■企業存続にはマツダ独自の価値が必須。この先2年での技術投資を発表
マツダが2021年3月期の第2四半期決算を発表、そのプレゼンテーション資料において非常に興味深い情報を公開しています。
まず、第2四半期累計である上期の内容としては、グローバル販売台数57万8千台(対前年比21%減)、連結出荷台数36万8千台(同41%減)。売上高1兆1158億円(同35%減)、売上損失529億円、当期純損失930億円というもの。コロナ禍において非常に厳しい状況で、中間配当も見送りと発表されました。
とはいえ、第1四半期に対して第2四半期の数字は回復傾向が見られます。四半期ごとのグローバル販売を見ても、第1四半期では24万4千台でしたが、第2四半期では33万4千台となっていることからも明らかです。ちなみに、同じく第1四半期の売上高は3767億円で営業損失は453億円でしたが、第2四半期では売上高が7391億円となり、営業損失は76億円と赤字を大きく減らしています。
というわけで、対前年で見るとまだまだ復活というのはほど遠い状況ですが、明るい兆しは見えてきているといえるでしょう。
さて、ここからが本題です。今回の第2四半期決算のプレゼンテーション資料の後半では、そうした明るい未来への期待が高まる情報が公開されました。
それが『ブランド価値向上への投資(技術/商品)』というテーマで発表されたもので、そこにはこの先2年を足場固めの時期と捉え、次に示す3つの要素についての投資が語られていたのです。
● 制御技術による継続的商品改良、ハードウェアUpdate
● Large商品用ハードウェア(高出力/低CO2)
● ロータリーエンジン技術を使ったマルチ電動化技術
それぞれ、具体的な技術テーマも公開されました。
“制御技術による継続的商品改良、ハードウェアUpdate”については、マツダ独自のコネクティビティシステムである「マツダ コネクト」が「マツダコネクト2」へとアップデートされることが明らかになっています。さらに、SKYACTIV-XやSKYACTIV-Dの制御プログラムのアップデートや、先進運転支援システムのアップデートを実施することも発表されました。
このようなプログラムアップデートで商品性を維持できるとなれば、マツダ車の価値が維持され、いわゆるリセールバリューを高めることが期待できます。まさにユーザーメリットであり、ブランディングにつながる施策といえます。
それよりも注目したいのが、“Large商品用ハードウェア(高出力/低CO2)”でしょう。この項目では、① 縦置きアーキテクチャー、② パワートレイン 直列6気筒エンジン(ガソリン/ディーゼル/X)/AWD、③ 電動化 プラグインハイブリッド/48Vマイルドハイブリッド という3要素が記載され、さらに直列6気筒エンジンと直列4気筒エンジンを使ったプラグインハイブリッドの写真が公開されました。
それが冒頭に示したものです。6気筒エンジンの横に置かれたヘッドの画像から推定すると向かって左にあるのがガソリンエンジンで、右側がディーゼルエンジン。そして中央のプラグインハイブリッドシステムは薄型のシングルモーターと多段ミッションを組み合わせているように見えます。
なお、“ロータリーエンジン技術を使ったマルチ電動化技術”というのは、小型ロータリーエンジンを利用したレンジエクステンダーEVのことで、すでにMX-30に関連して公開されていますから、マツダのファンであれば既知の情報という方が多いのではないでしょうか。
いずれにしても前々から噂になっていたガソリンとディーゼルという2種類の直列6気筒エンジンの開発が進んでいるというのは間違いのない事実というわけですし、それが2年内に市販につながると発表されました。ダウンサイジングが進む時代において、いまさら6気筒エンジンを開発するというのはマツダの企業規模を考えると非常にチャレンジングといえますが、だからこそ差別化になり、ブランド価値につながる投資になるという風にもいえます。
公開されている写真では、エンジンに対して十分に巨大な排ガス処理装置らしきものや、オイルパンを貫通するフロント駆動系が確認できます。
はたして、FRベースのAWDが実現するハンドリングは、マツダのブランド価値をどのように高めることができるのでしょうか。大いに期待しましょう。
(山本晋也)