■先進運転支援システムの標準装備化などブラッシュアップ。特別仕様車「BLACK LIMITED」は継続販売
グローバルでの累計販売台数は約26万台、世界でもっとも売れているプラグインハイブリッドといえる三菱自動車のアウトランダーPHEVが商品改良を発表しました。
機能面での進化ポイントは、これまで上級グレードだけに装備されていた後側方車両検知警報システム(レーンチェンジアシスト機能付)[BSW/LCA]と後退時車両検知警報システム[RCTA]を全グレードに標準装備したこと。また、法規対応により、車両接近通報OFFスイッチの廃止と通報音の音量・音質を最適化しています。
あわせてグレード構成を見直しています。従来はエントリーグレードとして用意していた「G LIMITED EDITION」が廃止され、「S Edition」「G Premium Package」「G Plus Package」「G」の全4グレード展開に見直されています。これによりメーカー希望小売価格帯は、436万4800円~529万4300円(消費税込)となりました。
また、特別仕様車の「BLACK Edition」(メーカー希望小売価格:446万8200円)を継続販売することも発表されています。
それ以外の目立った変更はなく、スタイリングもそのままのようですし、2.4Lエンジンと発電用モーター、前後の駆動モーターといったメカニズムも変わっていません。安全装備の充実とグレード整理といった内容といえます。
とはいえ、アウトランダーPHEVのグレード整理には、2020年12月に発売開始となる三菱自動車として2番目のプラグインハイブリッド車「エクリプスクロスPHEV」と関係ありと考えるのが妥当でしょう。
まだ正式発表前ということで正確なメーカー希望小売価格は発表されていませんが、エクリプスクロスPHEVの価格帯は約385万円~約450万円とアナウンスされています。
今回、アウトランダーPHEVの一部改良によってカタログから落ちた「G LIMITED EDITION」の価格は393万9100円でしたので、車格が異なるエクリプスクロスPHEVとアウトランダーPHEVのスターティングプライスが意外に近いというか、価格帯がそれなりに被っているという印象もありました。
しかし、今回の改良によって廉価グレードがカタログ落ちしたことで、車格と価格の違いが明確になり、アウトランダーPHEVとエクリプスクロスPHEVのポジショニングがはっきり見えてきたという印象を受けます。
そして、アウトランダーPHEVにはCEV(クリーンエネルギー自動車導入事業費)補助金が交付されますが、その金額は22万円となっています。条件を考えると、エクリプスクロスPHEVも同額の補助金が期待できます。
ちなみにWLTCモードのEV走行換算距離は57.3kmで、アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEVとも同スペック。ハイブリッド燃費についてもWLTCモードで16.4km/Lと両モデルで共通です(各モードの数値は微妙に異なります)。このように、車格の違いが燃費・電費の違いにつながってはいない印象もあります。
それはさておき、ルノー・日産・三菱自アライアンスにおいて、三菱自動車はプラグインハイブリッドSUVの開発を担当すると発表されています。すなわち、アウトランダーやエクリプスクロスの採用しているPHEVシステムはこれで終わりというわけではなく、今後も進化するということです。
次世代モデルではバッテリーの搭載を考慮してプラットフォームも大きく変わるのでしょうが、エンジン熱効率の改善やモーター駆動を利用したハンドリングの改善など、三菱自動車の経験を活かしたプラグインハイブリッドとして成長することを期待したいと思うのです。
(自動車コラムニスト・山本 晋也)