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■高速道路には「暗黙のルール」もある
運転免許を取る際には、教習所などで道路交通法や運転時のルールについて学びますが、実際に道路に出てみると、今まで知らなかった、いわば暗黙のルールもたくさん存在します。しかも、知らないことで事故の原因になったり、悪質なドライバーにあおられるきっかけとなることや、逆に自分が危険運転をしたと疑われることもあります。
また、法律で定められているけれど、意外と知られていない(守られていない)ルールも数多くあり、場合によっては違反切符を切られてしまうことだってあります。
ここでは、そういったルールの中でも、特に高速道路にまつわるものをいくつか紹介しましょう。
●NG行為1:ブレーキを踏みながら車線変更
複数の車線がある高速道路で、比較的よくやるのが車線変更。基本的には、入ろうとする車線を走るクルマの動きを見ながら、タイミングよく滑り込むような感じで入るとスムーズにできます。
ところが、中には変更前の車線で勢いよく加速し、車線変更時にはブレーキをかけて減速しながら入るドライバーもいます。
こういった行為は、変更した車線側にいるクルマにとって、ブレーキランプを点灯させながら急に前へクルマが入ってくることになり、あまり気持ちがいいものではありません。場合によっては危険な運転とみなされたり、「あおり運転」ととらえられることもあります。
これは、高速道路に限らず、一般道でも同じ。車線変更はほかのクルマの間に入っていくのですから、隣の車線へ早く移りたいと焦り、急な車線変更をするのは御法度。ひとつ間違うと事故になる危険さえあります。あくまでスムーズに、変更した車線を走るクルマの流れを乱さないことがルールなのです。
ただし、緊急車両が後方から来たときなどには、ブレーキを踏みながら隣の車線へ移動することもあります。そういったやむを得ない場合は、後続車のペースを考慮しながら加速し、交通の流れを乱さないように心掛けましょう。
車線変更のコツは、よく「3秒かけてゆっくり行う」といわれます。ゆっくりと「1、2、3」と数えながら、余裕を持ってタイミングよく入ることが重要なのです。
●NG行為2:合流車線の手前で入る
高速道路や自動車専用道路の合流車線でよく見かけるのが、急いで手前から入るクルマ。気がはやるためなのか、特に渋滞時に多いのですが、実はこういった入り方はさらに渋滞を悪化させる原因にもなります。
合流車線の終わりはまだまだ先なのに、手前で合流してしまうと、無駄にスペースができることで後続車の列ができるなど、スムーズな合流を妨げるためです。
渋滞している高速道路などでは、できるだけ合流車線の先まで進み、1台ずつ交互に規則正しく本線に入ることがおすすめ。これは、洋服のファスナーを閉める時に似ているということで「ファスナー合流」と呼ばれている方式です。
NEXCO中日本では、名神高速道路と東海北陸自動車道が接続する一宮ジャンクションなどの合流対策としてこれを採用し、一定の効果を生んでいるといいます。
●NG行為3:追い越し車線を走り続ける
次は、実際に道路交通法で違反行為とされているのに、実際はよく見かける行為を紹介します。
まずは、3車線以上ある高速道路や自動車専用道路などで、一番右側の車線、通称「追い越し車線」をずっと走り続けるクルマ。この行為は、法律上「通行帯違反」に該当します。
道路交通法の第二十条一号の規定によると、3車線以上の道路では、一番右の車線は原則として走ってはいけないことになっており、一番左か中央の車線を走行するように定められています。
ただし、同法の第二十条三号により、緊急車両などに道を譲る時や、追い越しをするときで交通状況によりやむを得ない場合は、一番右の車線(追い越し車線)を走行できるとしています。
つまり、追い越し車線を正当な理由がないのに走り続けるのは、違反行為なのです。
実際に、筆者の知り合いにも、高速道路の通行帯違反で取り締まりを受け、違反切符を切られた人がいます(違反点数1点、反則金は普通車の場合で6000円)。
よく、追い越し車線は「2kmまでは走っても大丈夫」といった説も聞きます。ですが、実際には2km未満でも取り締まりを受けた事例もあるようなので、都市伝説のようなものでしょう。逆に、ビッシリと3車線が埋まる酷い渋滞時に追い越し車線を通行しても、取り締まりを受けることはないようです。
ともあれ、3車線ある道路では、一番右の車線は、やむを得ない場合を除き、追い越し時のみ走り、追い越しが終了したらすぐに元の車線に戻るのがルールなのです。
●NG行為4:追いつかれてから加速する
ノロノロと遅い速度で走っていたクルマが、後続車に追い越しをされようとしたら、急に加速して追い越しを邪魔する行為も法律違反です。これは、道路交通法の第二十七条に規定があります。
要約すると、「追い越されようとしているクルマは、追いついたクルマが追い越しを終えるまで速度を増してはいけない」と定められています。つまり、追いつかれたクルマにも義務があるのです。
この義務に違反すると、違反点数1点、反則金6000円(普通車の場合)といった罰則もあります。
ちなみに、一般道の一車線しかない道路では、追いつかれたクルマはできるだけ左端に寄って、追い抜くクルマに道を譲ることも義務として定められています。
●NG行為5:最低速度以下で走る
高速道路の違反で多いのが最高速度違反ですが、あまりにも低い速度で走行することも「最低速度違反」となります。
基本的に、高速道路の最低速度は50km/hと定められていますので、それ以下で走ることも取り締まりの対象になります。ただし、これは速度指定のない区間に限ったもので、標識や標示によって速度が指定されているところでは、それに準じる必要があります。
なお、最低速度違反の罰則は、違反点数1点、反則金6000円(普通車の場合)です。
●NG行為6:故障で路肩停車時に車内に残る
クルマの故障などといったトラブルで、路側帯にやむを得ずクルマを停車させる場合は、必ず次のルールを守らなければなりません。
ハザードランプを点灯して、できるかぎり路肩に停車。ギアをパーキングに入れ、サイドブレーキを引いて完全にクルマを停止後、三角表示板を後続車から見えるように50m以上後方に設置します。
また、衝突などの二次災害を防ぐために、発煙筒などを使い後続車に非常停止車両があることを知らせることも重要です。
停車時は、クルマのハンドルは左いっぱいに切っておくといいでしょう。これは、後続車が追突してきたときや、ブレーキが甘くクルマが動いたときなどに、本線上にクルマが飛び出してしまうことを防ぐためです。
さらに、ロードサービスなどを呼んで待機するときは、絶対にクルマの中には残らないようにしましょう。他のクルマが突っ込んできたら、命を落とす可能性があるからです。
また、車内以外でも、クルマ周辺の路肩などにいることも避け、ガードレールの外側などできるだけ安全な場所に避難することが重要です。
実際に、筆者の知人で、クルマ関連の事業をしている方から聞いた話です。その方のお客様で、ある若いクルマ好きのドライバーが高速度道路で路肩に停車中、大型トラックに追突され死亡されたという、痛ましい事故があったそうです。
その若者は、夜間に高速道路を走行中にクルマがガス欠になり、やむを得ず路肩に停車。ロードサービスを待っている間、クルマのすぐ後方にいたため、居眠り運転をしていた大型トラックにクルマごと跳ねられてしまったのだそうです。
クルマは壊れても買えば済みますが、命は戻ってきません。こういった悲しい事故が起こらないように、まさかのトラブル時でも慌てずに、冷静な行動を取るようにしましょう。
(文:平塚 直樹 *画像は全てイメージです)