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●2021シーズンに向け新たな試みとなるピットビューイングも開催された最終戦
2020シーズンのスーパーGTを締めくくる最終戦「2020 AUTOBACS SUPER GT Round8 たかのこのホテル FUJI GT300km RACE」決勝が29日、静岡県は富士スピードウェイにて開催されました。
新型コロナウイルス感染症の影響によって開催スケジュールの遅延や変更、そして無観客での開催をはじめ、エントラントや我々報道陣の入場人数制限なども実施された2020シーズンのスーパーGTでしたが、ここまで一人の感染者も出さずに最終戦まで開催できたことは、ひとえにファンも含めた、スーパーGTに関わるすべての方々の努力や理解、協力があってこそだと思います。
こうしてここまでご尽力された方々に改めて敬意を表するとともに、無事に最終戦が開催された事に、いちモータースポーツファンとしては感謝と安堵の気持ちでいっぱいです。
決勝を前にサーキットでは、今シーズン参戦100戦を迎えたドライバーやスポンサーの表彰、そして例年夏の富士で行われている室屋選手によるスペシャルフライトが行われ、また、感染防止対策が施される中、コース上ではピットウォークならぬ「ピットビューイング」が行われ、2021シーズンに向けた新たなレース開催のカタチを垣間見る事ができました。
●序盤から激しいポジション争い勃発。チャンピオン候補が怒涛の追い上げを魅せる
参戦全15台中上位6チームが自力でのシリーズチャンピオン獲得の権利を残すという、近年稀に見る大接戦となった2020シーズンのGT500クラス。
サーキット全体が緊張感に包まれ、気温8℃、路面温度13℃と、前日行われた予選よりも低いコンディションの下、13:00ちょうどに当初の予定から1周増やした3周のフォーメーションラップを経て、いよいよシリーズチャンピオンが決まる決勝レースがスタート!
オープニングラップでは前戦もてぎでもウォームアップの早かったミシュランタイヤを履くランキング3位#23 MOTUL AUTECH GT-R ロニー・クインタレッリ選手が6番手スタートからダンロップコーナーで前を走る3台のGR Supraをごぼう抜き!一躍トップに躍り出ます。
その後方でも12番手スタート、ランキング2位の#17 KEIHIN NSX-GT ベルトラン・バゲット選手が7番手までジャンプアップ。3周目には6番手にポジションを上げ初のシリーズチャンピオン獲得に向け、序盤からアグレッシブに攻めの走りを魅せます。
そのまま後続を引き離したい23号車GT-Rクインタレッリ選手ですが、ブリヂストンタイヤ勢も本来のパフォーマンスを発揮し始め、6周目のTGRコーナーでGT300クラスの混戦を上手く使ったランキングトップ#37 KeePer TOM’S GR Supra 山下健太選手にオーバーテイクを許してしまいます。
トップに立った37号車GR Supra山下選手は2位以下とのギャップを広げ序盤から独走。その後方ではTOM’Sの僚友、ランキングで7ポイント差の#36 au TOM’S GR Supra サッシャ・フェネストラズ選手が11周目に23号車GT-Rクインタレッリ選手をパスし2番手に。
また、17号車NSX-GTバゲット選手と7番手スタート、ランキング4位の#100 RAYBRIG NSX-GT 牧野任祐選手も4番手争いをしながら23号車GT-Rとのギャップを縮め、14周目には100号車牧野選手が、そして16周目には17号車バゲット選手が立て続けに23号車GT-Rをオーバーテイク。前を走る2台のGR Supraを追いかけます。
そして更に13番手スタート、ランキング6位で自力チャンピオンの可能性を残している#14 WAKO’S 4CR GR Supra 大嶋和也選手も17周目までに5番手までポジションを上げ、優勝争いに加わってきます。
●GR SupraとNSX-GTの一騎打ちに
当初の予定より1周減算となり、65周で行われた決勝。ピットストップウィンドウの開いた21周目には100号車NSX-GT牧野選手がダンロップコーナーで36号車GR Supraフェネストラズ選手をオーバーテイクし2番手に。16秒前を走る37号車GR Supraに照準を合わせるとその直後の23周目にピットインし山本尚貴選手にステアリングを託します。
この周では上位陣では17号車NSX-GTと14号車GR Supraもピットイン。14号車はGT500ではなかなか見られないタイヤ無交換作戦を決行し、2台のNSX-GTの前でコースに復帰します。そしてその翌周にはトップを快走していた37号車GR Supra山下選手もピットイン。
各チームセーフティカー導入のリスクを嫌ってか、上位陣は早めのルーティンピットで残り40周+αのレースディスタンスに臨みます。
タイヤ無交換という賭けに出た14号車GR Supra坪井翔選手は25周目、まだタイヤの温まりきらない37号車GR Supra平川亮選手を難なくオーバーテイクし、13番手からトップに立ちますが、27周目にはその平川選手に抜き返されて2番手に後退。その後37号車GR Supraはグングンと後続との差を広げていきます。
その後方では100号車NSX-GT山本選手が37号車GR Supra関口選手をオーバーテイクし、この2台の激しい3番手争いは31周目には14号車GR Supraを巻き込んでの2番手争いに発展。しかしTGRコーナーの進入で2台のGR Supraが接触した隙をついた100号車NSX-GTが2番手に浮上します。この接触で14号車はフロントカウルにダメージを負い、2度目のピットイン。ここでタイヤ交換も行いコースに復帰しますが最終的にはリタイヤとなってしまいました。
●まさかのノーパワー。ファイナルラップの最終コーナーで失速。そして…
レースも終盤に差し掛かった44周目には37号車GR Supra平川選手に16秒以上のマージンを築かれた100号車NSX-GT山本選手ですが、10周以上に渡って2番手争いを演じた36号車GR Supra関口選手を徐々に引き離し、2シーズンぶりのシリーズチャンピオンに向け残り1/3のレースディスタンスをフルプッシュ。その諦めない走りで残り12周となった53周目には10秒以上あったトップとのギャップを徐々に削っていき、残り4周となった61周目には3秒を切ります。
しかしここで37号車GR Supra平川選手もペースアップ。2秒のマージンを保ったまま盤石の体制でファイナルラップに突入した37号車平川選手の駆るGR Supraは、最終コーナーでまさかの失速!
数百メートル先のチェッカーフラッグを目前にして100号車山本選手のNSX-GTになす術なく抜かれてしまい、99%手中におさめていた3シーズンぶりのシリーズチャンピオンは、まるで手の平から溢れる砂のように消えてしまいました。
こうしてトップに立った100号車NSX-GT山本選手がトップチェッカーを受け今シーズン初優勝、そしてジェンソン・バトン選手を擁した2018年以来2年ぶりのシリーズチャンピオンを、このレースが最後となったRAYBRIGカラーでの100号車NSX-GTで有終の美を飾るという最高の形で勝ち取りました!
GT500クラス初優勝となった牧野選手は歓喜の男泣き、それとは対照的に2度目のシリーズチャンピオンを獲得した山本選手は最高の笑顔で喜びを爆発させました。
2位には37号車GR Supraが入りシリーズ2位、そして決勝を4位でフィニッシュした17号車NSX-GTがシリーズ3位となり、決勝で3位表彰台を獲得した36号車GR Supraはシリーズ4位という結果となりました。
こうして新型コロナウイルス感染症に翻弄された2020シーズンのスーパーGTは劇的なエンディングで幕を閉じることになりました。
果たして来シーズンはどんな闘いが待っているのか、GTAの坂東代表の「来年はきっちり全8戦を、五感を震わせるようなレースを、スタンドを満タンにしてやります」という言葉を信じ、筆者も期待に胸を膨らませながら5ヶ月後の開幕を楽しみに待ちたいと思います。
(写真:吉見幸夫、松永和浩、GTA 文:H@ty)
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