切り子のようにきらめく光の変化を。新型プジョー2008のクラフト的なデザインとは?

■最新BセグSUV・2008に宿る、208的デザインテイスト

9月16日、Groupe PSA Japanは、新たなBセグメントのコンパクトSUVとして新型2008を発売しました。新しい208から間を置かずに送り出されたこのSUVのデザインの特徴はどこにあるのか。さっそく検証してみたいと思います。

●基本シルエットは正当派SUV

2008・メイン
正統派SUVフォルムに最新のプジョーデザインが施されている

全長4305mm、全幅1770mmのボディは、日本市場でのBクラスの概念を少なからず超えるサイズですが、それでも全高が1550mmに抑えられているのがコンパクトSUVと呼ばれる理由のひとつであり、クーペを連想させるプロポーションを成立させていると言えそうです。

ウインドシールドを後ろへ引き、「クルマ」らしくボンネットの伸びやかさを表現したのは先行した208と同じ。ただ、水平基調のフードによってボディ前半はかなりのボリューム感を持ち、見る角度によっては「頭デッカチ」に感じるかもしれません。

フタ状のフードは、両サイドこそ高さを持たせていますが、内側に向けては凹面とされ、そのボリューム感の低減に効いていそうです。また、208と異なり、先端に切れ目がない分、フード全体がスッキリとしています。

2008・フロント
ブラックでまとめたグリルと凹面のフードが特徴のフロントビュー

フロントグリルは大型ですが、よく見るとわずかに凹面となっていて必要以上の圧迫感を避けています。また、グリル上面のモールはシルバーではなくグリルに合わせてブラックとされ、要所を黒で引き締めるボディ全体のテーマに倣っています。

●チャレンジングなサイド面

ボディサイドはリアに駆け上がるベルトラインと、ショルダーライン前後でY字形に引かれたキャラクターラインが特長です。

ブラックアウトされたピラーでリアへ抜けるクーペ調のグラフィックは、Bセグメントらしいカジュアルな軽快感を表現。ここは日産車のキックアップピラーに似た表情でもありますが、ボディパネルがリアウインドウまで延びている点が異なります。

2008・サイド
駆け上がるベルトラインが軽快なサイドビュー

一方、ファセット(切り子)と呼ばれる大胆な面構成を作る、Y字形のキャラクターラインはこのクルマ最大の特徴です。豊かなショルダーラインを消してまで引かれたこのラインの意図は? そこでサイド面を近くで見ると、このY字ラインによって扇状に平面ができ、それにより前後フェンダーの張りが強調されているようにも見えます。

ただ、実はリアパネルでも、特徴的なブラックバンドのすぐ下に同様の(左右に向けた)Y字ラインが引かれていることに気付きます。となると、新型2008はボディの豊かな曲面と、そこに引かれた直線的なY字ライン、それにより表出する平面。この3者の組み合わせによるサーフェスの変化に新しさを求めているのかもしれません。

2008・リア
リアにも切り子的な面構成が施されている

ごく最近、欧州勢ではメルセデス・ベンツが非常にシンプルなボディ面に移行している一方、アウディやプジョーは面にスパイスを加える傾向が感じられます。

サーフェスへの細工は「表面的」と評されがちですが、この2008では角度により光が大きく動くような、宝石のカットにも似たクラフト的アプローチに挑んでいるように思えます。

これは新しい508や208とも若干異なる試行ですから、その本当の狙いについてはもうしばらく時間をかけて見守るべきかもしれません。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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