で計測が行われます。今回は12月の開催ということで路面温度の低さやタイヤが温まりきらない事によるコースアウトの危険性などを考慮して、1995年以来25年ぶりにタイヤウォーマーの使用が認められました。

このため各マシン計測開始とともにコースインし、すでに熱の入ったタイヤでインラップからアグレッシブな走りを魅せます。そしてQ2に進出できる各組上位7台のうち、A組では6台B組では4台、全体ではエントリーの半数となる10台がコースレコードを更新するという、Q1から非常に激しい争いとなりました。

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35秒の壁を破った山本選手

Q1より走行台数の増えるQ2でも各マシンが温まったタイヤで計測開始からコースに飛び出していく中、Q1全体でトップタイムをマークした#5 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 山本尚貴選手が残り時間7分となったところで、先にコースインしたマシンが1回目のアタックを行ったりチェック走行後ピットに戻ったトラフィックの少ないタイミングでコースイン。

この戦略が奏功し、まるでトラックを貸し切ったかのような単独走行となった山本選手は、計測1周目であわや34秒台突入かという1’35.055をマーク。トップタイムでQ3に進出します。このQ2では全ドライバーがレコードタイムを更新し、コースレコードを更新してもQ3に進出できない大激戦となりました。また、Q3に進出した8台のうち6台がDOCOMO TEAM DANDELION RACING、TEAM MUGEN、TCS NAKAJIMA RACINGのHONDAエンジン搭載チームとなりました。

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35秒を切りフロントロー2番手スタートとなった野尻智紀選手

Q3が開始されるとQ2トップ通過の山本選手は一番ピットロード出口に近いピットというメリットを生かして先頭でコースイン。またも計測1周目でついに35秒の壁を破る1’34.749を叩き出します!

各マシン1度ピットに戻り、計測時間残り3分となったところで山本選手を含む全マシンがニュータイヤを装着して再びコースイン、最終ラップでアタックラップに入ります。すると前戦オートポリスでポール・トゥ・ウィンを飾った#16 TEAM MUGEN 野尻智紀選手が山本選手のタイムを上回る1’34.648をマーク。勝負ありかと思われた次の瞬間、山本選手が自己ベストを更新する1’34.533を叩き出し、HONDAエンジン同士のポールポジション争いを見事に制しました!

●スタート前から波乱の連続

コースレコード連発となった予選の熱も冷めやらぬ中、第5戦決勝が行われました。この第5戦、そして第6戦は、30周というスプリントレースとなり、今シーズン第2戦からのレースフォーマット通り給油なし、トップマシンが10周目に突入してからファイナルラップまでの間にタイヤ4輪交換が義務付けられています。

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スーパーフォーミュラ第5戦のスタート

スタート進行が始まり、全マシンがダミーグリッドにつくためにコースインしていくと、フロントロー2番手を獲得した16号車TEAM MUGEN 野尻選手のマシンがコース途中でエンジンストップしてしまいます。ホームストレートまで運ばれたマシンはメカニックに押され、2番グリッドまで運ばれますが、この時点で最後尾からのスタートとの裁定が下されます。

そして13:15に2周のフォーメーションラップがスタートすると、今度は10番手スタート#19 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 関口雄飛選手のマシンがストップ。コース脇にマシンを停めてしまいます。この後全マシンが一旦グリッドにマシンを並べますが、ここで再度2周のフォーメーションラップが行われ、決勝は2周減算の28周で行われることに。このフォーメーションラップでは、19番手スタートの#14 ROOKIE Racing 大嶋和也選手がピットロードにマシンを進め、ピットスタートとなります。

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SCが導入される

ここでやっと決勝レースがスタート。接触もなく、クリーンなスタートが切られると、ポールポジションの山本選手とそのチームメイト、3番グリッドからスタートした#6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 福住仁嶺選手がワンツー体制でレースをリードします。

しかしダンロップコーナーで予選5番手タイムをマークした #64 TCS NAKAJIMA RACING 牧野任祐選手がコースアウト。マシンをスポンジバリアに大きくヒットさせレースを終わらせてしまいます。この事故処理のため1周目からセーフティカー(SC)が導入され、このSCランは6周目に解除されました。このSCの鬱憤を晴らすかのように、先頭を走るDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの2台は後続をどんどん引き離していきますが、ピットストップウィンドウの開く10周目に福住選手が突如スローダウン。自力でピットまで戻りますがそのままリタイヤとなってしまいました。

●SCのタイミングも味方につける幸運

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2度目のSC

11周目から各マシン戦略が分かれ、徐々にタイヤ交換義務を消化するチームが出てきますが、1台の周回遅れをパスし、前がクリアな状態で周回を重ねる山本選手はレース中盤、タイヤ交換義務を済ませた中でのトップ#36 VANTELIN TEAM TOM’S 中嶋一貴選手に37秒以上のギャップを築き、レースも残り10周となった19周目にピットイン。素速いピット作業でタイヤ交換を済ませると中嶋選手の前でコースに戻ることに成功。

タイヤウォーマーで熱の入ったタイヤのおかげでアウトラップから快調に走行していきます。そしてちょうど山本選手がピットアウトしたタイミングで、今度は130Rで#50 Buzz Racing with B-Max 松下信治選手がコースアウト。ここでこのレース2度目のSCが導入されます。山本選手は間一髪のタイミングでピット作業を消化することができました。

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4ワイドで1コーナーに進入、接触してマシンにダメージを負った39号車

23周目にSCランが解除されレースがリスタートされると、タイヤの消耗が少ない山本選手は再び猛プッシュして後続を引き離していきますが、その翌周24周目に4番手争いをしていた4台がなんと4ワイドで1コーナーに進入!この意地と意地のぶつかり合いは超高速でマシンも接触し、そのうちの1台が宙を舞いながらスポンジバリアに激突してしまいます。

幸いドライバーは自力でマシンから脱出しますが、このクラッシュで2台がコースアウト、もう1台もマシンにダメージを負って自力でピットまで戻りますがリタイヤとなってしまいました。このクラッシュには最後尾からここまでポジションを上げてきていたドライバーズランキングトップの20号車ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 平川選手も絡んでおり、平川選手は前戦オートポリスに続いてノーポイントでこの第5戦を終えてしまいました。

●7台がリタイヤするサバイバルレースで5人目のウィナーが誕生。ランキングもトップに

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今シーズン初表彰台を獲得した中嶋一貴選手

このままSCランでレースが終了するかと思われた27周目、オフィシャルスタッフの迅速な復旧作業によってSCランが解除され、残り2ラップでの超接近バトルが勃発。各マシン残ったオーバーテイクシステムを駆使しますが順位変動はなく、参戦20台中1/3の7台がリタイヤとなったサバイバルレースで、ポールポジションからスタートした山本選手がポール・トゥ・ウィンという形で今シーズン初優勝となりました。

2位にはピット戦略が見事にハマった中嶋選手、3位には今シーズン徐々に調子を上げてきていた#18 carrozzeria Team KCMG 国本雄資選手が中嶋選手とともに今シーズン初表彰台を獲得しました。

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スーパーフォーミュラ第5戦の表彰式

この第5戦の結果を受けて優勝した山本選手は、ノーポイントとなった平川選手を抜き一気にドライバーズランキングトップに浮上。平川選手は4ポイント差でランキング2位をキープしますがランキング3位のディフェンディングチャンピオン #1 VANTELIN TEAM TOM’S ニック・キャシディ選手に5ポイント差、同4位の16号車 TEAM MUGEN 野尻選手にも9ポイント差に詰め寄られる事になりました。

翌6日には同じくここ鈴鹿サーキットでJAF GRAND PRIXとして第6戦が開催されます。果たして第6戦では6人目のウィナーが誕生するのか、それともランキング上位4人のうちの誰かが2勝目を挙げ最終戦に向けチャンピオンシップ争いを優位に進めることになるのか、混沌としてきた争いは予選から見逃せません!

(H@ty)