■GMが2025年までのEVおよび電動自律走行車への総投資額を270億ドルに増額することを発表
GM(ゼネラルモーターズ)が開発している「アルティウム」テクノロジーは、EV専用プラットフォームとそこに使われる高性能・低コストの新型バッテリーを軸としたもので、燃料電池領域を含めてホンダとコラボレーションしていくことも発表されています。
また、ハマーEVやキャデラック・リリックといった「アルティウム」テクノロジーによる新型モデルの情報も公開されています。
今回、2025年までのGMの考えるZEV(ゼロエミッションビークル≒排ガスを出さないクルマ)ロードマップが発表されました。
その内容は実に意欲的で、新型「アルティウム」バッテリーを搭載した電気自動車の性能は一充電で450マイル(約720km)も走れるというもの。さらに車両コストもガソリンエンジン車並みにするといいます。
ZEVは高いものではなく、手の届くモデルとなり、そしてエンジン車から主役の座を奪うという近未来は2025年、もう目の前というわけです。
GMの会長兼CEOであるメアリー・バーラ氏は『2020年代の半ばまでに、グローバルマーケットにおいて完全電動化モデルを30車種投入する』と発表しました。
そして、2025年末までにアメリカにおける同社ラインアップの40%を「アルティウム」バッテリーを搭載した電気自動車(EV)にする予定ということも明らかとなりました。
そのために、GMは2025年までのEVおよび電動自立走行車(AV)への総投資額を新型コロナウイルスの大流行以前に計画した200億ドルから270億ドルに引き上げることも発表しています。これはガソリン・ディーゼル車の開発費を上回るもので、企業としての電動化シフトへ加速するという強い意志が感じられます。
すぐにエンジン車がなくなるというわけではないでしょうが、そう遠くない将来にGMのラインナップからエンジン車が消えてしまうかもしれません。
その「アルティウム」バッテリーは誕生したばかりですから、まだまだ進化する余地を残していることは容易に想像できますが、第二世代アルティウムバッテリーについての情報もアナウンスされました。
2020年代半ばにローンチ予定の第二世代アルティウムでは、コストが60%低減、エネルギー密度は2倍になる見込みだといいます。それにより、バッテリーセルの価格はガソリンエンジン並みに下げることができるというのです。バッテリーの性能アップとコストダウンというのはGMの次世代モデル全般の大きなアドバンテージとなりそうです。
第二世代アルティウムにおいては高価な材料の使用量を減らすという設計面での進化だけでなく、LG化学との合弁企業であるバッテリーの生産工場の効率の改善、バッテリーパック設計での工夫といった自動車メーカーらしいコストダウンの積み重ねも行なうことが発表されています。
こうした電動化シフトを後押ししているのは、それが株価の上昇につながるという要素があるからともいえます。自動車業界の巨人であるGMが、いわゆるオワコン企業ではなく、イノベーション企業として認識されることで投資家からの評価は上がりますし、GMが将来的な全電動化を宣言することは、株主の利益にもつながるというわけです。
それはさておき、GMの「アルティウム」テクノロジーの進化は、冒頭で書いたようにZEV領域においてコラボレーションしているホンダの未来にも関わってきます。
「アルティウム」バッテリーのコストダウンや量産性の改善といったポイントは、ホンダの生み出す電動化車両においてもプラスの要素となることは間違いありません。それがホンダのZEVロードマップにどのような影響を与えるのか、ホンダもGMと同じスピードで全社的な電動化を加速させるのか、そういった点も気になります。
(自動車コラムニスト・山本晋也)