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■2ストロークの魅力的なエンジン音と排気音は、徐々に市場から消える運命か
●2ストロークはエンジン1回転に1回爆発、4ストロークは2回転に1回爆発
バイクの騒音規制が初めて施行されたのは、1998年の排ガス規制より早く1952年でした。ただし、実質的な規制対応が必要になったのは1986年規制以降で、騒音に不利な2ストロークエンジンや空冷エンジン搭載モデルにとっては厳しい規制でした。
バイクの騒音規制の経緯と現況について、解説していきます。
●2ストロークエンジンの騒音特性
2ストロークエンジンは、構造が簡単で軽量コンパクトというメリットがあるものの、排ガスと燃費性能は4ストロークに比べて大きく劣ります。
また、4ストロークエンジンがエンジン2回転に1回燃焼が発生するのに対して、2ストロークエンジンは1回転に1回燃焼が発生するため耳障りな周波数の高い排気音が発生し、騒音レベルは不利になります。
通常、車外騒音の半分以上は、エンジン音と排気音が占めます。
●1986年騒音規制
バイクで騒音規制が初めて施行されたのは1952年でしたが、実質的にメーカーの対応が必要になったのは1986年の規制以降です。
・軽二輪(126~250cc) :74dB(定常騒音)/ 75dB(加速騒音)/ 99dB(近接騒音)
・小型二輪(251cc~) :74dB(定常騒音)/ 75dB(加速騒音)/ 99dB(近接騒音)
それまでの定常騒音と加速騒音に加えて、近接騒音が規制対象に追加されました。
この規制によって、加速騒音の規制値がそれまでの84~86dBから75dBに低減されたことが高いハードルとなり、バイクの消音対策が本格的に始まりました。
・定常騒音
最高出力の60%の回転数で走行した速度(50km/hを超える場合は50km/h)で発生する騒音を7.5m離れた場所で計測
・加速騒音
定常走行からフル加速して10m走行した時点で発生する騒音を7.5m離れた場所で計測
・近接騒音
停車から、最高出力回転の75%の回転数で発生する騒音を排気管端から45°後方の同じ高さで距離0.5mの場所で騒音を計測
●2001年騒音規制
この規制でさらに騒音が強化され、エンジンや排気系にさまざまな消音や遮音対策が行われました。例えば、マフラー形状の最適化やチェーンカバー、スプロケットカバーの裏に遮音材を詰める、空冷エンジンの冷却フィンの間にアブソーバーゴムを装着するなどです。
・軽二輪(126~250cc) :71dB(定常騒音)/ 73dB(加速騒音)/ 94dB(近接騒音)
・小型二輪(251cc~) :72dB(定常騒音)/ 73dB(加速騒音)/ 94dB(近接騒音)
2001年のバイクの加速騒音規制値73dBは、自動車の規制値76dBよりも厳しく、また米国と欧州の80dBに比べても圧倒的に厳しく、世界一厳しい騒音規制でした。
ちなみに、3dB違うと誰でも音の大きさの違いが分かり、6dB違うと音圧は倍ほどうるさくなります。
2ストロークエンジンと空冷エンジンのバイクが市場から撤退し始めたのは、この頃です。撤退の直接的な原因は1998年の厳しい排ガス規制ですが、騒音規制の強化も少なからず影響を与えました。
●最新の2014年騒音規制
騒音規制も排ガス規制と同様に国際基準調和のため、2014年から「騒音防止装置協定規則(ECE R41-04)」に準拠することになりました。
クラス分けは、従来の軽二輪、小型二輪からPMR(Power to Mass Ratio)でのクラス分けに変更されました。PMRは、最大出力(kW) / (車両重量 + 75kg) ×1000 です。
・クラス1 :PMR ≦ 25(実質50cc)
・クラス2 :25 ˂PMR ≦ 50(実質125cc)
・クラス3 :50 ˂PMR (実質126cc以上)
この規制から、定常騒音と近接騒音の規制が除外され、以下のように加速騒音だけが規制対象になりました。
・クラス1 :73dB
・クラス2 :74dB
・クラス3 :77dB
2020年12月には、さらに厳しいEURO5相当の騒音規制が予定されています。
独特の排気音が大好きな人にとっては残念かもしれませんが、騒音規制のおかげで最近のバイクは排気音だけでなくメカノイズも抑えられ、ずいぶん静かになりました。
何とか、規制内で心地良いバイクらしい音色は残してほしいものです。
(Mr.ソラン)