■14秒で開閉するリトラクタブルハードトップを採用
フェラーリは、2020年11月12日(イタリア現地時間)、同ブランド初のPHVであるSF90 Stradale(SF90 ストラダーレ)のスパイダーバージョンであるSF90 Spider(SF90 スパイダー)を初公開しました。
ボディサイズは全長4704×全幅1973×全高1191mm。リトラクタブルハードトップ(RHT)を採用する同モデルは、オープン初のPHVでもあります。エクステリアは、RHTの採用によりボディ表面の意匠が見直され、トノカバーをクーペのBピラーと滑らかに融合させて、オリジナルのスタイリングテーマが継承されています。パッセンジャー側のヘッドレスト後方のバットレスは、フェラーリ・スパイダーであり、これもボディパネルの下の構造部から隆起してきたかのように調和しています。
フェラーリ独自のPHTは最新バージョンになり、走りの楽しさと開放感、高い実用性を備えています。RHTを展開するとノイズを遮断して風雨から守り、高速走行中も変形せず、高い快適性を提供するとしています。軽量、コンパクトかつシンプルな設計になっており、開閉に要する時間は14秒で走行中も作動。フェラーリのRHTは、2011年の458 スパイダーで初めて登場して以来、進化しています。
一般的に、可動ルーフの格納に150~200Lを必要とする格納スペースがわずか100Lで済むのが特徴です。また、構造部がアルミニウム製のため、一般的なリトラクタブルハードトップより約40kg軽量化されています。さらに、調整可能な電動リヤウィンドウにより、オープンでの高速走行中も、高い快適性が担保されるとしています。
また、SF90ストラダーレと同様、多彩なオプション仕様を設定。「Assetto Fiorano パック」は、標準仕様とは大きく異なる専用アップグレードが含まれています。マルチマチック・ショックアブゾーバーは、GTレースでのノウハウがフィードバックされたもので、サーキット走行に最適化されたダンパーになっています。さらに、高性能素材(カーボンファイ バーやチタンなど)が採用され、軽量を誇るリヤスポイラーはカーボンファイバー製。タイヤは公道走行も可能なミシュラン製「パイロット・スポーツ・カップ2」になり、コンパウンドを柔らかくし、溝を減らしてサーキットのドライ路面でのパフォーマンスを向上。
「Assetto Fiorano パック」には、2トーンの特別塗装もオプションで設定されています。サーキット仕様であることをさらに強調できます。エンジンと組み合わせて、フロントには「RAC-e(コーナリング・アングル・レギュレーター-エレクトリック)」システムの一部である2つのモーターを搭載。
リヤモーターには、フェラーリのF1マシンで開発され、そこから命名された「MGUK(モーター・ジェネレーター・ユニット、キネティック)が搭載されています。ストラダーレと同様に、エンジンとモーターは最大で合計1,000cvの出力を発生します。パワートレーンは、4.0L V8ターボエンジンに、「E-diff」を備える8速DCT、電気のみの推進も可能な2個の独立モーターを備える「RAC-e」電動フロントアクスル、リヤのエンジンとギアボックスの間に搭載された「MGUK」モーター、高電圧バッテリー、モーター制御システム(インバーター)から構成されています。
トルク伝達も複数の方式があります。アクセルペダルによるドライバーのインプットをエンジン制御システムとハイブリッド制御システムが処理し、電子制御システムが常時モニターしています。「電動モード」はフロントアクスルが駆動(FWDモード)、「ハイブリッド・モード」はエンジンとMGUKモーターが駆動(RWDモード)、 「4WDハイブリッド・モード」は、電動フロントアクスルがオンデマンドで稼働し、コーナー立ち上がりでは必要に応じてトラクションを発生、リフトオフとブレーキング時にはエネルギーを回生。
もちろん回生ブレーキも採用されています。ブレーキのモードは、「回生ブレーキ」時は、通常のブレーキング時、ABS がオンの場合に前後アクスルで稼働。「オーバーブレーキ」時は、アクセルペダルを戻すと前後アクスルで稼働 し、フロントは左右で個別に管理されます。「ICE リチャージ」はリヤの「MGUK」モーターとエンジンとの負荷点シフトによりバッテリーを充電する機能です。走行モードは複数あり、「eDrive」はエンジンは停止したままで、駆動力はすべて電動フロントアクスルが担います。
フル充電のバッテリー(容量 7.9 kWh)でスタートすると、このモードで最長25kmを走行できるため、市街地での走行のほか、早朝深夜の住宅街など、フェラーリV8のサウンドを消したい状況でも重宝しそう。最高速度は135km/hなので、郊外の道路でも活用できます。
「Hybrid」は、システムの全体的な効率を最適化するセッティングです。エンジンを稼働するか停止するかは、制御ロジックが自動で決定。モーターからのパワーフローは、バッテリーのパワーを温存するよう制限されます。
「Performance」は、同モードではエンジンが稼働し続けます。効率よりバッテリーの充電を優先するためで、これによって必要なときに瞬時にフルパワーを発揮。
「Qualify」モードでは、モーターを最大能力(162kW)で稼働させて、最高出力をすべて解き放ちます。制御ロジックはバッテリーの充電より最大パフォーマンスを優先するモードです。なお、最高速は340km/hで、0-100km/h加速は2.5秒です。
(塚田 勝弘)