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■発熱量が大きい高出力エンジンは、オイルクーラーを装着してオイル温度を低減
●自動車は水冷、走行風を利用しやすいバイクはシンプルな空冷インタークーラーを採用
エンジンオイルは、摩擦で高温になる摺動部を潤滑するので温度が上昇します。オイル温度が上がりすぎると潤滑性や冷却性が悪化しオイルの劣化が進むため、発熱量が大きい高出力エンジンにはオイルクーラーが搭載されています。
エンジンオイルを適正な温度に維持するオイルクーラーについて、解説していきます。
●出力とともに温度が上がるエンジンオイル
エンジンの燃焼による発熱量の60%以上は、排ガスや燃焼室、シリンダー壁面などから熱として放出されます。そのため、エンジンの出力が上がれば上がるほどエンジン内部を循環するオイルの温度は上昇します。
エンジンオイルは、80~100℃で性能を発揮するように調合されているので、オイル温度が上がり過ぎると潤滑性や冷却性が低下して、燃費や性能が悪化します。さらにオイル自体の劣化も加速し、最悪の場合は摺動部の潤滑不良によって焼き付きを起こします。
オイルの冷却は、通常はエンジン下部のオイルパンやオイルタンクに走行風を当てることで行います。そのため、発熱量の多い高出力エンジンや長時間の高速巡行などでは冷却が間に合わず、オイル温度が許容温度を超えるリスクが発生します。
●オイルクーラーの必要性
自動車の過給エンジンや高出力エンジンでは、オイル温度が上がりやすいのでオイルクーラーを搭載しています。
バイクでも、オイル温度が上がりやすい空冷エンジンでは、多くのモデルでオイルクーラーを搭載しています。また水冷エンジンでも、高出力の高性能モデルやスポーツモデルのようなバイクには、オイルクーラーが搭載されています。
オイルクーラーには、ラジエターと同じような構造の積層多板式が主流ですが、チューブタイプの多管式もあります。また冷却方法には、エンジン冷却水を利用する水冷式と走行風を利用する空冷式があります。
●水冷式オイルクーラー
水冷式は、ウォータージャケットで覆われたクーラーコアの中をオイルが循環する構造です。ウォータ-ジャケット内はエンジン冷却水が循環しており、オイルの熱は冷却水に放出されます。
水冷式では、冷却水の温度以下にオイルが冷却されることがないため、オーバークール(冷やし過ぎ)の心配はありません。また空冷式より効率が優れるため、同じ放熱量で比べれば本体がコンパクトにできます。コンパクトで安定した冷却性能が確保できるので、高性能のスーパースポーツモデルなどで採用されています。
一方で、冷却水を使うため配管系が複雑になる、高温域の冷却能力が低いという課題があります。
●空冷式オイルクーラー
エンジン水温冷却用のラジエーターと同じクーラーコアを、エンジンとフロントフォークの間など走行風が当たりやすい場所に搭載して、走行風でクーラーコア内を循環するオイルを冷却します。
水冷式に比べて構成がシンプルで高速域での冷却能力が高いので、高速で長距離走行するツアラーなどは、空冷式を搭載しています。
しかし、走行風を利用するために渋滞走行や街乗りでは効果が得にくいという課題があります。また、運転条件によってはオーバークールになりやすいため、サーモスタットを使ってオイルクーラーをバイパスさせるような流路制御を採用している例もあります。
大排気量や高性能バイクには、エンジンオイルを冷却するオイルクーラーが必要です。水冷と空冷方式には、それぞれ一長一短がありますが、自動車は安定した性能が維持できる水冷インタークーラー、バイクはシンプルで走行風が利用しやすい空冷インタークーラーが適しています。
(Mr.ソラン)